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TRUMPシリーズ最新作に主演!美弥るりかインタビュー(上)

愛について改めて考えさせられる『ヴェラキッカ』の世界

橘涼香 演劇ライター


 永遠の命を持つ「TRUMP」という存在を置くことで、普遍的な「生と死」というテーマを内在させながら、エンターテインメント作品としての洗練を目指してきた作家・末満健一による一大ファンタジーワールド「TRUMPシリーズ」。その独特のここにしかない世界観は、多くの熱狂的なファンを獲得してきたこのシリーズの最新作、ミュージカル『ヴェラキッカ』が、東京建物Brillia HALL(2022年1月15日~23日)と、COOL JAPAN PARK OSAKA WWホール(2022年2月2日~6日)で上演される。

 ヴェラキッカ家の一族を通して、人の想いを奇怪かつ情念深い物語で描き出す「“TRUMP流”ロマンティックコメディ」と銘打たれたこの新作は、末満本人が「『恋愛』ではなく『人間愛』かもしれません。『喜劇』ではなく『奇劇』かもしれません。つまりは、ロマンティックコメディの皮を被った『人間愛奇劇』のようなものになればと色々と企んでおります」と語る通り、一筋縄ではいかない展開を見せるミュージカルで、松下優也、古屋敬多(Lead)、愛加あゆ、大久保祥太郎、斎藤瑠希、西野誠、宮川浩、平野綾など、豪華キャスト陣が集結。単独作品としてはシリーズ最大規模での上演となる新作に大きな期待が集まっている。

 そんな作品でヴェラキッカ家の当主のノラ・ヴェラキッカ役を演じる、元宝塚歌劇団月組の男役スターとして活躍し、退団後もジェンダーに拘らず独自の表現活動を精力的に展開している美弥るりかが、作品への意気込み、舞台に感じる意欲、さらに多様性を認める時代への期待を語ってくれた。

性別を限定せず自由に捉えていいノラ・ヴェラキッカ

美弥るりか=岩田えり 撮影拡大美弥るりか=岩田えり 撮影

──非常に高い人気を誇る「TRUMPシリーズ」の最新作に出演されることを決められた、そのきっかけから教えていただけますか?

 これまでも素敵なシリーズだなと思って拝見していたのですが、まさか自分にオファーをいただけるとは思っていなかったので、お話をいただいたときにはまず驚きがありました。その時点でもちろん出たいという気持ちは大きかったのですが、それ以前に末満健一さんとは是非一度お会いしたい、お話を伺いたいと思いましたので、まずお目にかからせていただいて。そこで末満さんから「TRUMPシリーズ」に寄せる熱い思いを聞かせてもらえたのと同時に、私をご存知で舞台も観てくださっていただけでなく、「この役は美弥さん以外には考えられないんです」と言ってくださって。

──それは大変な重みのある言葉ですね。

 そうなんです。素直に嬉しかったですし、舞台で表現をしている者にとって、こんなに嬉しい言葉はないなと感じたので「是非やらせていただきたい」と思いました。しかもこの役柄は性別を限定したくない、男でもなく、女でもなく、観た方が自由に捉えてもらえればいい、というお話で。それは私自身が活動していく上で、ジェンダーを超えてやっていきたいと表明していることとピッタリ合うと自分でも思えて、是非演じたいという気持ちにつながりました。

美弥るりか=岩田えり 撮影拡大美弥るりか=岩田えり 撮影

──本当に「TRUMP」シリーズのここにしかない世界観と、美弥さんのお名前が重なった時に、膝を打つとはこのことだなと感じましたが、今回の作品『ヴェラキッカ』についての印象はいかがですか?なかなかこのシリーズは事前にお話いただけないことも多いかと思いますが。

 「愛」がテーマだなと感じています。色々な立場や、役柄の関係性からどの登場人物にも様々な「愛」が描かれているので、きっと客席からご覧になっていただいても、きっとどこか共感していただけるのではないかと思っています。私自身も台本を読んだ時に、愛について改めて考えさせられました。ですから皆さんも観終わったあとに、お一人おひとりがそれぞれの愛を感じ、お考えになるのではないかなと思います。

──確かに観る者にある意味委ねてもらえている部分がありますね。必ずしもこう解釈しなくてもいい、自由に捉えていいと言うような。

 その象徴が今回の私の役だなと感じていて、自分からこういう人ですと発信するのではなくて、他の登場人物の視点によって「ノラ」という人が見えてくるのが面白いですね。ありそうでなかった造形かなと思っています。

◆公演情報◆
ミュージカル『ヴェラキッカ』
東京:2022年1月15日(土)~23日(日) 東京建物Brillia HALL
大阪:2022年2月2日(水)~6日(日) COOL JAPAN PARK OSAKA WWホール
公式ホームページ
[スタッフ]
作・演出:末満健一
音楽:和田俊輔
[出演]
美弥るりか、松下優也、古屋敬多(Lead)、平野綾
愛加あゆ、大久保祥太郎、斎藤瑠希、西野誠、宮川浩 ほか


〈美弥るりかプロフィル〉
2003年に宝塚歌劇団に入団。男役として星組に配属後、2012年に月組へ組替えをし、2014年『 THE KINGDOM 』でダブル主演。2017年『 瑠璃色の刻 』、2019年『 アンナ・カレーニナ 』で主演を務め、2019年6月退団。唯一無二の存在感で、男役だけでなく幅広い役柄を好演。宝塚退団後、舞浜アンフィシアターでの「ソロライブ」から活動をスタート。独自の個性を生かし、舞台だけでなくファッション・ビューティーなど様々なフィールドで活動の幅を広げている。
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筆者

橘涼香

橘涼香(たちばな・すずか) 演劇ライター

埼玉県生まれ。音楽大学ピアノ専攻出身でピアノ講師を務めながら、幼い頃からどっぷりハマっていた演劇愛を書き綴ったレビュー投稿が採用されたのをきっかけに演劇ライターに。途中今はなきパレット文庫の新人賞に引っかかり、小説書きに方向転換するも鬱病を発症して頓挫。長いブランクを経て社会復帰できたのは一重に演劇が、ライブの素晴らしさが力をくれた故。今はそんなライブ全般の楽しさ、素晴らしさを一人でも多くの方にお伝えしたい!との想いで公演レビュー、キャストインタビュー等を執筆している。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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