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必見! カール・ドライヤー特集──耐え難いまでの美しさ

藤崎康 映画評論家、文芸評論家、慶応義塾大学、学習院大学講師

両家の確執と和解ののちに……

『奇跡』

 1930年代に時代が設定された『奇跡』は、デンマーク・ユトランド半島の寒村で大農場を営むボーオン一家と、近隣の村の仕立て屋ペーター一家をめぐる確執と和解が、物語の中心である。

 それぞれモーテン(ヘンリック・マルベア)とペーター(アイナー・フェーダーシュピール)を家長とする両家は、宗派の異なるキリスト教を信仰しているため、不仲だった。ゆえに、ボーオンの三男アナス(カイ・クリステンセン)がペーターの娘アンネ(ゲルダ・ニールセン)に恋心を抱いていることを、モーテンとペーターは快く思っていない。そして、ボーオンの長男ミッケル(エーミール・ハス・クリステンセン)には妻インガー(ビアギッテ・フェーダーシュピール)と子供が二人おり、インガーは3人目を妊娠中だ。次男のヨハンネス(ブレーべン・レーアドルフ・リュ)は自らをキリストだと信じているが、周囲の者に彼は、長い間不安定な精神状態にある、正気を失った男と思われていた(“異人”ヨハンネスは人びとが真の信仰を喪失していると嘆くが、本作の原題Ordetは「(本作では)聖書に書かれた神の御言葉(みことば)」を指す)。

 そんなある日、インガーが赤ん坊を死産したのち、容体が悪化し帰らぬ人となる。家族が悲しみに暮れるなか、ヨハンネスは失踪するが、インガーの葬儀の日、彼は不意に姿を現わし、祈りを捧げる。その場には、モーテンと和解したペーター、アナスに寄り添うペーターの娘、アンネの姿もあった。インガーの死を悼んで集うことで、両家の対立は解消されたのだ。そして、深い感銘をもたらすこの和解のシーンののちに、最大のクライマックスが訪れる……。

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筆者

藤崎康

藤崎康(ふじさき・こう) 映画評論家、文芸評論家、慶応義塾大学、学習院大学講師

東京都生まれ。映画評論家、文芸評論家。1983年、慶応義塾大学フランス文学科大学院博士課程修了。著書に『戦争の映画史――恐怖と快楽のフィルム学』(朝日選書)など。現在『クロード・シャブロル論』(仮題)を準備中。熱狂的なスロージョガ―、かつ草テニスプレーヤー。わが人生のべスト3(順不同)は邦画が、山中貞雄『丹下左膳余話 百万両の壺』、江崎実生『逢いたくて逢いたくて』、黒沢清『叫』、洋画がジョン・フォード『長い灰色の線』、クロード・シャブロル『野獣死すべし』、シルベスター・スタローン『ランボー 最後の戦場』(いずれも順不同)

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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