メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

news letter
RSS

細木数子さんと瀬戸内寂聴さんをいっしょにしてはアカンだろうと思う理由

青木るえか エッセイスト

 細木数子が亡くなり、そのあと瀬戸内寂聴が亡くなり、「あの二人が相次いで加入したあの世は今、大変なことに」とかいって面白がってるのがTwitterなどで拡散されていたが、いやそれはいっしょにしてはアカンだろうと思った。

 寂聴さんは、剃髪に法衣で説法してる場面なんかをよくテレビでお見かけして(何かのCMでも使われていた気もする)、それがなんというか、私のようなひねくれ者から見ると「ちょっとつっこんだようなこと言いつつすぐイイ話に収束する、つまんねー法話」みたいに聞こえた。

 これはテレビで絵になるところだけ映してるからだろうと思う。たぶん頭からぜんぶ聞いたらちゃんと面白いのかもしれない。……というところでちょっと思い出したのが辻元清美で、あの人は「疑惑の総合商社ですよ!」って国会質問で言ってた場面が何かといえば流されていたものであるが、あの人もあればっかりではなかったはずで、今回の選挙で落選したあとは「実はあの人の交渉能力はすごかった」「自民も実は彼女を認めていた」とか言われていた。もっとそういう面を見ておくんだった。

 とはいっても、わかりやすいからって「疑惑の総合商社」ばっかり繰り返して流すテレビ局はどうなのかと思う。「絵になる」ものを流したいと思うのは当然だが、一つ絵になるものを見つけたらそればっかじゃなくて、「絵」もどんどん新しいのを見つけてきてほしい。

 で、寂聴さんの「法話場面」にはなんの感銘も受けなかった私ですが、寂聴さんの本を読むと、

 「う、うまい……」

 いや、大作家に失礼な言い草ですけれど。

瀬戸内寂聴さん拡大11月9日に99歳で亡くなった瀬戸内寂聴さん。細木数子さんが死去した翌日のことだった

 この人の小説や評伝も面白いが、だんぜんお勧めしたいのは『奇縁まんだら』のシリーズで、わりに晩年に近い作品なので(2010年代にシリーズのラストが出ている)読みやすいです。寂聴さんとすれちがった有名人、作家や俳優や舞踊家なんかについての随想集で、もとは日本経済新聞に連載していたものをまとめてある。それぞれの人について10ページぐらいの短さで、それなのに取り上げた人がすごく印象的に見えるのだ。今の基準でメジャーな人ばかりではないのに、人物像がとっても生き生きしてるのですよ。

 必ずしも全員ほめてるわけではなく、変わった人、ヘンなことやる人もいるのに、どの人も魅力がある。新潮社の齋藤十一(伝説の編集者)について書かれていた中に、若き日の石原慎太郎がちらっと出てきて、その印象が鮮やかで慎太郎好きになりかかった。……というぐらい、とにかくうまい。こんなうまい作家が亡くなったのは残念だ。もっといろんな人についての文章を読みたかった。

全ジャンルパックなら本の記事が読み放題。


筆者

青木るえか

青木るえか(あおき・るえか) エッセイスト

1962年、東京生まれ東京育ち。エッセイスト。女子美術大学卒業。25歳から2年に1回引っ越しをする人生となる。現在は福岡在住。広島で出会ったホルモン天ぷらに耽溺中。とくに血肝のファン。著書に『定年がやってくる――妻の本音と夫の心得』(ちくま新書)、『主婦でスミマセン』(角川文庫)、『猫の品格』(文春新書)、『OSKを見にいけ!』(青弓社)など。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

青木るえかの記事

もっと見る