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「ドクターX〜外科医・大門未知子〜」の世界観に魅了されて

議員さん方もギャラ半額を申し出た米倉涼子に倣っては?

野菜さらだ コラムニスト/言語聴覚士

 「いたしません!」。高ビーに言い放つ、その女性の姿を初めて見たとき、正直「なんて、いけ好かないやつ!」と直感的に「ネガティブ感情」が沸き起こった。それが私と大門未知子──またの名をドクターX──との最初の出会い(と言っても先方はブラウン管(!?)の中ですが)であった。

 教授回診⇒いたしません
 教授の論文、研究のお手伝い⇒いたしません
 教授のゴルフの送り迎え⇒いたしません
 医局内の雑務⇒いたしません

 とにかく医師免許がなくてもできることは「一切、いたしません」と言い放つすごいドクターなのだ。ただし、外科手術の腕はピカ一で、他のドクターがおじけづくような難しいオペであっても、果敢に取り組み、ここで「私、失敗しないので」と目力を込めて言い切り、そして言葉通りオペを成功させる。

 お馴染みのドラマ「ドクターX〜外科医・大門未知子〜」(テレビ朝日系/毎週木曜日、夜9時)の有名なこの二つの決め台詞以外にも、実は話の端々で医療者にとって大事なことを大門先生はまた言ってのける。

 例えば、シーズン7の今回では、野村萬斎演じるメディカルソリューション本部長と次のような会話があった。

 本部長「僕はあなたと未来の患者について話したいと思っています」
 未知子「私は目の前の患者……と目の前のご飯」(第8話)

 そう、大門先生はいつも「目の前のことに集中」、つまり今ふうの言葉で言えば「イマココ(今ここにいる)」人なのである。こう立ち回れば出世できるなどといった余計なことは一切考えず、とにかく目の前の患者を助ける、それが信条なのだ(そして、目の前のご飯にもという“笑い”をここではとっている。ちなみにこういう“笑い”が随所に散りばめられているのもお楽しみだ)。

 あるいは、病院の上層部が大物政治家である環境大臣を食堂の店主に優先してオペ室を使う段取りをしようとするのに対して、院長代理室にノックもせずに入ってこう言う。

 未知子「おばちゃんのオペやらせてよ」
 大臣秘書「一般人のことなんてどうだっていいんだよ。これは一国の未来がかかった問題なんだ」
 未知子「一般人? じゃこいつ(大臣を顎で指して)は、“なにじん”なのよ」
 大臣「私は、“だいじん(大臣)”だ」(ここにも“笑い”ポイントあり/第7話)

 大門先生は患者にどんな肩書があろうがなかろうが、全く態度を変えることはない。その権力に屈しない姿勢も全編を貫いている。

「ドクターX〜外科医・大門未知子〜」(テレビ朝日系)拡大「ドクターX〜外科医・大門未知子〜」(テレビ朝日系)の主役・米倉涼子さん=撮影・外山俊樹

 さらに医師の在り方についても、折々苦言を呈している。

 本部長「リスクヘッジはできるだけ速やかに行わなければなりません」
 未知子「本当のリスクが見えてないんじゃない? あんたも医者ならわかるでしょう。患者にとって一番危険なのは、いざとなると逃げだす医者なの」(第5話)

 医師・医療従事者にとって、大事なことは「最後まで、どんなことがあっても患者を見捨てないこと」というのもシリーズの最初から物語全体を包んでいる世界観だ。

 俗世間では、嫌だと思っても相手が上の立場だと思えば、腸(はらわた)が煮えくり返っていても「笑顔」を見せて対応するのが常である。そんな世間をよそに「いたしません!」と言い放つ爽快さ、そして、「失敗しないので」と言い切る自信とそれを裏打ちする腕(スキル)。医療ドラマではあるが、ある意味「水戸黄門的痛快さ」が人々を魅了し続けている。

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筆者

野菜さらだ

野菜さらだ(やさいさらだ) コラムニスト/言語聴覚士

本名・三田地真実(星槎大学大学院教育学研究科教授) 教員、言語聴覚士として勤務後、渡米。米国オレゴン大学教育学部博士課程修了(Ph.D.)。専門は応用行動分析学・ファシリテーション論。2016年からオンライン会議システムを使ったワークショップや授業を精力的に行っている。著書に『保護者と先生のための応用行動分析入門ハンドブック』など。教育雑誌連載と連動した 「教職いろはがるた」の動画配信中!

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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