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「マツケンサンバⅡ」が愛されるのには、ワケがある

観劇のよき思い出を持ち帰ってもらうための心意気で出来た曲

ペリー荻野 時代劇研究家

 大みそかの「第72回NHK紅白歌合戦」の特別企画に登場することになり、再び注目が集まる松平健の「マツケンサンバⅡ」。この曲が「紅白」で歌われるのは、レコード大賞「特別賞」を受賞した2004年以来。今年の「紅白」のテーマ、「Colorful~カラフル~」にこれほどぴったりな曲はないと今から楽しみにしている方も多いと思う。

マツケンサンバⅡが「NHK紅白歌合戦」で歌われるのは2004年以来「マツケンサンバⅡ」は今年の「紅白」の目玉?=2004年の「NHK紅白歌合戦」

 キラキラと光り輝く着物に足袋や草履もピッカピカ。よく見れば、ちょんまげのシケ(はらりとほつれた一筋の髪)も光っている! 華やかな衣装と振付、覚えやすい歌詞とノリのいいメロディは、いつ見てもインパクトは抜群。2021年の東京オリンピック・パラリンピック開催前には、開会式・閉会式にこの曲の待望論がSNSを中心に巻き起こり、若い世代にも人気が高いことがよくわかった。

 松屋フーズのCMでは「みんなの!マツベンサンバ」篇で替え歌で踊りながら町の人たちと通りを行進、年末の「第66回有馬記念」開催に先立ちJRA(日本中央競馬会)とコラボしたサイト「マツケンアリマ66」では、有馬記念バージョンの「マツケンサンバⅡ」の動画が話題となっていた。元旦には、CSの時代劇専門チャンネルでサンバをはじめ、「マツケンのAWA踊り」などマツケンと冠のつく7楽曲のMVを集めた番組「新春☆マツケン音楽祭」が放送される。

公演のフィナーレでびっくり仰天、観客も呆然……

「マツケンサンバ」によって松平健さんは“国民的歌手”になった「マツケンサンバ」のシリーズによって松平健さんは“国民的歌手”に

 なぜ、この楽曲がこれほど愛されるのか。それにははっきりした理由がある。

 この楽曲が、「とにかく観客を楽しませるために作られた」からである。

真島茂樹さん「マツケンサンバⅡ」の振り付けをした真島茂樹さん
 聴く人を楽しませるのは当たり前だと思われるかもしれないが、「マツケンサンバⅡ」は、もう一歩、踏み込んだ現場で制作されている。もともと松平健の舞台公演のフィナーレのために作られているのである。

 「サンバⅡ」の前には、「松健音頭」「マツケンマンボ」もあり、観客がどんな曲を求めているか、研究を重ねてきた。振付を担当した真島茂樹は、「誰もが笑顔になれる作品に」とアイデアを出し、腰元ダンサーズも指導。目の前のお客さんに楽しんでもらい、観劇のよき思い出として持ち帰ってもらうため、とことん派手に盛り上げる。その心意気で出来上がった曲なのだ。

 私がこの楽曲と出会ったのは、1995年の公演。第一部では時代劇「暴れん坊将軍」の芝居があり、第二部がショーという構成で、商業演劇では定番のスタイルである。しかし、そのラストで歌われた「サンバⅡ」を見てびっくり仰天。驚いたのは私だけではなく、この曲で締めくくられて緞帳が下りるのを見届けても、呆然としている観客が多かった。

 これは書かねばならぬと、私はその夜のうちに

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