メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

news letter
RSS

無料

世界初演!『フィスト・オブ・ノーススター~北斗の拳~』製作発表レポート

伝説的コミック「北斗の拳」世界初のミュージカル化がそのベールを脱ぐ!

橘涼香 演劇ライター


 1983年から1988年まで原作・武論尊、漫画・原哲夫により、週刊少年ジャンプで連載され、連載終了から30年以上が過ぎた今なお、国内はもとより世界中で圧倒的な人気を誇る「北斗の拳」。兄のラオウ、トキと共に、二千年の歴史を持つ北斗神拳の修行に励み、師父リュウケンより北斗神拳の伝承者に選ばれたケンシロウが、世界を覆う核戦争によって弱肉強食の時代を生きることになった人々のなか、運命を異にしていく兄弟への思いや、南斗の里から来たユリアへの愛を持って様々に襲い掛かる試練に立ち向かい、挫折と絶望を繰り返しながらも、仲間を得、世界に光を取り戻す救世主として立ち上がる姿が壮大なスケールで描かれていく大河コミックスだ。

 この大人気作品が、日本のオリジナルミュージカルを世界に発信することを目指すホリプロ製作により、『フィスト・オブ・ノーススター~北斗の拳~』として世界初のミュージカル化が決定。音楽を『ジキル&ハイド』『スカーレット・ピンパーネル』など、日本、韓国ほか、世界のミュージカル界で活躍するフランク・ワイルドホーン。演出をニューヨークのオフオフブロードウェイ演劇フェスティバル“MITF”にて、数々の賞を受賞したNEW MUSICAL『Color of Life』で一躍注目を集めて以降、演劇界で躍進を続けている石丸さち子。脚本を数多くのミュージカルの脚本・作詞を手掛ける高橋亜子が担当。振付をダンサーとして活躍する一方、コレオグラファーとしての信頼も厚い辻本知彦(「辻」は一点しんにょう)。更に、これまでにも日中共同プロジェクトの数々を成功に導いた中国人演出・振付家の顔安(ヤン・アン)も振付に参加。日米中3か国のスタッフのコラボレーションによる創作に大きな注目が集まっている。

前列左から、宮尾俊太郎、福井晶一、May’n、大貫勇輔、平原綾香、石丸さち子、フランク・ワイルドホーン/後列左から、上田堪大、植原卓也、小野田龍之介、加藤和樹、伊礼彼方、上原理生=中村嘉昭 撮影拡大前列左から、宮尾俊太郎、福井晶一、May’n、大貫勇輔、平原綾香、石丸さち子、フランク・ワイルドホーン/後列左から、上田堪大、植原卓也、小野田龍之介、加藤和樹、伊礼彼方、上原理生=中村嘉昭 撮影

 そんな期待の大プロジェクトの製作発表会見が10月28日都内で開かれた。主人公のケンシロウ役を演じる大貫勇輔、多くの主要な役どころにWキャストが組まれているなか、ケンシロウの恋人・ユリア役の平原綾香とMay’n、ケンシロウの長兄ラオウ役の福井晶一と宮尾俊太郎、次兄・トキ役の加藤和樹と小野田龍之介。そして、原作でも人気の高い用心棒レイと、闘いに命を賭すジュウザを回替わりで交互に演じる伊礼彼方と上原理生。ケンシロウの敵・シンの植原卓也と上田堪大、さらに演出の石丸さち子が登壇し、公演への抱負を語った。

圧巻の7曲に及ぶ歌唱披露

 製作発表はまず、なんと劇中ナンバー7曲がお披露目を果たす豪華な歌唱披露からスタート。会見出席者だけではなく主要なキャストがほぼ勢揃いする、ライブパフォーマンスとも呼びたいスケールで作品世界の名場面が繰り広げられていく。

左から、上田堪大、宮尾俊太郎、福井晶一、植原卓也=中村嘉昭 撮影拡大左から、上田堪大、宮尾俊太郎、福井晶一、植原卓也=中村嘉昭 撮影

 まず冒頭の1曲目はラオウ役の福井晶一&宮尾俊太郎、シン役の植原卓也&上田堪大による「揺るぎなき信念」。

 核戦争で荒廃しきった世の中を支配するには、恐怖と暴力に訴えるしかない。戦わなければ命はない、自分で選び、目を背けずに戦えと、ラオウが自らに忠誠を誓うシンに信念を語るナンバーだ。福井の力強い歌声が先導し、宮尾の気品ある持ち味が早くも異なるラオウ像を期待させるなか、植原と上田が合わせる歌声にも芯があり、極限状態に置かれたなかで、ひとつの答えに信念を持つ人の強さが伝わってきた。

左から、近藤 華、山﨑玲奈、渡邉 蒼、安福 毅、大貫勇輔、松原凜子、白羽ゆり=中村嘉昭 撮影拡大左から、近藤 華、山﨑玲奈、渡邉 蒼、安福 毅、大貫勇輔、松原凜子、白羽ゆり=中村嘉昭 撮影

 続く2曲目の「心の翼」は、食料難に向かうことは必定の情勢で、食べ物を運ぶ娘たちに、希望を捨てるなとケンシロウ役の大貫勇輔が歌いかけるナンバー。大貫のソフトな歌声が、希望さえ持っていればきっと明るい未来が訪れるという願いに相応しい。リン役の近藤華&山﨑玲奈、バット役の渡邉蒼、ミスミ役の安福毅のハーモニーが美しく、村を治める女戦士マミヤ役の松原凜子が高い歌唱力を生かし、畑を耕し、井戸を掘ると力強く宣言。ユリアの侍女トヨ役の白羽ゆりも、リリカルにたおやかな歌声で加わり、優しさや愛を手放さず、大切なものはこの手で守ろうという、「揺るぎなき信念」との違い、困難に向かうそれぞれの立ち位置が穏やかなメロディーから早くも鮮明になった

左から、上原理生、伊礼彼方、加藤和樹、小野田龍之介=中村嘉昭 撮影拡大左から、上原理生、伊礼彼方、加藤和樹、小野田龍之介=中村嘉昭 撮影

 3曲目の「願いを託して」は、ピアノの奏でる静かな前奏から惹きつけられる。崩壊した世界のなかで、変わり果てた兄ラオウにかつての優しさを取り戻してほしいと願うトキの加藤和樹が、諦観を振り払うように、きっと祈りが一筋の光をもたらすと切々と歌うと、同じくトキの小野田龍之介が、嘆きのなかでも手放さない願いをしっかりとした歌声で表現。ラオウとの戦いに破れてなお、せめて命尽きる前に愛する人の幸せのために戦うと歌うレイ役の伊礼彼方と上原理生が、常の迫力ある歌声というよりも、むしろ静かに語るように歌うことで、楽曲の思いがより伝わってきた。

左から、上原理生、伊礼彼方=中村嘉昭 撮影拡大左から、上原理生、伊礼彼方=中村嘉昭 撮影

 その伊礼と上原が舞台に残り、一瞬にして類稀な才能を持ちながら、全てを捨てて無頼に生きているジュウザに変身。悲惨な現実は忘れ、ひとときの夢を見て楽しく生きようじゃないか!と歌い上げる軽快な4曲目「ヴィーナスの森」へ。会場に手拍子を促し、明るくステップを踏みながらのパフォーマンスが、伊礼と上原のキャララクターにもピッタリで、本番はどんなに盛り上がる場面になることかと夢が広がった。この交互出演はどちらのパターンも観たいな、という思いが掻き立てられる。

左から、百名ヒロキ、一色洋平、川口竜也、加藤和樹、小野田龍之介=中村嘉昭 撮影拡大左から、百名ヒロキ、一色洋平、川口竜也、加藤和樹、小野田龍之介=中村嘉昭 撮影

 そこからまた、更に場が一転した5曲目は、トキが兄ラオウとともに、北斗神拳の伝承者を目指して、リュウケンに弟子入りした往時を回想する加藤の台詞からはじまる「兄弟の誓い」。青年トキ役の百名ヒロキと、青年ラオウ役の一色洋平の前に北斗神拳の師匠・リュウケン役の川口竜也が現れ、「北斗神拳の伝承者は一人だけだ」と二人を崖から突き落とし、兄弟のどちらか這い上がってきた者が伝承者だと言い放つ。トキはラオウに「伝承者は兄さんだ、ひとりで行ってくれ」と促すが、ラオウはなんと、片手でトキを抱きかかえて崖を登り切る。

 この兄弟の絆があればこそ、ラオウが道を誤ったなら、それを止められるのは自分だけだ、今がその時だと、トキ役の加藤和樹と小野田龍之介が歌い、兄弟二人の関係性と現在の状況が1曲のなかに凝縮されたミュージカルならではのナンバーに。青年トキ役の百名ヒロキ、青年ラオウ役の一色洋平の歌声も鮮烈で、リュウケン役の川口竜也の美声をもっと聞きたいという気持ちが募った。

フランク・ワイルドホーン=中村嘉昭 撮影拡大フランク・ワイルドホーン=中村嘉昭 撮影

 そして6曲目からはピアノ演奏を作曲家フランク・ワイルドホーン自らが担当。トレードマークのキャップ姿で現れたワイルドホーンに大きな拍手が贈られる。

左から、May’n、平原綾香=中村嘉昭 撮影拡大左から、May’n、平原綾香=中村嘉昭 撮影

 前奏から非常にダイナミックで、オーケストレーションが浮かび上がる演奏がはじまり、歌われたのはユリアのソロナンバー「氷と炎」。ユリア役の平原綾香の歌声は、これまでミュージカルに出演してきた折の歌唱法よりも、ややアーティストとしての平原の歌声に寄った印象があるのが新鮮。May’nが歌詞を丁寧に伝える歌唱で歌い継ぐと、平原がWキャストのMay’nに送る視線が優しさにあふれる。幼い頃からラオウとケンシロウに愛されてきたユリアが、あまりにも生き方の異なる二人の狭間で惑う複雑な思いを、二人が情感を込めて歌い、ワイルドホーンが大きなマイムで「素晴らしい!」と喝采を示した。

左から、大貫勇輔、フランク・ワイルドホーン=中村嘉昭 撮影拡大左から、大貫勇輔、フランク・ワイルドホーン=中村嘉昭 撮影

 いよいよ最後になる7曲目は「心の叫び」。ドラマチックな前奏から、ワイルドホーンのアイコンタクトを受け取ったケンシロウ役の大貫勇輔が、奪われた愛を暴力で取り返すことの葛藤を抱きながら、北斗神拳の伝承者として、決して諦めず愛を取り返すとの信念にたどりつくナンバー。最後は生声で「あたたたーっ!」と叫び、「お前はもう死んでいる」との名台詞も披露。身体能力に優れた大貫の戦いぶりがどれほど颯爽としたものになるかにも期待が高まり、ワイルドホーンとガッチリと抱擁してのパフォーマンスが終了した。

 実際には同じ舞台に立つことのない、Wキャストがこうして同じ1曲を共に歌いあげるのは、製作発表ならではの貴重な機会で、充実したライブパフォーマンスにより、実際の舞台への期待が大きくふくらんでいく時間だった。

 続いて、熱気あふれる会場が、記者会見へと移る前に、フランク・ワイルドホーンへのミニインタビューが行われた。

稽古場に共にいられる喜びを

フランク・ワイルドホーン=中村嘉昭 撮影拡大フランク・ワイルドホーン=中村嘉昭 撮影

【ワイルドホーンインタビュー】

──歌唱披露をご覧になった、いまのお気持ちは?

フランク・ワイルドホーン:その前にまず、昨日のことをお伝えさせてください。僕は1年半ぶりに稽古場という空間に行くことができたんです。歌い手が歌ってくれるその空間にいられるのは、とても特別なことでした。こちらにいらっしゃる方々も皆さんそうでしょうし、ニューヨークでもそうです。演劇をやっている者にとっては本当に大変な1年でした。私は音楽の癒しの力、そして愛はすべての垣根、国境を超えると信じています。ですから昨日、稽古場に行けたこと、そして今日、皆様の素晴らしい歌唱を聴けたこと、素晴らしいミュージシャン、アーティストの皆様とご一緒できたことを名誉に感じ、自分はどれほどラッキーなんだろうかと感じています。私は心から書く作曲家です。そして、歌い手の皆様にも、是非とも心から歌っていただきたい。心の表現さえあれば大丈夫だと思っているんです。皆様がそう感じていただけるのではないかと信じています。

──オファーがあった時にはどう思われましたか?

ワイルドホーン:10年前、ホリプロの関係者の方が「デスノート」をミュージカル化するので作曲して欲しいとオファーしてくださいました。その成功があったからこそ、「北斗の拳」という作品が誕生できたのです。僕は漫画というものを知りませんでしたが、今2人の息子たちが「お父さんすごい!漫画のミュージカルを書いているの?」と言ってくれています。そして、「デスノート」の時もそうだったのですが、漫画を読み、テレビ・アニメ、映画を見させていただいた時に、「どうやってこれをミュージカルにするんだ?」と思いました。しかもこの作品を書くときには、コロナ禍でしたので、脚本・作詞の高橋亜子さんと直接お会いして、打ち合わせて書くことができなかった。離れたところで、作らせていただいたんです。それは僕にとっては稀な作品の作り方になりました。ですが、この作品は巨大な山、登ることに喜びを感じさせていただける山です。そして僕は、毎朝山登りがしたいと思うような男です(笑)。この場をお借りして、改めて感謝を申し上げます。アーティストというのは自分の音楽が、人に届くことが何よりも大切です。そういう場を与えてくださり、どうもありがとうございます。

 そこから、大貫勇輔、平原綾香、May’n、福井晶一、宮尾俊太郎、加藤和樹、小野田龍之介、伊礼彼方、上原理生、植原卓也、上田堪大、演出の石丸さち子が会見に臨み、それぞれの言葉で公演への思いを語った。

「北斗の拳」がミュージカルになる驚きと喜び

【登壇者挨拶】

石丸さち子=中村嘉昭 撮影拡大石丸さち子=中村嘉昭 撮影

石丸さち子:この日本を代表する「北斗の拳」という物語。漫画やアニメなど、色々な形で愛されてきた「北斗の拳」をミュージカル化すると聞いた時に、皆様が「「北斗の拳」をミュージカルに?」と思われたと思うんです。私自身もそうでした。でも、この作品の中には思いがけず、本当にミュージカルに必要な原石、エッセンスがいっぱい眠っていました。出会い、別れの悲しみ、光を探すこと、影に生きて苦しむこと、子どもの希望、現実に立ち向かう大人の苦しみ、そして悲惨な時代に求められる救世主、救世主になる苦悩、闘うこと。そして最後の一つは最も大切な「愛」です。そうした原作に長い時間をかけて高橋亜子さんが向き合ってくださいました。原作をリスペクトし、原作の魅力を詰め込んだオリジナルストーリーとも言える世界観を作り上げてくださいました。そこにフランクさんが溢れる泉のようなスピードで、素晴らしい楽曲を送ってくださいました。

私は、新しいミュージカルを立ち上げる為に、色々な妄想、空想をしました。ひとつの人間のドラマとしてストレートプレイのように見せられる場面、大胆なアクションシーン、さまざまな組合せで世界を構築し、それを俳優とシェアしているところです。稽古は猛スピードで続けています。皆大変だと思うんです。進んでいく内容の多さもそうですし、身体がとにかく大変だと思います。体も心もフルに使っていますので。でもオリジナル作品を作り出す為の勢いとエネルギーと、ひとつになっていく心が今、稽古場で生まれています。そんな最初の一歩を今日皆様にお届けできて大変嬉しく思っています。

大貫勇輔=中村嘉昭 撮影拡大大貫勇輔=中村嘉昭 撮影

大貫勇輔:「北斗の拳」をミュージカル化すると聞いた時には驚きました。「どんなふうになるんだろう?」と。そして「僕がケンシロウ?」と更に驚きました。最初に台本読んだときには、自分がケンシロウになれるのだろうか、とまだ思っていたので、話が全然入ってこなかったくらいです。そこからフライヤーの撮影があって、ヘアメイクさんやスタイリストさん、ディレクターさん、色々な方の力をお借りして、あの一枚ができました。その時初めてケンシロウになれるかもしれないと思えました。そこから光が見えてきて、改めて台本を読み、自分の中でも世界が広がっていき、「やれるかもしれないな」と思えたんです。更に素晴らしい楽曲が届き、最初は不安を感じていたのに、光が大きくなって、確信に変わっていきました。もちろん大変なことはいっぱいあるのですが、本当にたくさんの力をお借りして、ケンシロウとしてできるかもしれない。そう日々思っているところです。

平原綾香(左)、May’n=中村嘉昭 撮影拡大平原綾香(左)、May’n=中村嘉昭 撮影

平原綾香:最初にお話をいただいたときには、私がユリアをやったら、お笑いになるんじゃないかとすごく不安でした。でも世界中で有名なあの「北斗の拳」を一からオリジナルミュージカルとして立ち上げていく経験はなかなかできることではないですから、是非やらせていただきたいなと思ったんです。屈強な男たちが出てくる物語ですので、私もケンシロウたちと一緒に体を鍛えようと思ったのですが、よく読んでみると、ユリアは戦わないんですよね(笑)。でもユリアって、もしかしたらどの男たちよりも実は心の面で一番強いんじゃないかなと思っていて。だから色々な孤独と戦う男たちのドラマですが、ユリアが彼らに光や癒しを届ける存在、皆を見守る役なんだということが、だんだんと石丸さんの演出を通してわかってきているのがいまの状態です。(「まだ話さないといけない?足りない?」と隣の加藤和樹に尋ね「もう大丈夫」と言われて)台本を読んだ時には大号泣しました。声を出して泣いちゃったんです。今、命があることがどれだけ尊いことか。この期間に私たち自身が命と向き合って、愛する人を守るために色々なものと戦っている。ケンシロウたちが生きる世界と現代とが本当にリンクしていて、勇気づけられて、私は毎日お稽古場に行くのが楽しみで仕方ないです。素晴らしいカンパニーに入らせていただいいて、とにかくすごいミュージカルなので、是非皆様劇場に来ていただければと思います!

May’n:私もユリアのお話をいただいたときは、まさか「北斗の拳」をミュージカル化して、しかも自分がユリアを演じさせていただけるなんて、とびっくりしました。原作ももちろん読みましたが、ユリアのキャラクターはとても不思議な存在だと思っています。美しさもある、柔らかさもある、だけどそれだけじゃなく強さもある。稽古をしながらユリアらしさをどんどん見つけていきたいと思います。日頃から私はトレーニングを続けているので、「ついに私の筋肉を見せる時がきた!」と思ったのですが(笑)、ユリアは戦わないということで、普段キックボクシングをやっているんですけれども、キックボクシングは心技体を全て鍛えるスポーツですから、その鍛えた心の部分をユリアにいかせたらと思っています。同じ時代を生きているお客様に届けるミュージカルということで、「北斗の拳」の世界観を失わず、生身の人間だからこそお客様に伝えられる愛や、ミュージカルを観に来てよかったなと思ってもらえる空間をお届けできるように、頑張っていきたいなと思います。

福井晶一(左)、宮尾俊太郎=中村嘉昭 撮影拡大福井晶一(左)、宮尾俊太郎=中村嘉昭 撮影

福井晶一:最初に「北斗の拳」がミュージカルになると聞いた時には、僕は「北斗の拳」をリアルタイムで見ていた世代なので本当に興奮しました。体温が何度かあがりましたね(笑)。そして、ホリプロさんのオリジナルへの挑戦に関わらせていただけることがすごく嬉しいです。ラオウ役を演じますが、「北斗の拳」の原作ファンは、やっぱりラオウのファンが圧倒的に多いと思うんです。そんな役をいただいて、まずホリプロさんからの条件が「体を鍛えてください」ということだったので、このコロナ禍でなまった体を1年間で頑張って鍛えてきました。アニメも漫画もそうなんですけど、とにかくパワフルな描かれ方をしています。それをどうやって舞台で見せていくのかなと思ったのですが、台本を読ませていただいて、色々な要素が詰まっている。もちろん戦いもあるんですけど、兄弟の愛や親子の愛などが詰まった作品で、ミュージカルにするには本当に適した題材ではないかなと思いました。「北斗の拳」のファンは男性の方が多いと思いますが、台本を読んだ時に、これは多くの方に愛される作品になるなと確信しました。今はそれに向けて、みなさんと一生懸命稽古をしているところです。

宮尾俊太郎:僕は最初にこのお話をいただいたときに、僕は一体何のプロテインを飲めばいいんだろうと思いました(笑)。色々探して良いものを見つけています。もちろんビジュアルのためにです。やはり誰もがイメージを持っているラオウの肉体にどれだけ近づけるか、そこがまず不安だったのですが、脚本を読んでみますと、それよりもっと素敵なことがたくさん詰め込まれていました。アクションやフライング、そして熱いお芝居、歌、戦い、踊り。こんなに詰まっている作品は日本で多分初めてなんじゃないかと思うぐらいに、すごいものが詰まっています。この公演が終わる頃には、僕は新しいものを手にしている気がします。皆様も日本で今まで見たことのないミュージカルを楽しみにしていてください!

加藤和樹(左)、小野田龍之介=中村嘉昭 撮影拡大加藤和樹(左)、小野田龍之介=中村嘉昭 撮影

加藤和樹:まずこの「北斗の拳」のミュージカルのお話をいただく前に、風の便りで「『北斗の拳』がミュージカル化するらしい」という噂を聞いて、原作のファンの僕としては、もう観に行く気満々だったんです!どういう作品になるんだろうと。そのなかで、トキ役のお話をいただいて。ずっと好きな作品、ゲームも持っていましたし、昔は「北斗の拳」ごっこもしていた、そんな作品に自分が出演できることが本当に光栄ですし、だからこそ自分の果たすべき使命というか、トキ自身も色々な宿命を背負って、それを受け入れて生きている男なので、そこをどう作っていこうかなと思いました。演出の石丸さち子さんは信頼のおける、本当に熱い愛を持っている方なので、心を預けて、共に戦っていけると思いました。自分だけでは見つけられないトキという役を、Wキャストの小野田龍之介くんをはじめ、素晴らしいスタッフとキャストと見つけて、本当に全く誰も想像したことがない、全く新しいミュージカルを皆様にお届けできるように、努力して頑張っていきたいと思います。ご期待ください。

小野田龍之介:初めてこのお話をいただいたとき、まず皆さんおっしゃっている通り「北斗の拳」がついにミュージカルになるんだという驚きでいっぱいでした。それと同時に『デスノート THE MUSICAL』や『生きる』といった、日本とアメリカとの共同プロジェクトのオリジナル作品がつくられてきたなかで、いつか自分もオリジナルミュージカルの一部になりたいと思っていましたので、今回関わることができて本当に嬉しく光栄に思いました。僕は「北斗の拳」をリアルタイムで見ていた世代ではないので、はじめは筋肉ムキムキで戦う作品なんだろうなと思っていましたが、台本を読んで稽古をしたら、体の筋肉もそうなのですが、心の筋肉までもが熱くなるようなシーン、物語、音楽がたくさんあって。生身の人間が演じ甲斐のあるミュージカルだなと改めて感じています。稽古をしていて、右を見ても左を見てもよく知った皆様ばかりなので楽しいです。石丸さんとは初めてですけれども、ここから色々な可能性を作品の中で見つけながら、最高のエンターテインメント、最高の舞台になるように努めていきたいと思っています、よろしくお願いします!

伊礼彼方(左)、上原理生=中村嘉昭 撮影拡大伊礼彼方(左)、上原理生=中村嘉昭 撮影

伊礼彼方:皆さんがおっしゃっているところと一緒で、「北斗の拳」をミュージカル化なんて、どうやってやるんだろう?というところから始まったんですけれども。以前から堀社長をはじめ、ホリプロの「演劇界に、新しい風を吹かそう」という姿勢に、僕はすごく感化されていて。いつかホリプロさんが作る新作に出演にしたいなと数年前から思っていました。ですからこのお話をいただいたときに「是非とも!」と。皆さんも多分そうだと思うんですが、どうなるんだろうって未知数じゃないですか。だからこそ僕もこういう新しい作品にかけてみたいという思いが募っていったんですよね。僕も小さいときには、「北斗の拳」ごっこをやっていたんですね。顔面以外はどこを叩いてもいいという遊びをしていたので(笑)、ケンシロウの「あたたたーっ!」も勇輔くんに負けないぐらい上手なんです(笑)、僕は本番では言わないですけれども(笑)。本を読んだときは、原作をギュッと凝縮しているので全体像がはじめはあまり見えていなかったのですが、そこにワイルドホーンさんの音楽が重なった時の感動といったら!石丸さんと高橋さんが練って練って作られた脚本と、ワイルドホーンさんの楽曲が合わさった時の衝撃は今でも忘れられないですね。今回は聞いていただけなかったのですが、リンという役の曲が大好きで。この曲を聞いた時には泣きました。涙が止まらなかった。それも是非舞台で聞いていただきたいです。

上原理生:この作品のお話をいただいたときには、皆さんと同じく「北斗の拳」をやるの?という驚きがまずありました。自分自身、リアルタイムではないですけれども、高校生の頃に原作に魅了された一人で。少年だったら、ほぼ誰もが一度は読んだことがあって、そのキャラクター、物語に魅了されたであろう「北斗の拳」に自分が出させてもらうんだという興奮があります。「北斗の拳」は男たちの戦いはもちろん、数々の名言もたくさんある作品だと思います。しかもちゃんとその名言が台本に織り込まれていて、「これを言えるんだ」、「これを聞けるんだ」というものがいっぱいあってワクワクしています。「あべし!!」から、「ひでぶ!!」から、たくさんの名言が再現されますので、楽しみにしていてください。男たちの生き様と、女性たちの強さ、子どもの純粋無垢な思いがしっかり織り込まれております。あとは僕と伊礼さんには「南斗水鳥拳」(※技のひとつ)があるので飛びます。頑張って、華麗なる水鳥拳を見せていきたいと思います。

植原卓也(左)、上田堪大=中村嘉昭 撮影拡大植原卓也(左)、上田堪大=中村嘉昭 撮影

植原卓也:お声がけいただいたときは本当に驚きました。もともと原作を読んだことはあるんですけど、改めて見たら、シンがこんなに早く登場していたんだと思って。ケンシロウと対峙するキャラクターの中でも最初に出てきて、尚且つ、ケンシロウの胸の傷をつけるのがシンだというインパクトのあるキャラクターで、とても光栄だなと思います。今年に入ってからすぐ、リモートの稽古や動きの練習も始まっていて、気合いがどんどん高まっていくなかで、本稽古がはじまったのがつい最近なんですが、最近始まったとは思えないぐらい、みなさんそれぞれがキャラクターと向き合っていて。もう稽古場が白熱しています。しかも新作ということもあって、まだ見たことのない景色をみんなでつかみに行っている感じがとても素敵で、頑張ろうと思える環境です。原作にもちろん忠実な部分もたくさんあるんですが、このミュージカルならではのストーリー展開だったり、自分が演じるシンにも原作にないような生き様もありますので、観にきてくださる皆様に、原作通りという部分と、見たことのないキャラクターの側面みたいなものをあわせて楽しんでもらえるように頑張っていきます。

上田堪大:初めてお話を聞いたときは「僕が出るんですか?」と2回ほど同じ言葉を繰り返しました。僕自身グランドミュージカルは初めての出演で、普段2.5次元ミュージカルを中心にやっているので、今もそうなんですが、稽古の序盤から常に緊張の中だったんです。ただ、Wキャストのシン役が植原くんで、同い年でほっとしています。石丸さんの大きな愛に包まれながら、皆さんに本当に仲良くしていただいています。自分が事前に台本を読んでいた時と、今、目の前にあるものがすごく変わっていっている。自分の想像していなかったものというか、どんどんきれいな景色になっているなと思っているので、この景色をお客様に届けられたらどれだけ幸せだろうなと思っています。まだまだ自分自身は課題だらけなので、本番までにしっかりと作り上げていきたいと思います。

どう表現するの?にあの手この手でお応えする

大貫勇輔=中村嘉昭 撮影拡大大貫勇輔=中村嘉昭 撮影

──では、改めて意気込みとメッセージを代表して、大貫さん、石丸さんからお願いします。

大貫:皆さんのお話を聞いていただいた通り、本当に日々白熱した稽古が続いています。それぞれがイメージした世界が現実となって現れたときに、予想しなかった、予想をさらに超える感動や発見があって。今日、劇中の歌をやっと皆様に聞いていただけたことが本当に嬉しいです。本番まで1ヶ月と少しありますが、ここからどんどん磨きをかけて、もう既にものすごいパワーが渦巻いているのですが(笑)、これがもっと洗練されて、皆様に素晴らしいものをお届けできるのではないかなと思っています。キャスト・スタッフ一丸となって頑張りますので、皆様、是非観にいらしてください!

石丸:今、世界中がリーダーを求めている時代だと思います。このミュージカルの中で、救世主として、民衆から望まれて立ち上がっていくケンシロウの姿に私が一番注目しているのは、彼が闘うエネルギーとするのが、他者の痛み、悲しみだということです。「北斗の拳」の中では、強敵のことを「とも」と呼びますが、その「とも」の悲しみがケンシロウの中にうず高く積もった時に、拳が完成するんです。その過程が素晴らしくて。大貫ケンシロウが愛を守るために戦っている時、悪を打ちのめす為に怒りにうち震えながら戦っている時に、リーダーの登場を感じ、世界的なレベルの歌とアクションの融合に、私は胸が震える思いです。きっとお客様にも胸のすく思いを感じていただけると思います。そして、人物の厚みを描く、ドラマを描いていくことと共に、「あのシーンは?あの台詞は?あの技は?どうやって表現するの?」ということに、一つひとつあの手この手を使ってお応えしたいと思います。どうぞお楽しみになさってください。舞台芸術が苦しんでいる時代に、劇場に足を運んでくださるお客様、今日配信で見てくださっている皆様、応援をありがとうございます。皆さんにミュージカルってこんなに楽しいものなんだと思っていただいて、そしてまた、新しい形のミュージカルをお届けできるよう、いつも感謝しながら、みんなで歩んでおります。劇場にどうぞお越しください。お待ちしております。

◆公演情報◆
ミュージカル『フィスト・オブ・ノーススター~北斗の拳~』
東京:2021月12月8日(水)〜29日(水) 日生劇場
大阪:2022年1月8日(土)~9日(日)  梅田芸術劇場メインホール
名古屋:2022年1月15日(土)~16日(日)  愛知県芸術劇場 大ホール
公式ホームページ
特設サイト
[スタッフ]
原作:漫画「北斗の拳」(原作:武論尊/漫画:原 哲夫)
作曲:フランク・ワイルドホーン
演出:石丸さち子
脚本・作詞:高橋亜子
[出演]
大貫勇輔
平原綾香・May’n(Wキャスト)
加藤和樹・小野田龍之介(Wキャスト)
植原卓也・上田堪大(Wキャスト)
川口竜也、白羽ゆり、松原凜子
伊礼彼方・上原理生(交互役替わり)
福井晶一・宮尾俊太郎(Wキャスト)
ほか

全ジャンルパックなら本の記事が読み放題。


筆者

橘涼香

橘涼香(たちばな・すずか) 演劇ライター

埼玉県生まれ。音楽大学ピアノ専攻出身でピアノ講師を務めながら、幼い頃からどっぷりハマっていた演劇愛を書き綴ったレビュー投稿が採用されたのをきっかけに演劇ライターに。途中今はなきパレット文庫の新人賞に引っかかり、小説書きに方向転換するも鬱病を発症して頓挫。長いブランクを経て社会復帰できたのは一重に演劇が、ライブの素晴らしさが力をくれた故。今はそんなライブ全般の楽しさ、素晴らしさを一人でも多くの方にお伝えしたい!との想いで公演レビュー、キャストインタビュー等を執筆している。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

橘涼香の記事

もっと見る