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May J.インタビュー(上)、ミュージカル『ボディガード』で初主演

ホイットニーへのリスペクトを込め、私なりのレイチェルを

小野寺亜紀 演劇ライター、インタビュアー


 ミュージカル『ボディガード』日本キャスト版の再演(2022年1月21日~31日 梅田芸術劇場メインホール、2月8日~19日 東京国際フォーラム ホールC)で、歌手のMay J.さんが舞台初主演を果たします。

 1992年公開の同名映画で、ホイットニー・ヒューストンさんが演じた世界的人気シンガー、レイチェル・マロン役。昨年の初演でこの役を演じた柚希礼音さん、新妻聖子さんに並び、トリプルキャストとして挑みます。

 本作は謎のストーカーに付きまとわれるレイチェルを、ボディガードのフランク・ファーマーが命懸けで守るラブストーリーの大ヒット作。2012年、ホイットニーの数々のヒット曲を盛り込み、ロンドンで初ミュージカル化され、英国ローレンス・オリヴィエ賞4部門にノミネート。その後世界中で上演、日本でも2019年に来日公演が行われ、2020年春には大きな話題を集めるなか、日本キャスト版が開幕。けれど、新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、全33公演中、大阪5公演のみの開催となりました。

 待望の再演には、初演のメインキャストがほぼ集結。その中に新キャストとして飛び込む形のMay J.さんは、4か国語を話し作詞作曲もこなす才能と、心に染み入る美しい歌声で、シンガーとしての実力は折り紙つき。さらに昨年は『ウエスト・サイド・ストーリー Season2』のアニータ役で、演技にも初挑戦しました。今年デビュー15周年を迎える彼女は大役を前に、どのような心境なのか。作品やホイットニーさんへの想い、これまでのキャリアを経ての意気込みなど、色々と伺いました。

「好き!」という気持ちを全開にして歌ったオーディション

May J.=久保秀臣 撮影拡大May J.=久保秀臣 撮影

――ミュージカル『ボディガード』には、オーディションから参加されたのでしょうか。

 はい、レイチェル役のお話をいただいて、まずオーディションで歌を4曲歌いました。(劇中歌の)「I Will Always Love You」「Run To You」「I Have Nothing」「Queen Of The Night」です。とにかく好きな曲なので、「好き!」という気持ちを全開にして歌いましたが、手応えはわからなかったです。

――出演が決まった時のお気持ちは?

 信じられない思いでした。映画の『ボディガード』は幼い頃からビデオで何度も見ていて、特にホイットニー・ヒューストンの歌声に衝撃を受けました。歌手になりたかった私は、彼女の歌声からビブラートのかけ方や声の膨らませ方、響かせ方など歌の基礎を学んだので、そのホイットニーが演じるレイチェル役をやらせていただくということで本当にうれしかったです。

――今回は2020年に上演された日本キャスト版の再演で、初演にレイチェル役を演じられた柚希礼音さん、新妻聖子さんと共に、トリプルキャストとなります。

 実はまだ自分が演じさせていただくというお話もないときに、2019年の『ボディガード』来日公演をいちファンとして観に行き、日本キャスト版のお二人のレイチェルも観に行こうと思っていたんです。すごく楽しみにしていたので、(東京公演中止で観劇できず)残念に思っていました。私は再演に転入生のような形で加わるので、とてもプレッシャーはありますが、これから始まる稽古では、柚希さん新妻さんのダンスや歌、演技のすべてをしっかり見て学ばせていただき、自分でもさまざまに試しながら創っていきたいと思います。

――英国キャストによる来日公演をご覧になったということですが、印象はいかがでしたか?

 ライブの要素がとても大きなミュージカルだと思いました。映画にないシーンもあり、曲も映画で使われた曲のほかに、ホイットニー・ヒューストンのヒット曲もたくさん追加されているので、ミュージカルにあまり慣れていない方でも楽しめる作品だと思いました。冒頭からライブ会場の場面で始まり、豪華なセットでダンサーがたくさん踊っていて、レイチェルの衣裳もすごくゴージャスなんです。お客さんが「ここはライブ会場!?」と思うぐらい、華やかなシーンが散りばめられていて、とにかく音楽の素晴らしさを感じました。

 ただ歌うのは大変そうだなと(苦笑)。レイチェルが歌う曲は15曲以上、歌手のワンステージ分ぐらいありますし、プラス踊りや台詞もあって……。自分が演じるとなると、今まで経験した以上のすごいエネルギーを使うなと、あとから感じました。

May J.=久保秀臣 撮影拡大May J.=久保秀臣 撮影

――まだ稽古前で共演者の方ともお会いされていないということですが、役作りや歌の面で、何か準備しておきたいことはありますか?

 そうですね、私がこれまで「ホイットニーが大好き」という気持ちで歌っていた楽曲の歌い方を、変えなきゃいけないなと思っています。レイチェルがなぜその曲を、その場面で歌っているのかは理由があるんですよね。ストーリーの流れの中で彼女が味わった感情、思っていることを歌にそのまま乗せているので、レイチェルの気持ちになって歌う、という準備ですね。

――では、何度も映画を見返したりされるのでしょうか?

 それが、舞台は映画と内容が少し違うんですよね。だから台本とにらめっこです!

◆公演情報◆
ミュージカル『ボディガード』
大阪:2022年1月21日(金)~31日(月) 梅田芸術劇場メインホール
東京:2022年2月8日(火)~19日(土) 東京国際フォーラム ホールC
公式ホームページ
公式Twitter
ワーナー・ブラザース映画「The Bodyguard/ボディガード」
(1992年米国1993年日本公開 ホイットニー・ヒューストン、ケビン・コスナー主演)
[スタッフ]
原作:ローレンス・カスダン
脚本:アレクサンダー・ディネラリス(「バードマン」でアカデミー賞受賞)
訳詞:森雪之丞
翻訳:阿部のぞみ
編曲:クリス・イーガン
演出・振付:ジョシュア・ベルガッセ
[出演]
柚希礼音・新妻聖子・May J.(トリプルキャスト)、大谷亮平/AKANE LIV、入野自由、猪塚健太、大山真志/内場勝則 ほか

〈May J.プロフィル〉
日本、イラン、トルコ、ロシア、スペイン、イギリスのバックグラウンドを持ち、幼児期よりダンス、ピアノ、オペラを学び、作詞、作曲、ピアノの弾き語りもこなす。2006年メジャーデビュー。2014年公開のディズニー映画『アナと雪の女王』の日本版主題歌「レット・イット・ゴー~ありのままで~」(エンディング)を担当。同年の第65回NHK紅白歌合戦に初出場。2008年より、NHK WORLDの海外向け音楽番組「J-MELO」のメインMCを担当。

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筆者

小野寺亜紀

小野寺亜紀(おのでら・あき) 演劇ライター、インタビュアー

大阪府出身。幼い頃から舞台をはじめ、さまざまなエンターテインメントにエネルギーをもらい、その本質や携わる人々の想いを「伝える」仕事を志す。関西大学文学部卒業後、編集記者を経て独立。長年、新聞や雑誌、Webサイト、公式媒体などで、インタビューや公演レポート等を執筆している。特に宝塚歌劇関係の取材は多い。 小野寺亜紀オフィシャルサイト(https://aki-octogreen.themedia.jp/)

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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