メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

news letter
RSS

【ヅカナビ】宙組全国ツアー『バロンの末裔』の魅力が

25年経ってようやく理解できた話

中本千晶 演劇ジャーナリスト


拡大

 宙組全国ツアー『バロンの末裔』をライブ配信で見た。九州を中心に回るツアーだったので観に行くことは叶わなかったが、配信でリアルタイムに見られるようになったのはありがたい。

 そして、視聴後の心の第一声は「『こんなに切なくも素敵なお話だったとは!」。初演を観たはずなのに、その魅力を全くわかっていなかったことが恥ずかしくなった。再演してくれて本当に良かった。

 と、こんなことを書くと初演を愛するファンの皆さま、とりわけ久世星佳さんのファンの方々のお叱りを受けるだろう。だが、ここで見栄をはっても仕方がない。本当にそうだったのだ。

 そこで今回は、この作品の魅力を改めて紐解くとともに、何故私にこのような変化が起こったのか? 25年前の私に足りなかったものは何なのか?について考え、懺悔に変えさせていただこうと思う。

時代に翻弄される、双子の兄弟の物語

 物語の舞台は、20世紀初頭のスコットランド。軍の一員として海外に駐留していたエドワード(真風涼帆)は、男爵家を継いでいる双子の兄ローレンス(真風・二役)が病に倒れたとの知らせを受け取り、帰国する。ホテル開業を夢見ており金が必要なリチャード(桜木みなと)も、エドワードに男爵家の財産が転がり込むことを期待して、追いかける。

 ところが、エドワードが帰国してみると、故郷の男爵家は大変な事態に巻き込まれていた。会計士ローバック(秋音光)が持ちかけた投機話に兄ローレンスが乗ってしまい、全財産を失ったというのだ。男爵家の家や土地は担保として銀行に差し押さえられていた。若き二代目頭取ウィリアム(瑠風輝)は窮状に理解を示すが、ウィリアムの父トーマス(凛城きら)は一刻も早く担保を処理しろと急かす。

 この事件には裏がありそうだと睨んだエドワードは、リチャードらの協力の元に調査を開始した。やがて、屋敷の古くからの庭師ジェラルド(穂稀せり)の話から、男爵家の領地からは石炭が採掘できることが明らかになる。

 男爵家では、病弱な兄をキャサリン(潤花)が懸命に看病していた。エドワードとローレンス、そしてキャサリンは幼なじみであり、キャサリンはローレンスと婚約していた。だが、久しぶりに再会したエドワードとキャサリンは互いに心に秘めてきた想いを再燃させる…。

宙組再演版も、主要なキャストがそれぞれハマり役

 この作品は1996年末、退団する月組トップスター久世星佳のために書き下ろされたものだ。取材のため、脚本・演出の正塚晴彦は装置の大橋泰弘、音楽の高橋城らと共にスコットランドを訪れたという力の入れようである。

 したがって、主人公はじめ主要な役も当時のキャストへの当て書きである。だが、再演となる今回も、主要なキャストがそれぞれハマり役だった。

・・・ログインして読む
(残り:約1790文字/本文:約2945文字)

全ジャンルパックなら本の記事が読み放題。


筆者

中本千晶

中本千晶(なかもと・ちあき) 演劇ジャーナリスト

山口県出身。東京大学法学部卒業後、株式会社リクルート勤務を経て独立。ミュージカル・2.5次元から古典芸能まで広く目を向け、舞台芸術の「今」をウォッチ。とくに宝塚歌劇に深い関心を寄せ、独自の視点で分析し続けている。主著に『タカラヅカの解剖図館』(エクスナレッジ )、『なぜ宝塚歌劇の男役はカッコイイのか』『宝塚歌劇に誘(いざな)う7つの扉』(東京堂出版)、『鉄道会社がつくった「タカラヅカ」という奇跡』(ポプラ新書)など。早稲田大学非常勤講師。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

中本千晶の記事

もっと見る