メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

news letter
RSS

初音ミク、「奇跡」を生むネットワークの要〜奇跡の3カ月(16)

ニコニコ動画のタグが生むリンク構造

丹治吉順 朝日新聞記者

初音ミク、はるかなるN次創作の系譜〜奇跡の3カ月(15)から続く

「ネギ」と「みくみく」、さらなる大連鎖

引き続き、「Ievan Polkka」(=ネギ)、「みくみくにしてあげる♪」が推進した初音ミクのN次創作を取り上げる。発売からまもない2007年9月という早さで、初音ミクを巡るさまざまな創作現象が爆発したのは、この二つの要素がとりわけ大きかった。

「みくみくにしてあげる♪」の音楽面でのアレンジは、9月25日にすでに本格的なものが現れていた。音程が原曲とずれているのは「歌い崩し」的なものだろう。人間の歌手がこれをするとその歌手の味として自然に受け入れられるが、ボーカロイドではまだ不自然に聞こえる(のだと筆者は解釈している)。

みっくみくにしてあげるをアレンジしてみた

アニメ化もさまざまな試みがあった。パソコンの上に載るような小さなサイズの初音ミクが登場する「初音ミク3D、発進!!v1.1」が10月24日に投稿されている。パソコンソフト・初音ミクの意味合いを生かした演出だった。

初音ミク3D、発進!!v1.1

この動画の累計再生数は14万8000。同じコンセプトで、「ひっそりと”みっくみく”を踊らせてみた」が10月28日に投稿された。これも累計23万再生されるほどの評判になった。いずれも曲の趣旨といかにもうまく合っていたことも人気を呼んだ理由の一つだろう。

ひっそりと”みっくみく”を踊らせてみた

なお、この修正版が12月に投稿されている。

動画クリエイターたちと楽曲制作者の複雑な結びつき

この投稿者kakiさんの「ひっそりと初音ミクを踊らせてみた」シリーズの最初は、実はOSTER projectさんの21秒の作品「【初音ミク】ミクたんのテーマ【おまけ】」だった。

初音ミクをひっそりと動かしてみた

【初音ミク】ミクたんのテーマ【おまけ】

このkakiさんにみられるように、一人の動画クリエイターは、一人の音楽家や一つの楽曲だけに特化して動画をつくるわけでは全くない。特定の作曲家や楽曲に縛られず、二次創作作品をつくっていく。そういう中から、注目される音楽作家、動画作家、イラストレーターといった人たちが台頭していく。人と作品が次々と結びつく創作の複雑なネットワークは、この時期に芽吹いていた。

前回と今回取り上げている「Ievan Polkka」「はちゅねミク」「ネギ」「みくみくにしてあげる♪」は、こうした動きを推進した原動力のわかりやすい例で、他の作品・作者が顧みられなかったわけではない。同様のことは、後述するように至るところで起きていた。対象を絞ったのは、要素が増えすぎると記事としてまとめられないという便宜的な理由からだ。

この時期、「ネギ」と「みくみくにしてあげる♪」の両方を基にして生まれたアニメの代表として注目されたのは、次の動画だろう。累計280万再生という数字に現れているように、動画の品質・演出とも、現在の目から見てもかなりのレベルだ。これが2007年10月25日の投稿。初音ミク発売の8月31日から2カ月も経っていない。

3DみくみくPV♪

「みくみくにしてあげる♪」のサビの部分だけのアニメ化だが、文字通り「ネギ踊り」と題されたアニメも10月31日に投下されている。

【ネギ踊り】みっくみくにしてあげる♪【サビだけ】

全ジャンルパックなら本の記事が読み放題。


筆者

丹治吉順

丹治吉順(たんじよしのぶ) 朝日新聞記者

1987年入社。東京・西部本社学芸部、アエラ編集部、ASAHIパソコン編集部、be編集部などを経て、現在、オピニオン編集部・論座編集部。機能不全家庭(児童虐待)、ITを主に取材。「文化・暮らし・若者」と「技術」の関係に関心を持つ。現在追跡中の主な技術ジャンルは、AI、VR/AR、5Gなど。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

丹治吉順の記事

もっと見る