豊竹呂太夫「文楽は高尚な趣味やない」「橋下徹さんの補助金カット発言にはホンマ感謝です(笑)」
ジャズ、ゴスペル……他ジャンルとの交流で進化する不滅の芸能の魅力とは
今井 一 ジャーナリスト・[国民投票/住民投票]情報室事務局長
数百年の歴史をもつ人形浄瑠璃文楽は、「太夫」「三味線」「人形」が一体となった総合芸術であり、日本が世界に誇る伝統芸能だ。歌舞伎に比べると世間の認知度は低いけれども文楽と歌舞伎には深い関りがある。名作として知られる『菅原伝授手習鑑』、『義経千本桜』、『仮名手本忠臣蔵』をはじめ、先に人形浄瑠璃として上演された作品が、後に歌舞伎の演目となった例はいくつもある。
だが、そういうことを分かっている人は少なく、本拠地ともいえる大阪・日本橋の国立文楽劇場での公演に足を運んだことがあるという人も多くはない。
私も、劇場まで徒歩と地下鉄で15分という近場で生まれ暮らしてきたにもかかわらず、初めて文楽を観たのは50歳を過ぎてから。隣近所の人に訊ねても、「一度も劇場に足を運んだことがない」という人がほとんどだ。
大阪府知事、大阪市長となった橋下徹氏や吉村洋文氏もまた、就任前までは「一度も観たことがない」という一人だったわけで、多くの大阪人がこれでは「猫に小判」と言われてもしかたない。
国立文楽劇場が完成・開館した1984年以降の有料観客数の推移をみると、2000年の8万4千(本公演のみ)を底に盛り返し、2019年は10万8千人余りの観客を迎えた。これに、東京の国立劇場での公演を足すと18万4千人となる。とはいえ、去年、一昨年は、他の演劇やコンサート同様、コロナ禍による入場制限により観客数が大幅に落ち込んだ。
そうした厳しい状況の中で、この文楽の魅力をいかに増し、広めていくのか。
2022年新春、常々「文楽は永久に不滅です」と言い切る六代 豊竹呂太夫さんに文楽にまつわるいろいろな話を伺った。