「2人に1人ががんになる時代」とよく言われる。本当なのか。国立がん研究センター(以下がんセンター)のホームページを見ると、次のように記載されている。
●日本人が一生のうちにがんと診断される確率は(2018年データに基づく)
男性65.0%(2人に1人)
女性50.2%(2人に1人)
●日本人ががんで死亡する確率は(2019年のデータに基づく)
男性26.7%(4人に1人)
女性17.8%(6人に1人)

金田信一郎『ドキュメント がん治療選択──崖っぷちから自分に合う医療を探し当てたジャーナリストの闘病記』(ダイヤモンド社)
比喩ではなく、本当に「2人に1人」ががんになる時代であり、男性に関してはほぼ「3人に2人」といえる確率だ。がんが身近な時代だからこそ、
『ドキュメント がん治療選択』(ダイヤモンド社)をぜひ紹介したい。
著者の金田信一郎さんは、日経ビジネスや日経新聞で記者として活躍し、2019年からフリーになったジャーナリスト。転身した直後の翌年、ステージ2~3の食道がんであることが発覚する。
地元のクリニックから紹介されたのは東大病院。しかしそこで提示された治療法やあいまいな説明に疑問を抱き、資料を読み込み、専門家に話を聞く。そして千葉県にあるがんセンター東病院へ転院することを選ぶ。

国立がん研究センター東病院=千葉県柏市
転院先では手術と抗がん剤での治療を提示されるのだが、再び疑問を抱く。手術はダメージの大きな手術であり、術後に思うように仕事ができなくなるのではないか? そこでまた、さまざまな手段で治療法を取材し、手術を行わず、放射線治療を自ら選択。寛解、退院に至るまでが日記形式で綴られている。
本書のサブタイトルは「崖っぷちから自分に合う医療を探し当てたジャーナリストの闘病記」。闘病記であることは確かだが、そのカテゴリーでは収まらない。見えない答えを探して悪戦苦闘する著者の冒険記であり、なにより、私自身ががんに罹患したらどう生きるのか、どう生きたいのかを、自然と突きつけられる本でもある。