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[2021年 テレビベスト5]テレビに燃料を探して火を点けて大騒ぎ

青木るえか エッセイスト

 紙の本が読まれなくなったようにテレビもすでに見られていない、今は本もテレビもネットに取って替わられた、と言われてもう10年ぐらい経っている気がするが、どうだろうか。

 本のほうは確かに廃れつつあるのかもしれないが、テレビ、それも地上波はいまだにすごいパワーだと思う。なんだかんだ言って、人びとはテレビの言うことに燃料を探して火を点けて大騒ぎしてるんじゃなかろうか。そんなことを考えた1年で、心に残ったテレビ番組についてです。

今年はドラマの当たり年……なのか?

第5位『夫のちんぽが入らない』(フジテレビ系。番組途中で『おとちん』にタイトル変更してた気がするが公式サイトではまだフルネームで書かれているのが少々ナゾ。2019年にフジテレビオンデマンドとNetflixで配信)

 深夜の連続ドラマ。出版時話題になった小説『夫のちんぽが入らない』(こだま著)のドラマ化。この小説は世評が高かったが、私は読んでみて「リアリティがない」「作り話感が強い」と感じて、面白いとはまったく思わなかったのだが、これがテレビドラマ化されたら面白かったのである。ふつう「好きな小説がテレビになったらガックリ」というのがよくある話なのに、原作小説にまったくハマらなかったのにドラマを見たら「原作の良さがわかってしまった……」というのはすごく珍しい体験だったので驚いたのである。

 ドラマのどこがよかったのかというと、石橋菜津美演じる主人公。「ああ、この人は、夫のちんぽが入らないのだな」ということが納得できるルックスに演技。「さぞや入らなくて戸惑っているだろうなあ」と、彼女の身になって入らない感触までわかってしまうぐらいであった。

第4位『俺の家の話』(TBS系)

『俺の家の話』(TBS系)の脚本を書いた宮藤官九郎さんドラマ『俺の家の話』(TBS系)の脚本を書いた宮藤官九郎さん
 今年はドラマの当たり年だった、と思うのは『俺の家の話』があったからだ。私にとってここ数年でベストのドラマだった。能の宗家の息子がプロレスラー、脚本は宮藤官九郎ときたらキワモノ感ぷんぷんですが、出演者がみんなものすごく「それっぽく」て、西田敏行は能の宗家っぽいし、長瀬智也は能の宗家長男でプロレスラーっぽいし、その他のメンツもみんな「オマエがそれをやるしかない!」と言いたいぐらいハマリ役ばかりであった。

 私はクドカンドラマをそれほど夢中になって見たことがないが、これを見て、クドカンが「稀代の人情モノ作家」ということを(今さらながら)知りました。ただの人情モノではなくて「変わり者」や「変わった状況」における人情モノ。

 だからその「変わり方」が自分の趣味に合わないとどうしても見ていられない(『いだてん』がそうだった)。きっと『俺の家の話』もそうだろうと思ったが、旅先のビジネスホテルのテレビで見るつもりもなくちらっと見たら目が離せなくなった。

 なので、このドラマの「変わり方」についていけなくてまったくハマらない人もいるだろうなあと思います。でも長瀬智也は芝居がうまいなあ。芸能界引退するなら、大河の主役をやってからにしてもらいたかったなあ。

すごい時間を届けてもらって感動した

第3位『東京五輪開会式 生中継』(NHK)

 東京五輪の記憶はこれに尽きる、というぐらい衝撃のしょぼさ!

 今やもう五輪の記憶も遠くなり、「今年の漢字」は「金」って、テレビでは「史上最高の金メダル獲得」とか言っていたが、今から思えばあらゆる面で疫病神に取り憑かれていたような五輪ではあった。今の新型コロナウイルスの感染状況を考えると、あの夏という季節になぜあれほど感染者が増大してたのかというのもナゾだった。

 そんな中、開会式関連のゴタゴタで注目させて、じゃあ見てみるか、これほどゴタゴタ報道でハードル下げてるんだから見てみたら案外悪くなかったりして……と思ったら予想を遙かに上回るというか下回るというか、とにかくスカスカでひどい開会式だった。

開会式ではTVクルーをモチーフにしたアトラクションが披露された=2021年7月23日午後10時43分、国立競技場東京五輪の開会式ではTVクルーをモチーフにしたアトラクションも=2021年7月23日、国立競技場

 とにかく、スタジアムの空間を埋め切れていないのがひどかった。私は日本に限らず、五輪の開会式や閉会式における「その国の伝統芸能を見せる」みたいなものが好きじゃないので、この五輪開会式で、木遣りだの歌舞伎だのが出てきたのはウンザリしたが、これだって完璧に計算された演出で繰り出されれば、好きじゃなくても見られるパフォーマンスにはなったと思う。

 それにしても、五輪の開会式なんて、日本が平和的に国威発揚する絶好の機会であり、考え得る最高の頭脳と最大の予算が注ぎ込まれているはずなのに、ちょっとないぐらいのしょぼい開会式になり、それを生中継するNHKが、「いやー、次はなんでしょう」「あ、木遣りですね!」「聖火です!」とか心を殺したように声だけで「今この素晴らしい時間をお届けします!」とやっていたのが、「ほんとにすごい時間を届けてもらってるよ……」と感動した。

小室圭さん、眞子さんの堂々とした姿

第2位『小室圭・眞子夫妻結婚会見 生中継』(NHK、民放各局)

 私は、天皇制というものは身分差別を認めることになるから反対の立場です。だが実際に皇族の人がいて、今いきなり天皇制をやめるといろいろたいへんだろうと思うので、徐々にこの制度が有名無実化していくことを望むものだが、……一連の眞子さん結婚問題を見ていると「日本で天皇制はなくなるまい」と思った。天皇を敬いたいという気持ちと、すべての行動に文句をつけられるようなことをしてはならない、もしへんなことしたら全力で叱ってもいい存在としての「皇族」を、多くの日本人は手放す気はないだろうなと思わせる。

結婚会見をする小室圭さんと眞子さん=2021年10月26日、東京都内のホテル、代表撮影結婚会見をする小室圭さんと眞子さん=2021年10月26日、東京都内のホテル、代表撮影

 小室圭さんと眞子さんの結婚会見は

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