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アダム・クーパー インタビュー、ミュージカル『SINGIN’IN THE RAIN~雨に唄えば~』(上)

3度目の来日公演で有終の美を飾る

大原薫 演劇ライター


 ミュージカル『SINGIN’IN THE RAIN~雨に唄えば~』の来日公演が2022年1~2月、上演される。

 ハリウッド映画がサイレントからトーキーへと進化変貌する時代にブロードウェイを目指す作家と俳優たちのサクセス・ストーリーと、当時の映画制作現場の舞台裏をコメディタッチで描いた映画『雨に唄えば』。名優ジーン・ケリーとデビー・レイノルズほかによる出演で世界的に有名な本作は何度か舞台化されているが、2012年に英国ロイヤル・バレエ団の元プリンシパル、アダム・クーパーを主演に迎え、ロンドン・ウエストエンドで決定版として舞台化された。

 アダム・クーパーが演じるのは銀幕の大スター、ドン・ロックウッド。どしゃぶりの雨の中で華麗にダンスを繰り広げるアダムが評判となって作品は大ヒットを果たし、海外ツアーが展開された。2014年には日本公演だけにオリジナルキャストのアダムが登場。当時、会場となった東急シアターオーブの海外ミュージカルでの最高動員記録を樹立した。2017年には初演の記録を上回る6万人の動員を達成した。

 2022年1月、ついに待望の来日公演が上演される。アダムの『SINGIN’IN THE RAIN』が観られるのは今回がラストだという。アダムに作品に寄せる意気込みや思い出を聞いた。また、イギリス在住のアダムがコロナ禍においてどのような時間を過ごしたのか、さらには今後の展望も語っていただいた。

この作品にはコロナ後の世界に必要な喜びと希望がある

アダム・クーパー=野津千明 撮影拡大アダム・クーパー=野津千明 撮影

――アダムさんは10年前からこの作品に出演されていますが、時間の流れとともにドンという役に対する思いや作品に対する考えで変わったところはありますか。

 10年前に最初に出演したときは、お客様にどう捉えられるか、あまりわからなかったんですね。でも10年間(断続的に)演じてきてお客様に喜んでいただけているというのは、この作品というのは他のショーよりも何か特別なものがあるのだなと思っています。この作品はお客様に影響を与える力を持っているんです。特にこのコロナ後の世界で人々が必要としているものを、この作品は持っているように感じます。皆さんが必要としている喜びや希望が、この作品にはあると思います。

 この作品を10年演じてきて、お客様からいろいろな手紙をもらいます。「この作品からパワーをもらった」「この作品を見て、人生や日々の生活にとても良い感覚が持てるようになった」という言葉をいただくことが、他の作品よりもずっと多いんですね。たとえば、「人生の中で困難な状況にあるとき、この作品を観てとても助けられた」「今日は良くない一日だったけれど、この作品を観て良い日になった」と言ってくださる方がとても多い。

 この作品はある意味、薬のようなものなのかもしれません。何回も見に来てくださるお客様がいるというのは、やっぱりそれだけ人々が必要としている作品なのかなと思っています。これは、10年前には予想もしていなかったことなんです。

――観ている方にパワーを与える作品は演じる側にとってもエネルギーが必要なのでは? 演じ終わると疲れてしまうのか、それともハッピーになるのか、どちらでしょうか?

 もちろん肉体的には大変です。お客様のエネルギーやショーの力がパフォーマーを引っ張っていってくれるような特別なところがこの作品にはあるから、公演が終わるまでアドレナリンが出て、疲れていることにも気づかないんです。でも、公演が終わって次の公演までにしっかり休んで体力を回復しなくてはと思います。

ウエストエンド再開初日は観客と一体になった特別な瞬間

アダム・クーパー=野津千明 撮影拡大アダム・クーパー=野津千明 撮影

――『SINGIN’IN THE RAIN~雨に唄えば~』来日公演は当初2020年の上演が予定されていましたがコロナ禍により公演中止となり、この度2022年の上演が決定しました。公演中止になったときの思いと、改めて日本での公演が上演されることが決まったときのお気持ちをお聞きします。

 2020年の公演がキャンセルになったときは非常にショックでした。2020年に上演するという話を始めたのが2017年に来日したときだったんですね。だからそれから3年の間ずっと上演について話を続けていたものがキャンセルになってしまったんです。コロナ禍の状況で中止は避けられないだろうと思っていたけれど、それでも希望を持つようにはしていました。しかし、やはり中止に決まってしまった………動揺しましたし、とても悲しかったです。

 どの作品であっても日本で上演できることをいつも楽しみにしています。特にこの作品は日本でとても人気があるので、日本公演をとても楽しみにしていたんです。だから、2022年1月に上演できると決まったときは本当に嬉しかったし、安堵しました。と同時にワクワクしましたね。日本では劇場を確保するのが難しいという話を聞いていますので、1年ちょっとの延期でまた上演できると決まったのが嬉しかったです。来年日本に行くのが待ちきれないし、とても楽しみにしています。

――ロンドン・ウエストエンドの舞台がコロナ禍での全面休演から再開し、アダムさん自身は今年8月に『SINGIN’IN THE RAIN』で初めて舞台に復帰しました。初日はどんな気持ちになりましたか。

 初日の気持ちはある意味興味深かったです。状況は常に変わり続けていたので、とにかく初日の幕が開けられますようにと祈り続けていました。PCR検査を毎日受けていましたし、マスクもつけて、お稽古場以外では他のキャストとも交流しないなど、いろいろな努力をしていました。初日当日は劇場全体の雰囲気が今までにないもので、とにかく観客から発せられた声や音がすごく大きかった。まるでサッカー場やロックコンサートにいるみたいな感じで、圧倒されましたね。1年半の間に溜まっていた不安やエネルギーが一気に解放されたようにも感じました。初日にステージに立ったとき、今までで一番大きい喜びを感じました。1年半の間舞台にずっと立てなくて、自分が愛する仕事ができていませんでしたから。舞台に立てたことは大きな喜びでしたし、それをお客さんと一体になって感じられた瞬間はとても特別なもので、これからも忘れられないと思います。

◆公演情報◆
『SINGIN’IN THE RAIN ~雨に唄えば~』
アダム・クーパー特別来日 日本公演
東京:2022年1月22日(土)~2月13日(日)  東急シアターオーブ
大阪:2022年2月18日(金)~2月21日(月)  オリックス劇場
公式サイト
[スタッフ]
音楽:ナチョ・ハーブ・ブラウン、アーサー・フリード
演出:ジョナサン・チャーチ
振付:アンドリュー・ライト
[出演]
アダム・クーパー、シャーロット・グーチ ほか

〈アダム・クーパー プロフィル〉
5歳でタップ、7歳でバレエを習い、1987年ロイヤル・バレエ学校に入学。1989年ロイヤル・バレエ団に入団。1994〜97年プリンシパルを務める。『うたかたの恋』『ロミオとジュリエット』『ユダの木』などに出演。1997年退団。その後はフリーとして、ダンサーだけでなく、演出、振付の分野でも活躍。

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筆者

大原薫

大原薫(おおはら・かおる) 演劇ライター

演劇ライターとして雑誌やWEB、公演パンフレットなどで執筆する。心を震わせる作品との出会いを多くの方と共有できることが、何よりの喜び。ブロードウェー・ミュージカルに惹かれて毎年ニューヨークを訪れ、現地の熱気を日本に伝えている。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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