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「ほんとうの日本」とは何か──R・H・ブライスの“金言”を読む

俳句に恋し、昭和天皇の「人間宣言」に関わった異能の英国人

香取俊介 脚本家、ノンフィクション作家

日本人が目指すべきは「量」より「質」

レジナルド・ホーラス・ブライス=1949年拡大レジナルド・ホーラス・ブライス=1949年

 本書では蕪村の俳句や川柳にも触れて、日本人の「自然を楽しむ心」にエールを送り、日本人の過去と現在を通じての最大の「宝」は《美は快適な生活よりも重要であると直感的に知っていること》とする。

 そして、ものごとの中の「詩」こそ、真実にして唯一の価値であるとし、日本人が目指すのは、俳句の短さが示しているように、「質」であって「量」ではないと見極めて「『良い小さな』日本」をつくるべしと強調する。

 戦後11年目に記したブライスの感慨である。この時期、ブライスは日本の禅文化を海外に広く知らしめた鈴木大拙との親交を通じて、禅の信奉者になっており、彼の美意識、価値観には禅の影響が濃厚に陰を落としている。ブライスは第一次世界大戦の折り、人を殺したくないという思いから徴兵命令を拒否し収監され、不自由な青年期を送った。

 戦後、ロンドン大学に入学し優秀な成績をおさめ、卒業後は友人のツテで朝鮮の京城帝国大学予科の教官となり、英文学を講義した。この間、妻と離婚、2年後、日本女性、来島富子と再婚。日本本土に移り住むが、間もなく太平洋戦争が勃発。ブライスは「敵性外国人」として神戸の抑留所に収容された。

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筆者

香取俊介

香取俊介(かとり・しゅんすけ) 脚本家、ノンフィクション作家

1942年、東京生まれ。東京外語大学ロシア科卒。NHK(番組制作局ドラマ番組班など)を経て、1980年より、脚本家、ノンフィクション作家に。「異文化摩擦」と「昭和」がメインテーマ。ドラマ作品に「私生活」(NHK)、「山河燃ゆ」(NHK・共同脚本)、「静寂の声」(テレビ朝日系)。ノンフィクション作品に『マッカーサーが探した男』(双葉社)、『もうひとつの昭和』(講談社)、『今村昌平伝説』(河出書房新社)、『北京の檻 幽閉五年二ケ月』(共著、文芸春秋)など。小説に『いつか見た人』(双葉社)、『渋沢栄一の経営教室 Sクラス』(共著、日本経済新聞社)など。

※プロフィールは、論座に執筆した当時のものです