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眞子さんと小室圭さんの結婚問題には、譲れない「規範」がある

三島憲一 大阪大学名誉教授

眞子さんの「眞」は「真実」の「真」と同義だが……

天皇、皇后両陛下に結婚のあいさつをするため皇居に入る秋篠宮家の長女、眞子さま=22日午後4時24分、皇居・半蔵門、代表撮影拡大天皇、皇后両陛下に結婚のあいさつをするため皇居へ=2021年10月22日、皇居・半蔵門、代表撮影

 しかし、よく考えてみれば、相手の「家柄」や「学歴」や「財産」を問題にしたり、アジア系やアフリカ系であるゆえに忌避したりという例は、交際範囲の狭い筆者の周囲でもよく聞く話だ。最近でもきわめて近いところで2例ほどあった。まだまだ事実上の身分制社会だ。

 またドイツ人の友人たちからは、友人の従姉妹が、また友人本人も、カトリックとプロテスタントの相違を理由に大恋愛を親や親戚からよってたかってやめさせられた話、あるいは、やめさせられそうになった話は、いずれも1960年代の昔話だが数件は聞いている。

 それに、有名なシラーの『たくらみと恋』は、最近の日本ではほとんど忘れられているが、ドイツでは今も定番の作品だ。

 宮廷の宰相の息子が庶民の娘と相思相愛になったものの、父親は「庶民との結婚などもってのほか」とし、自分の出世のために息子を殿の妾とくっつけようとする。やがて相思相愛のふたりとも関係者の奸計にはまって死んでいく話だ。

 不当な理由から親を逮捕された娘は、執事に強要されて別人に偽りのラブレターを書かざるを得ない。親を救うためだ。策にはまってそのラブレターを読んだ正義漢の息子は、彼女に裏切られたと思い、逆上して自ら毒を飲み、愛する娘にも毒を飲ませる。

 だが、娘は迫りくる死の直前にことの顛末と彼への真情を打ち明ける。仲直りして死んでいく二人の前で、宮廷とそれを取りまく支配の構造が浮き上がる。観客の義憤が頂点に達するとともに幕が下りる。同じ作者の『ヴィルヘルム・テル』とともに、18世紀末にはじまるいわゆる疾風怒濤時代の傑作だ。自由への熱い思いがある。と同時に、自由と正義は、そして自由と真実は不可分なことを、哲学者でもあったシラーが明示した作品だ。そういえば、眞子さんの「眞」は「真実」の「真」と同義だ。

 逆に、格上のお嬢様との結婚を通じて社会的上昇を果たす話は小説でも現実でもいくらもある。有名なトーマス・マンの『ブッデンブローク家の人々』でも、怪しげな不動産屋が主人公の良家の娘と結婚する話が出てくる。

 自民党の国会議員や官僚の経歴を読むと、もちろん部分的だが、どうも胡散臭いことが多いのが結婚なのかなと思わざるを得ない。ロッキード事件で有名になった小佐野賢治も戦後しばらくして、堀田伯爵家のご令嬢と結婚している。もちろんいっさいのよこしまな思惑のない相思相愛で結ばれた稀有な例なのだろう。

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筆者

三島憲一

三島憲一(みしま・けんいち) 大阪大学名誉教授

大阪大学名誉教授。博士。1942年生まれ。専攻はドイツ哲学、現代ドイツ政治の思想史的検討。著書に『ニーチェ以後 思想史の呪縛を超えて』『現代ドイツ 統一後の知的軌跡』『戦後ドイツ その知的歴史』、訳書にユルゲン・ハーバーマス『近代未完のプロジェクト』など。1987年、フィリップ・フランツ・フォン・ジーボルト賞受賞、2001年、オイゲン・ウント・イルゼ・ザイボルト賞受賞。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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