2021年11月17日
細木数子が亡くなり、そのあと瀬戸内寂聴が亡くなり、「あの二人が相次いで加入したあの世は今、大変なことに」とかいって面白がってるのがTwitterなどで拡散されていたが、いやそれはいっしょにしてはアカンだろうと思った。
寂聴さんは、剃髪に法衣で説法してる場面なんかをよくテレビでお見かけして(何かのCMでも使われていた気もする)、それがなんというか、私のようなひねくれ者から見ると「ちょっとつっこんだようなこと言いつつすぐイイ話に収束する、つまんねー法話」みたいに聞こえた。
これはテレビで絵になるところだけ映してるからだろうと思う。たぶん頭からぜんぶ聞いたらちゃんと面白いのかもしれない。……というところでちょっと思い出したのが辻元清美で、あの人は「疑惑の総合商社ですよ!」って国会質問で言ってた場面が何かといえば流されていたものであるが、あの人もあればっかりではなかったはずで、今回の選挙で落選したあとは「実はあの人の交渉能力はすごかった」「自民も実は彼女を認めていた」とか言われていた。もっとそういう面を見ておくんだった。
とはいっても、わかりやすいからって「疑惑の総合商社」ばっかり繰り返して流すテレビ局はどうなのかと思う。「絵になる」ものを流したいと思うのは当然だが、一つ絵になるものを見つけたらそればっかじゃなくて、「絵」もどんどん新しいのを見つけてきてほしい。
で、寂聴さんの「法話場面」にはなんの感銘も受けなかった私ですが、寂聴さんの本を読むと、
「う、うまい……」
いや、大作家に失礼な言い草ですけれど。
この人の小説や評伝も面白いが、だんぜんお勧めしたいのは『奇縁まんだら』のシリーズで、わりに晩年に近い作品なので(2010年代にシリーズのラストが出ている)読みやすいです。寂聴さんとすれちがった有名人、作家や俳優や舞踊家なんかについての随想集で、もとは日本経済新聞に連載していたものをまとめてある。それぞれの人について10ページぐらいの短さで、それなのに取り上げた人がすごく印象的に見えるのだ。今の基準でメジャーな人ばかりではないのに、人物像がとっても生き生きしてるのですよ。
必ずしも全員ほめてるわけではなく、変わった人、ヘンなことやる人もいるのに、どの人も魅力がある。新潮社の齋藤十一(伝説の編集者)について書かれていた中に、若き日の石原慎太郎がちらっと出てきて、その印象が鮮やかで慎太郎好きになりかかった。……というぐらい、とにかくうまい。こんなうまい作家が亡くなったのは残念だ。もっといろんな人についての文章を読みたかった。
で、一方の細木さんである。
私はこの人がテレビに出ているのも嫌いだった。えらそうな放言。地獄に堕ちるわよの決め台詞。占い師をそもそも信用できない上にこのえらそうな振る舞いで、おまけにやたら売れていてテレビに出る。
私が細木さんの名前をはじめて知ったのが、確か週刊新潮に載っていた記事で、「認知症になった安岡正篤につけこんで婚姻届を勝手に出した毒婦」的な紹介をされていた。安岡正篤は人も知る「自民党政治家の精神的指導者」で、私は自民党を支持しない者なので、精神的指導者がこんなのにひっかかったというので「へー、それはそれは」などと嗤っていた。
その後、細木さんがやたらテレビに出るようになって、「え! あの、安岡正篤とムリヤリ結婚したあの細木数子という人が! いいのか!」とずっと驚いていたのだ。細木さんの所業は、今どきの陰謀論なら、自民党に消されてもしょうがないぐらいではないのか。
しかし、このニンジンのソース味きんぴらを食べてみて
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