発言の背後に浮かびあがってくる眞子さんの「愛」
2021年10月28日
「それ、全然興味ないんだけど」。そんな風に言う人も私の周りにいなくはないし、ネットの一つの論調でもあったりはするけれども、やはりそのニュースは「国民的関心事」だということが、如実に明らかになったここ数日だった。
「眞子さま」が「眞子さん」になられた、その日の夜のNHKニュース(21時)では、トップニュースの扱いで最初の10分を費やして報じていたし、翌朝、いつも立ち寄るコンビニで見かけた新聞はほぼ全て「眞子さん、小室圭さんご結婚」という大きな文字で一面が飾られていた。これらをもってしても、大事(おおごと)ではないとはもはや誰も言えないであろう。
10月26日の午前に宮内庁の職員が婚姻届を役所に提出して受理され、「眞子さま」から「眞子さん」になられた直後の会見、しかも4年前の会見以来のお二人揃った姿を目にするとあっては、見ずにいられない気持ちになる人が多いのは、この会見の動画が翌日には、170万を超す数になったことからも見てとれる。
どちらが口火を切られるのか、そしてそれぞれがどのような言葉を述べられるのか、皆固唾をのんで見守る中、最初に二人揃って「よろしくお願いします」とご挨拶された後、眞子さんからお話が始まった。お二人とも「シナリオ」のような手元の紙を見ながら、事前に準備された内容を間違いないように語っていた。それを伺う中で、やはりいくつかのモヤモヤした思いが沸き起こる。
眞子さんは、最初に新型コロナ感染症の影響を受けている方々への労(ねぎら)い、ご自身が皇族として過ごされた中で出会われた人々への感謝に相当な文字数(文字起こしされたものでカウントすると534文字。以下同様)を費やした。
その「後に」、小室圭さんとの結婚に言及したが、それもまず「ご迷惑をおかけすることになってしまった方々には、たいへん申し訳なく思っております」「応援してくださった方々に、感謝しております」と周りへの配慮から始まっている。最初のお言葉の最後の最後で初めて「私にとって圭さんはかけがえのない存在です」と圭さんへの想いを語られた。
実は、お二人の会見で使われていた言葉の違いが気になり、会見全体でどんな文言をそれぞれが使われたかを少し整理してみた。「感謝」「守」(「見守られ」「守り」)「心」という言葉を眞子さんの方が特に繰り返し使われていることがわかる。
眞子さんの後で言葉を続けることになった圭さんは、開口一番「私は眞子さんを愛しております。一度きりの人生を、愛する人と共に過ごしたいと思っています」と言った。圭さんの最初の発言は文字数にして221文字、眞子さんの半分以下の分量で、費やされた内容は、結婚に関して迷惑をかけたことへのお詫びと眞子さんと人生を歩みたいという彼の気持ちの繰り返しと周りへの感謝であった。
ここで最初の違和感を覚えた。「愛している? だったらなぜ?」というモヤモヤ感だ。
そもそも「愛している」とは、一体どういうことなのだろう。ただ、相手のことを「好き好き」と言ったり、「一緒にいたい」という気持ちを表明したりすることだけではないはずだ。
ずっと前に、私が心から尊敬している恩師(仮にK先生としておく)が、私の結婚式に「愛とは、『心』を『受け入れる』と書きます。お互いの心を受け入れていってくださいね」と祝辞を述べてくれた。愛という文字は「“心”という文字を“受”が優しく包んでいる」というわけだ。
以来、私は「愛」という文字を見る度に、K先生の言葉が頭の中で木霊(こだま)する。なぜなら、先生の佇まい、立ち居振る舞いが「愛」そのものだったからだ(残念ながら、その相手とは数年後に別の人生を歩んでいるが、それも相手への愛ゆえではあるが)。
常に自分のことより人のことを優先して行動し、特に障害のある子どもたちや人々の教育・福祉サービスのためにわが身を削り、時には権力と抗してまさに身を楯にして様々な活動を行い続けていらっしゃる、その先生の言葉だからこそ「愛」という言葉が胸に響いた。
「愛しています」と言葉で言うのは簡単だ。しかし、その言葉が真実味を持って人々の心に迫ってくるのは、そこにその人の「行動」が伴ってこそだろう。私にとっての愛というものは、K先生がその振る舞いから嘘偽りなく教えてくださったものであり、それは、
「相手の幸せを願って動くこと、相手を苦しめないこと」
である。
先の圭さんの「愛しています」という言葉を聞いたときに、やはり瞬時に私は自分がK先生から学んだ「愛するという意味」に照らし合わせてその意味内容を考えてしまったのだと思う。だから、「え? 愛しているのになぜ?」という違和感が沸き起こってしまったのだ。
愛しているのに、なぜ眞子さんはあんなに
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