議員さん方もギャラ半額を申し出た米倉涼子に倣っては?
2021年12月09日
「いたしません!」。高ビーに言い放つ、その女性の姿を初めて見たとき、正直「なんて、いけ好かないやつ!」と直感的に「ネガティブ感情」が沸き起こった。それが私と大門未知子──またの名をドクターX──との最初の出会い(と言っても先方はブラウン管(!?)の中ですが)であった。
教授回診⇒いたしません
教授の論文、研究のお手伝い⇒いたしません
教授のゴルフの送り迎え⇒いたしません
医局内の雑務⇒いたしません
とにかく医師免許がなくてもできることは「一切、いたしません」と言い放つすごいドクターなのだ。ただし、外科手術の腕はピカ一で、他のドクターがおじけづくような難しいオペであっても、果敢に取り組み、ここで「私、失敗しないので」と目力を込めて言い切り、そして言葉通りオペを成功させる。
お馴染みのドラマ「ドクターX〜外科医・大門未知子〜」(テレビ朝日系/毎週木曜日、夜9時)の有名なこの二つの決め台詞以外にも、実は話の端々で医療者にとって大事なことを大門先生はまた言ってのける。
例えば、シーズン7の今回では、野村萬斎演じるメディカルソリューション本部長と次のような会話があった。
本部長「僕はあなたと未来の患者について話したいと思っています」
未知子「私は目の前の患者……と目の前のご飯」(第8話)
そう、大門先生はいつも「目の前のことに集中」、つまり今ふうの言葉で言えば「イマココ(今ここにいる)」人なのである。こう立ち回れば出世できるなどといった余計なことは一切考えず、とにかく目の前の患者を助ける、それが信条なのだ(そして、目の前のご飯にもという“笑い”をここではとっている。ちなみにこういう“笑い”が随所に散りばめられているのもお楽しみだ)。
あるいは、病院の上層部が大物政治家である環境大臣を食堂の店主に優先してオペ室を使う段取りをしようとするのに対して、院長代理室にノックもせずに入ってこう言う。
未知子「おばちゃんのオペやらせてよ」
大臣秘書「一般人のことなんてどうだっていいんだよ。これは一国の未来がかかった問題なんだ」
未知子「一般人? じゃこいつ(大臣を顎で指して)は、“なにじん”なのよ」
大臣「私は、“だいじん(大臣)”だ」(ここにも“笑い”ポイントあり/第7話)
大門先生は患者にどんな肩書があろうがなかろうが、全く態度を変えることはない。その権力に屈しない姿勢も全編を貫いている。
さらに医師の在り方についても、折々苦言を呈している。
本部長「リスクヘッジはできるだけ速やかに行わなければなりません」
未知子「本当のリスクが見えてないんじゃない? あんたも医者ならわかるでしょう。患者にとって一番危険なのは、いざとなると逃げだす医者なの」(第5話)
医師・医療従事者にとって、大事なことは「最後まで、どんなことがあっても患者を見捨てないこと」というのもシリーズの最初から物語全体を包んでいる世界観だ。
俗世間では、嫌だと思っても相手が上の立場だと思えば、腸(はらわた)が煮えくり返っていても「笑顔」を見せて対応するのが常である。そんな世間をよそに「いたしません!」と言い放つ爽快さ、そして、「失敗しないので」と言い切る自信とそれを裏打ちする腕(スキル)。医療ドラマではあるが、ある意味「水戸黄門的痛快さ」が人々を魅了し続けている。
ドラマ部門の年間視聴率を見てみると(「ドラマ視聴率ランキング/年代流行」)、「ドクターX」は1位がこれまでに4回、2位が2回、そのうちの1回はお化け番組(?)と言われる「半沢直樹」(TBS系)に1位の座を奪われているが、視聴率自体すべて20%を超える高視聴率番組である。これだけの視聴率を取れるとあれば、テレビ局も制作スタッフも「もう1シリーズ……」と言いたくなるのも無理はない。
一度イメージを変えようとしたのか、2018年に米倉涼子が「リーガルV~元弁護士・小鳥遊翔子~」(ドクターXをもじったのか)と衣替えして登場したときには、4位になってしまった。年間“4位”は、それはそれで素晴らしいのだろうが、ドクターXとの比較では「失敗……」と見えてしまう順位だろう。そして、翌年にドクターXで再び1位に見事返り咲いた。今放映中のシリーズ7は、1年休んでの再開となっている。こうやって改めて視聴率ランキングの表を眺めてみると、2020年のお休みは、もしかすると「半沢直樹を避けたのかも?」と見えなくはない。
シーズン2、3を見ていた頃から、大門未知子を演じる米倉涼子さんの素晴らしい演技もさることながら、強敵(?)である「半沢直樹」との共通点、つまり「一般人が本当は喉のところまで出かかって、でも社会的な制約で言えないセリフ」をスパッと言ってのける、その部分に多くの人が「よくぞ言ってくれたー」と共感するのではないかと思えてきた。
半沢直樹の決め台詞「やられたら、やり返す。倍返しだ!」。
これも、とても普段は言えない言葉だ。
人は、自分が飲み込んだ言葉を思いっきり吐き出す主人公に自らを重ねていく。
ドクターXの面白さは大門未知子の脇を固める俳優陣にもある。
今回、最初から原守ドクターの姿が医局で見られなかったが
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