林瑞絵(はやし・みずえ) フリーライター、映画ジャーナリスト
フリーライター、映画ジャーナリスト。1972年、札幌市生まれ。大学卒業後、映画宣伝業を経て渡仏。現在はパリに在住し、映画、子育て、旅行、フランスの文化・社会一般について執筆する。著書に『フランス映画どこへ行く――ヌーヴェル・ヴァーグから遠く離れて』(花伝社/「キネマ旬報映画本大賞2011」で第7位)、『パリの子育て・親育て』(花伝社)がある。
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
「世界一と言ってもよい豊かな映画文化をもつ日本は協働を望む国の筆頭です」
──今年はコンペティション部門に8本の作品があります。日本、香港、レバノン、ボリビア、インドネシアが1本ずつ、そしてインド映画が3本ありました。
バロン 新しいインド映画の盛り上がりが見られました。とはいえインドは広い国で、それぞれ違う地域から来た作品です。スタイルも美的な表現も異なります。彼らのうち一人は長編3作目で経験のある監督、残る二人は初長編の監督でした(筆者注:結局この二人の初長編監督作品、ナテシュ・へグドの『PEDRO』とイルファナ・マジュンダの『SHANKAR'S FAIRIES』が、次点の「銀の気球賞」を同時受賞)。思い返せば過去にも日本や中国の映画が3本ずつコンペ入りした年もありました。良作なら同じ国の作品が3本入ってもよいと私は考えます。
──近年この国が強い、などなんらかの傾向はありますか。
バロン コロナ禍でもあり全体的な傾向を見極めるのは難しいです。好調だと思っていても、状況はすぐに変化するのです。例えばイラン。豊かな映画文化を持つ国ですが、近年は経済や検閲の問題の煽りを受けています。アフリカも依然として厳しい状況。しかし私たちの映画祭は20年前から「Produire au Sud 南方で製作する」というプロ向けのワークショップを立ち上げ、監督とプロデューサーを招き映画製作を支援してきました。それで今年はその20年目を祝う特集上映を実施、「Produire au Sud」が支えたアイシャ・マッキーのドキュメンタリー『Zinder』を開会式で上映しました。ニジェール出身のアイシャは映画の完成のため並々ならぬ努力をしましたが、現在本作は国際的なキャリアを歩んでいます。
──「Produire au Sud」は今を時めくアピチャッポン・ウィーラセタクンの初監督作品『真昼の不思議な物体』や、東京国際映画祭で話題となりアカデミー賞外国語映画賞でフィリピン代表にもなったミカイル・レッドの『バードショット』を支援するなど、世界映画に大きな貢献をしてきました。2014年からはインド、イスラエル、モロッコ、南アフリカ、タイ、台湾など海外にも活動拠点を広げています。しかし、なぜ日本には拠点がないのでしょう? 共同製作のノウハウを知りたい日本の映画人は大勢いるので、ぜひ日本との協働を検討してほしいです。
バロン まだ詳細は言えないのですが、実は現在日本とのプロジェクトも企画中です。2022年から23年にかけ、最初のコラボレーション企画を発表できそうです。私は世界一と言ってもよい日本の映画文化の豊かさをよく知っています。日本は