大原薫(おおはら・かおる) 演劇ライター
演劇ライターとして雑誌やWEB、公演パンフレットなどで執筆する。心を震わせる作品との出会いを多くの方と共有できることが、何よりの喜び。ブロードウェー・ミュージカルに惹かれて毎年ニューヨークを訪れ、現地の熱気を日本に伝えている。
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
鼓童創立40周年記念公演第二弾でオーケストラと共演
佐渡を拠点に太鼓を中心とした伝統的な音楽芸能に無限の可能性を見いだし、現代への再創造を試みる太鼓芸能集団・鼓童。1981年、ベルリン芸術祭でデビュー以来、52の国と地域で6500回を超える公演を行っている。
鼓童創立40周年公演第2弾として鼓童×東京交響楽団『いのち』を10月30日、ミューザ川崎シンフォニーホールにて上演する。オーケストラとの共演のために新曲「いのち」を書下ろし、演出も担当する池永レオ遼太郎に本公演について、コロナ禍において鼓童がどのような活動を重ねているか、さらに池永自身について話を伺った。
――鼓童と東京交響楽団が1日限り、5年ぶりに共演する公演『いのち』。池永さんが書き下ろした新曲「いのち」が世界初披露されますね。これはどういう経緯で生まれた曲なのでしょうか?
「鼓童の創立40周年にオーケストラと共演したい」というのは代表の船橋(裕一郎)が2、3年前から言っていたことでした。理由としては、鼓童は40年前、ベルリン音楽祭で石井眞木さんの指揮によりオーケストラとの共演でデビューしましたので、40周年ももう一度オーケストラと一緒にやりたいということだったのです。僕は以前から「自分で曲を書きたい」と船橋に言っていまして、(鼓童ミュージックアドバイザーであり、今回の「いのち」の指揮者でもある)下野竜也さんが鼓童公演にいらっしゃったときに僕が書いた曲をお見せしたんです。そうしたら「面白いからやってみようよ」と言っていただき、そこから話が動き出しました。
――「いのち」はどういう楽曲なのでしょうか?
最初に「どういう曲を書きたいか」と考えたとき、「誰が聞いても面白いと思えるような音楽を作りたい」と思いました。オーケストラと打楽器のコンチェルトだと、どうしても少し前衛的になったり難しくなったりすることが多いなと自分でも感じていて。そういうものではなく、鼓童の舞台でやっている音楽やメロディーラインを取り入れて、オーケストラと鼓童が共演する必然性があるものを作りたいなと思ったんです。
――「いのち」というタイトルにした理由は?
全体で6楽章30分の曲で、1楽章書いては考えて、というのを繰り返しながら3年前から今年の夏前くらいまでかけて書き終えました。「いのち」というタイトルにしたのは、去年の4、5月の頃です。
去年の3月ヨーロッパツアーに出ていたところコロナ禍で緊急帰国をして、2週間隔離した3日後に緊急事態宣言が出て、宣言解除までの2カ月半ほど誰とも会わない時期がありました。僕は佐渡の海辺に住んでいるのですが、散歩に行くと景色もきれいで空気もおいしいのに、人の命を奪ってしまうウイルスがまん延しているのが信じられないと思ったんですよね。当時、世界中で多くの方が亡くなりましたが、一方で、自分の身近な人に子供が生まれて。大きな地球の中で生と死があり、生命が巡る中で、自分はいったい何をしているんだろう、とよくわからなくなってしまった。「命とはなんだろう」と考えてもよくわからない葛藤を6楽章のうちの第5楽章「いのち」という曲にしました。そして、それを全体のタイトルにしたんです。
◆公演情報◆
鼓童創立40周年 鼓童×東京交響楽団 『いのち』
2021年10月30日(土)15:00 ミューザ川崎シンフォニーホール
公式ホームページ
演出:池永レオ遼太郎(鼓童)
指揮者:下野竜也
演奏:東京交響楽団、太鼓芸能集団 鼓童
※創立40周年ツアー第三弾
『鼓童ワン・アース・ツアー2021-2022〜童』日本ツアーを11月~12月に上演予定
〈池永レオ遼太郎プロフィル〉
幼少期よりクラシック音楽を学び、太鼓は大学1年生よりアメリカ、コーネル大学の学内活動で始める。2013年研修所へ入所。2016年より鼓童メンバーとなる。舞台では主に太鼓、笛を担当。旋律楽器も得意とし作曲や演出にも力を注ぐ。映像制作、SNS展開など幅広い分野でも活躍。ネイティブな英語を生かした海外オーディエンス向けの発信も積極的に行なっている。
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