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初音ミク、はるかなるN次創作の系譜〜奇跡の3カ月(15)

シンデレラや源氏物語伝承からつながるもの

丹治吉順 朝日新聞記者

ヒートアップを促した「みくみくにしてあげる♪」

CGやイラストではなく、立体造形物を作ることに血道をあげる人も現れた。下記の動画は同一投稿者によるそうしたシリーズの10番目で、ネギを2本振る「二刀流」となっている(11月18日投稿)。これも、この目的以外の何の役に立つのか皆目見当がつかない。

初音ミク 実体化への道10 二刀流

上記の動画では、音楽に「Ievan Polkka」ではなく「みくみくにしてあげる♪」が使われている。原曲もお祭り騒ぎを起こしたが、それがそのままさまざまな二次創作に波及した。

前述のGibsonさんは9月22日、つまり「みくみくにしてあげる♪」の投稿の2日後に早くも3D CGのアニメを投稿している。

みくみくにしてあげる♪ (初音ミク3D その5)

これを追いかけるように、9月25日には次の動画も投稿された。

3D初音ミク みくみくにしてあげる♪PV風

このように、9月下旬ごろから「みくみくにしてあげる♪」の派生作品がラッシュのように出現してくる。原曲作者の鶴田加茂さんは、こうした二次創作を心から楽しんでいたようで、「自分があの二次創作の輪に加われないのが残念なくらいでした」と筆者の取材に答えている。

10月24日投稿の次の動画は、まったり見ていると途中(1分過ぎごろ)から意表を突かれる動きがある。こういう「一瞬芸」のようなネタも、この当時の人気だった。

ちび初音ミクで百烈拳してみた

当時のアマチュア制作としては注目のレベル

いずれも、2021年現在の高度に洗練されたCGを見慣れた目に物足りなく映るのは仕方がない。最近十数年間のコンピューターのハード・ソフト両面の性能向上は劇的で、さらに2010年代前半から爆発的な発展を遂げた機械学習をベースにした新世代AIの登場が加わり、2000年代まではまず考えられなかった高品質の映像が一般ユーザーでもかなり手軽に作れるようになった。

「3D初音ミク みくみくにしてあげる♪PV風」の累計53万再生という視聴数が示す通り、2007年時点ではこうした動画が相当に注目された。多くの視聴者にとって、趣味で自作した3D CGキャラクターが音楽に合わせて踊ることが、それくらい驚かれるような時代だった。(ちなみに第13回で触れた「ニコマス」は、商業用に開発されたゲームのCGをコピー・編集したもので、一般ユーザー向けのパソコンで制作するよりも、映像のクオリティははるかに高かった。だからこそ人気を集めた面もあるだろう)

アニメ調作品も次々登場

3D CGではないアニメ調では、9月30日に投稿された「【アニメPV】初音ミク【ひっぱたいてやんよ☆】」も「みくみくにしてあげる♪」を用いている。

作者の砂吹さんは2009年に「【初音ミク】ぽっぴっぽーPV【飲もう!】」で大きな注目を浴びる。(なお、ラマーズPさんの原曲「ぽっぴっぽー」はアメリカ人に特に人気が高く、2011年のロサンゼルス公演で演奏されたときは場内大喝采だった)

【アニメPV】初音ミク【ひっぱたいてやんよ☆】

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筆者

丹治吉順

丹治吉順(たんじよしのぶ) 朝日新聞記者

1987年入社。東京・西部本社学芸部、アエラ編集部、ASAHIパソコン編集部、be編集部などを経て、現在、オピニオン編集部・論座編集部。機能不全家庭(児童虐待)、ITを主に取材。「文化・暮らし・若者」と「技術」の関係に関心を持つ。現在追跡中の主な技術ジャンルは、AI、VR/AR、5Gなど。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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