大原薫(おおはら・かおる) 演劇ライター
演劇ライターとして雑誌やWEB、公演パンフレットなどで執筆する。心を震わせる作品との出会いを多くの方と共有できることが、何よりの喜び。ブロードウェー・ミュージカルに惹かれて毎年ニューヨークを訪れ、現地の熱気を日本に伝えている。
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
3度目の来日公演で有終の美を飾る
――アダムさんのドン役を拝見して一番心を動かされたのは、劇中に土砂降りの雨の中で「SINGIN’IN THE RAIN」を歌い踊っているシーンです。生命力にあふれて、大雨をものともせずに歌い踊る力強さにとても感動しました。アダムさんご自身はどんな思いであのシーンを演じていらっしゃるのでしょうか?
いろいろなことを感じています。まず、あのシーンはドンと(駆け出しの女優で、ドンと共にミュージカル映画を作ろうとする)キャシーの関係が確固たるものになろうとするところで、この作品の中でも一番喜びが大きい瞬間でもあります。それと同時に、どしゃぶりの雨の中での素晴らしい振付で、雨も振付の一部になっていて、さらにお客様の反応もナンバーに欠かせないものになっている。自分にとっても今までまったく経験したことがないシーンなんです。毎晩、この場面を演じることが楽しみなんですよ。
ただ、問題としては雨で自分が濡れて、衣裳も重くなるということ。物理的・身体的には大変ですが、このナンバーができる喜びは何ものにも勝ります。お客様とこのシーンを共有することが本当に大好きで、いつも心待ちにしているナンバーです。
――アダムさんが踊ると、水しぶきさえも踊っているように見えますが、水しぶきを飛ばすコツは何かあるんですか。
練習がたくさん必要です(笑)。でもこの役をずっと演じているので、水しぶきを飛ばすのにも慣れました。もしかしたら、僕の足が水しぶきを上げるのに向いているのかもしれないね(笑)。2011年初演をチチェスターで上演したときは今とはちょっと状況が違っていて、床の一部がすごく滑りやすかったんです。自分もよく転びましたし、結構気をつけながら踊らなければいけなかったですね。でも今は床が改良されて、そのときよりもずっと自由に踊れるようになりました。もちろん、ダンスと水はあまり良いコンビネーションではないので常に気をつけていないといけませんが。今はどうやったらより素晴らしい水しぶきができるか、その瞬間を探しながら踊っていますね。
◆公演情報◆
『SINGIN’IN THE RAIN ~雨に唄えば~』
アダム・クーパー特別来日 日本公演
東京:2022年1月22日(土)~2月13日(日) 東急シアターオーブ
大阪:2022年2月18日(金)~2月21日(月) オリックス劇場
公式サイト
[スタッフ]
音楽:ナチョ・ハーブ・ブラウン、アーサー・フリード
演出:ジョナサン・チャーチ
振付:アンドリュー・ライト
[出演]
アダム・クーパー、シャーロット・グーチ ほか
〈アダム・クーパー プロフィル〉
5歳でタップ、7歳でバレエを習い、1987年ロイヤル・バレエ学校に入学。1989年ロイヤル・バレエ団に入団。1994〜97年プリンシパルを務める。『うたかたの恋』『ロミオとジュリエット』『ユダの木』などに出演。1997年退団。その後はフリーとして、ダンサーだけでなく、演出、振付の分野でも活躍。
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