メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

news letter
RSS

東京国際映画祭の大改革~安藤裕康チェアマンと市山尚三ディレクターに聞く

古賀太 日本大学芸術学部映画学科教授(映画史、映像/アートマネジメント)

 9月28日の東京国際映画祭(10月30日~11月8日)のラインナップ発表会後に公式ホームページにアップされたセレクションを見て、私は思わず声を挙げそうになった。いくつもの点で、これまでと根本的に違ったからだ。

 まずコンペがアジア映画中心になった。これまでのように世界各地からバランスよく選ばれていない。そのうえ、イラン出身のバフマン・ゴバディやフィリピンのブリランテ・メンドーサやカザフスタンのダルジャン・オミルバエフのような世界三大映画祭のコンペに選ばれそうな監督の作品がワールド・プレミア(世界初上映)として並んでいる。

バフマン・ゴバディ監督『四つの壁』 ©MAD DOGS & SEAGULLS LIMITED拡大バフマン・ゴバディ監督『四つの壁』 ©MAD DOGS & SEAGULLS LIMITED

 もう一つの大きな驚きはセクションの改変だ。正月映画のショーケースのような「特別招待作品」がなくなり、「ガラ・セレクション」と名前を変えた。そこにはウェス・アンダーソン監督の『フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊』を始めとして、パオロ・ソレンティーノ、アピチャッポン・ウィーラセタクン、ジェーン・カンピオンといった一流監督の期待作が並ぶ。これまでと違い、日本の公開が決まっていない作品もある。いつも何本もある邦画は1本もない。

 さらにもう一つ大きな変更があった。会場が六本木から日比谷・銀座・有楽町地区に移ったことだ。かつて渋谷を中心としたことがあったが、20年近く前から六本木が中心になって続いてきた。

 実はそれらの改革点は、おおむね私が2012年から毎年ここ「論座」で主張してきたことだった。

 コンペはアジア映画を中心にしないといい作品が揃わない。目玉になるワールド・プレミアがないといけない。「特別招待作品」は海外から見たら意味不明だ。六本木ヒルズを中心にした会場は閉鎖的で上映前後に時間を過ごす場所も少なく街の盛り上がりに欠ける。銀座地区がいい、等々。

 そこでどうしてこのような改革ができたのか、2年前からトップに就いた安藤裕康チェアマンと今年の4月からプログラミング・ディレクターに就任した市山尚三さんに話を聞いた。


筆者

古賀太

古賀太(こが・ふとし) 日本大学芸術学部映画学科教授(映画史、映像/アートマネジメント)

1961年生まれ。国際交流基金勤務後、朝日新聞社の文化事業部企画委員や文化部記者を経て、2009年より日本大学芸術学部映画学科教授。専門は映画史と映画ビジネス。著書に『美術展の不都合な真実』(新潮新書)、『永遠の映画大国 イタリア名画120年史』(集英社新書)、訳書に『魔術師メリエス──映画の世紀を開いたわが祖父の生涯』(マドレーヌ・マルテット=メリエス著、フィルムアート社)など。個人ブログ「そして、人生も映画も続く」をほぼ毎日更新中。http://images2.cocolog-nifty.com/

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

古賀太の記事

もっと見る