あの世を信じる現代人

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現代社会は、科学的な価値観が中心となって成立している。非科学的な考えは、あまり受け入れられない。死者がどこかに存在しているとか、死者が行く場所がどこかにあるといった考えは、リアリティをもつことができない、そう考えるのが自然である。
私が代表を務める株式会社寺院デザインでは、この8月にコロナ禍がどう葬送に対する意識に影響しているのかを調べるため意識調査を行った。そのレポートは、この論座でも報告させていただいた。
web会議の普及が、オンライン法要への違和感を拡大させた──全国生活者意識調査「コロナ禍と仏事」から見えてきた仏教の未来(上)
コロナ禍で高まる供養の気持ち、コロナ禍で進む葬送のパーソナル化── 全国生活者意識調査「コロナ禍と仏事」から見えてきた仏教の未来(下)
この調査では、〈亡くなった家族は、どこにいると思いますか?〉という質問も設定した。人は死んだらどこに行くのかということである。

【亡くなった家族は、どこにいると思いますか?(複数回答可)】(現代人のあの世観を調査)
この回答であるが、予想に反して、多岐にわたる回答分布となった。
最も多いのは〈あの世にいる〉の35.0%、次いで多いのが〈浄土にいる〉の29.3%だった。
私は、〈あの世にいる〉という回答が多いことは予想していたが、〈浄土にいる〉という回答は、かなり少ないのではないかと予想していた。〈浄土〉という言葉はかなり宗教的な言葉で、なんとなく仏教徒になっているような人達には、あまり馴染みが無いのかなと思ったのだ。ほとんどの人は、明確に仏教の影響がある〈浄土〉ではなく、特定の宗教の影響の少ない〈あの世〉という言葉のほうに親しみがあるのではないかということである。
結果は、〈あの世〉のほうが多かったが、〈浄土〉も決して少なくない人が選択している。
もちろん、〈浄土〉を選んだ人の全てが、仏教の教義的な〈浄土〉を理解した上で選択しているわけではないが、まだまだ〈浄土〉という言葉が市民権を得ていることは発見だった。
一方、〈死んだらすべて無くなるので、どこにもいない〉という選択肢を選んだ人は、24.5%だった。〈あの世〉〈浄土〉に比べれば若干少ないが、それほど差があるわけではない。ただ、これをどう評価するかは、難しいところである。
現代においては、ほとんどの人が科学的な価値観を持っている。〈死んだらすべて無くなる〉が100%でもおかしくないはずである。そう考えると24.5%という数字は決して多いとは言えないだろう。
この意識調査では、お盆にどんな行動をしているかを聞く設問もある。
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