勝部元気(かつべ・げんき) コラムニスト・社会起業家
1983年、東京都生まれ。民間企業の経営企画部門や経理財務部門等で部門トップを歴任した後に現職。現代の新しい社会問題を「言語化」することを得意とし、ジェンダー、働き方、少子非婚化、教育、ネット心理等の分野を主に扱う。著書に『恋愛氷河期』(扶桑社)。株式会社リプロエージェント代表取締役、市民団体パリテコミュニティーズ代表理事。所有する資格数は71個。公式サイトはこちら
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
インターネットメディアのコメント欄に集まる誹謗中傷が、近年非常に深刻な問題になっているのは言うまでもありません。誹謗中傷に限らず、差別、デマ、冷笑、誤読による非難、悪意に満ちた感情の発露、議論の前提や事実関係を無視した反知性主義的論破、勝手な決めつけ等、様々な「負のコメント」が記事に大量に付く時代になってしまったのです。
コメント欄に誹謗中傷等を書き込む人は、かつては「荒らし」という言葉で呼ばれていました。ですが、荒れるのが今や常態化しているため、昨今その言葉はほとんど使われなくなったのだろうと感じます。今では「コメント欄が地獄」のようなより強い言葉で表現する人が少なくありません。
2021年5月にはYahoo!ニュースに誹謗中傷のコメントを書いた男性が、名誉毀損の罪で略式起訴されたのにもかかわらず、抑止力は働いていません。今日も様々なメディアに無数の誹謗中傷等のコメントが書かれて、“地獄化”していることでしょう。
2021年11月10日に、沖縄の社会問題を綴った上間陽子氏の『海をあげる』(筑摩書房)が、「Yahoo!ニュース|本屋大賞 2021年ノンフィクション本大賞」を受賞しました。その際、上間氏は受賞スピーチで以下のように語っていました。
この賞が発表されて、明日からYahoo!のコメント欄は荒れるでしょう。……日本中を覆う、匿名性を担保にした悪意の言葉が、どれだけ人を削り、奈落の底に突き落とすのか、ここにいるYahoo!ニュースの関係者、おそらく私がこれまで会うこともなかった偉い方々に考えていただけたら、と思います。私たちが見たかったのは本当にこういう社会なのでしょうか?
コメント欄問題はインターネットメディアが抱える最重要課題の一つであり、上間氏が指摘したように、この問題にどう対応するか、メディアとしての責任が強く問われています。もちろん、コメント欄を設けているここ「論座」も例外ではありません。