憲法24条がなければ日本の結婚は今も“口出し地獄”だろう
2021年10月04日
秋篠宮家の長女・眞子内親王との結婚を2021年10月26日に控えた小室圭氏が、髪型をポニーテールにして日本に一時帰国し、マスコミや世間で大きく騒がれています。
テレビのワイドショーや週刊誌だけではなく、東京新聞のような一般紙までも、「あなたはあの髪形、『あり』ですか?」と読者に問いかける記事を配信していました(「小室圭さんの「ちょんまげ」ヘアを考える ワイルドな大人を演出? 会見ではどんな髪形で現れる?」2021年9月30日)。Twitterでもトレンド入りしており、彼のポニーテールに関心がある人たちがかなりたくさんいるようです。
あかの他人がどのような髪型にしようと自分とは関係のないことであり、全く興味関心のない私としては、一連の報道や世間の騒ぎに対して、「どうだっていいじゃんそんなこと なんだっていいじゃんそんなこと」としか思えませんでした。
むしろ「他人の自己決定権を侵害して髪型についてジャッジすること、『あり』ですか?」と問いかけたくて仕方ありません。
記事では、「清潔感がない」などの理由で、あの髪型は「なし」と答えている人の意見を取り上げており、同様の意見はネット上でも目立ちました。ですが、女性が同じようなポニーテールにしていても、清潔感がないと感じるのでしょうか?
実際に似たような髪型をしている女性もいますし、清潔感がないというマイナス評価をする人はおそらく少ないはずです。むしろ、ポニーテールは清潔感のある女性の髪型として捉える人も多く、そのように紹介している就活サイトも少なくありません(そのアドバイスがよいか否かは別問題)。
確かに、「小室氏のようなポニーテールは、男性でも女性でも清潔感がない」という主張であれば筋は通っています。ですが、同じ髪型なのに、女性だと違和感を覚えず、男性だと清潔感がないと感じるのであれば(≒相手の性別によって自分の感じ方が大きく変化するのであれば)、その髪型自体の問題ではなく、「自分の感じ方」の問題でしょう。要するに、「偏見」です。
(※確かにヘアケアを丁寧にしている女性が多いのに比べて、あまり手をかけてはいない長髪の男性の割合は高いかもしれません。ですが、小室氏が「髪に手をかけているかいないか」は、報道されている映像では距離が遠く、正確に判断ができないと思います)
男性の長髪や女性の体毛のように、「清潔感」の印象が性別によって大きく異なるのは、おそらく「自分が見慣れていない」からだと思います。にもかかわらず、自分が覚えた不快の原因を相手に見出そうとするのは、一種の「認知的不協和」に近い心理作用ではないでしょうか。
個人の感じ方の問題なので、それを是正するべきだなどと主張はしません。ですが、そのような偏見が「女性は〇〇すべき」「でも男性は〇〇すべきじゃない」という性差別的な社会のマナーやルールを肯定する根拠になってしまっていることも考慮すると、公の場で安易に表明するのは控えるべきだと思います。
次に、ポニーテールを理由に小室氏の人間性を疑う意見も少なくないようです。先述の東京新聞の記事でも、「人生や仕事を任せる相手として、信用できない」という男性経営者のコメントが記載されていました。
女性がロングヘアーをバッサリ切ったら「失恋したのだろうか」といぶかったり、反省の意を込めて男性が「丸刈り」にする“風習”がいまだに残っているのと同様、髪型がその人の心情をも表すものだという思い込みの強い日本社会の典型的なジャッジ方法でしょう。
ですが、ポニーテールという外見上の要素で、相手が信用できるか否かを本当に判断できるのでしょうか? 日本では、ポニーテールはアメリカ映画をきっかけに1955年に流行しました。誕生から1世紀も経っていないのに、意味のある(例:清潔感のある、フェティシズムを感じる等)女性の髪型として捉える人(主に男性)が多々いることからわかるように、髪型に対する人々の価値観はわずかな年月の間に容易に大きく変化します。
このように、髪型という文化は普遍的ではなく、時代とともに容易に変化するにもかかわらず、「特定の髪型=信用ならない」と決めつけることはできませんし、思考停止でしかありません。また、髪型という外見で相手の意思を図ることができるという思い込みは、とても非科学的です。
むしろ、外見上の要素で判断してしまうような、人間性を見極める能力が非常に乏しい人は、逆に(外見で)「騙したい」「利用したい」「事態を穏便に済ませるために態度には出したくない」と思っている人たちには好都合です。
その結果、外見ジャッジが根強い日本の職場や学校等では、
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