加藤和樹インタビュー(上) 、ミュージカル『フィスト・オブ・ノーススター~北斗の拳~』
原作ファンの方にも納得してもらえるミュージカルを!
橘涼香 演劇ライター

全世界で累計発行部数1億部超えの伝説的コミック「北斗の拳」が日本発のオリジナルミュージカル『フィスト・オブ・ノーススター~北斗の拳~』として、12月8日~29日東京日比谷の日生劇場で世界初演の幕を開ける(2022年1月8日~9日大阪・梅田芸術劇場メインホール、1月15日~16日愛知・愛知県芸術劇場大ホールで上演。のち中国ツアー実施予定)。
「北斗の拳」は週刊少年ジャンプに1983年から88年まで原作・武論尊、漫画・原哲夫により連載された作品。最終戦争により文明社会が失われ、暴力が支配する世界となった世紀末を舞台に、北斗神拳の伝承者・ケンシロウが、愛と哀しみを背負い救世主として成長していく姿を描いて、連載開始から35年以上たった今でも、世界中で多くの読者に愛され続けている。
そんな作品の世界初のミュージカル化である今回の舞台は、『ジキル&ハイド』『スカーレット・ピンパーネル』『マタ・ハリ』など、日本、韓国ほか世界中で大ヒットミュージカルを手掛けるアメリカ人作曲家フランク・ワイルドホーン作曲、多くの有名アーティストから指名を受けるコレオグラファーの辻本知彦と、やはり多くの日中共同プログラムを成功に導いてきた中国人演出家・振付家の顔安(ヤン・アン)が振付を担い、話題のミュージカルの脚本・作詞をこれまでも多数手がけている高橋亜子が脚本を、そして気鋭の演出家として躍進を続ける石丸さち子が演出をするという、日米中三ヶ国のスタッフが集結。
主人公のケンシロウに大貫勇輔、その婚約者ユリアに平原綾香とMay’n。北斗三兄弟の長兄ラオウに福井晶一と宮尾俊太郎のそれぞれWキャストをはじめとした、ミュージカル界で活躍する多彩なキャストが揃い、ワールドプレミアに向けての稽古が活況を迎えている。
そのなかで、原作でも大きな人気を誇る次兄トキを小野田龍之介とのWキャストで演じる加藤和樹が、自身も原作ファンだという作品の魅力や、トキ役への思いを語ってくれた。
人は哀しみを背負って強くなるという作品の根幹

加藤和樹=中村嘉昭 撮影
──世界初演の作品ということで、様々な要素が満載と伺っていますが、いまどのような形でお稽古が進んでいるのですか?
わりに早いペースで(演出の石丸)さち子さんが稽古をつけてくださっていて、今日(※取材は11月中旬)もう初めての通し稽古なんです。本番までまだ1ヶ月あるという段階で通しができるというのは、これからまだまだブラッシュアップしていける訳ですから、ありがたいですね。と言うのも、確かに大変な作品ではあるんですよ。アクションもありますし、フライングもあり、正直に言って劇場に行ってみないとわからない、という部分がたくさん出てくると思うんです。ですから劇場に行った時に、如何ようにも対応できるように芝居を固めていく。そういう稽古を重点的にやっているな、と感じています。
──確かにもう通し稽古ができるというのは、早いペースなのかな?と思いますが、そうした段階で、はじめに帰るような質問になりますが、そもそも加藤さんは「北斗の拳」という作品がとてもお好きだったそうですね。まず、原作のどんなところに魅力を感じられたのかから教えていただけますか?
子供の頃は単純に、ケンシロウが次々に強敵を倒していく爽快感に惹かれていたと思うんです。でも徐々にケンシロウが「とも(強敵)」と闘っていく過程で、仲間と出会い、最終的にはラオウを愛をもって倒す。男が闘うだけではなくて、人は哀しみを知ることで強くなるんだということ。つまりは作品の根幹の部分なのですが、全ての哀しみを背負っているケンシロウの姿に、いつしか惹かれていったという記憶があります。

加藤和樹=中村嘉昭 撮影
──そうしたご自身にとっても思い入れの強い作品が、いまミュージカルになるにあたってはどうですか?
この作品に限らず、原作があるもの全てに言えることなんですが、やっぱり原作のファンの方がどう思うか?というのはすごく意識することで。それは『テニスの王子様』をやっていた時から感じていました。特に「北斗の拳」については、僕自身、原作がすごく好きだからこそ「この台詞は絶対に言いたい」ですとか、「このシーンは絶対にやりたい」というものがたくさんあるんです。とはいえ原作は膨大な分量ですから、すべてを網羅することは不可能なので、そこからかいつまんでいって、ミュージカルの舞台ならではのものを作り上げていく訳ですけれども、それを原作のファンの方に納得していただく為には、我々が如何に説得力をもってお芝居をするかだと思うので、そこには大きな責任もあれば、難しさもあると感じています。
◆公演情報◆
ミュージカル『フィスト・オブ・ノーススター~北斗の拳~』
東京:2021月12月8日(水)〜29日(水) 日生劇場
大阪:2022年1月8日(土)~9日(日) 梅田芸術劇場メインホール
名古屋:2022年1月15日(土)~16日(日) 愛知県芸術劇場 大ホール
公式ホームページ
特設サイト
[スタッフ]
原作:漫画「北斗の拳」(原作:武論尊/漫画:原 哲夫)
作曲:フランク・ワイルドホーン
演出:石丸さち子
脚本・作詞:高橋亜子
[出演]
大貫勇輔
平原綾香・May’n(Wキャスト)
加藤和樹・小野田龍之介(Wキャスト)
植原卓也・上田堪大(Wキャスト)
川口竜也、白羽ゆり、松原凜子
伊礼彼方・上原理生(交互役替わり)
福井晶一・宮尾俊太郎(Wキャスト)
ほか
〈加藤和樹プロフィル〉
2005年ミュージカル『テニスの王子様』で脚光を浴びる。翌年Mini Album「Rough Diamond」でCDデビュー。2009年には韓国、台湾、中国でCDデビューを果たし、音楽活動と並行し、舞台・ミュージカル・映像作品にも多数出演。俳優・声優としても活躍の場を広げている。近年の主な出演作品は、『マタ・ハリ』、『BARNUM』、『ローマの休日』、『フランケンシュタイン』、『ファントム』、『怪人と探偵』、『BACKBEAT』、『暗くなるまで待って』、project K『僕らの未来』など。第46回菊田一夫演劇賞 演劇賞を受賞。2022年2月~3月に『冬のライオン』への出演が決まっている。
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