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必見! 『弟とアンドロイドと僕』──不気味で異形の分身映画

藤崎康 映画評論家、文芸評論家、慶応義塾大学、学習院大学講師

 阪本順治監督の『弟とアンドロイドと僕』は、自分が存在している実感を得られないことに苦しむロボット工学者、桐生薫(豊川悦司)が主人公だ。その存在感覚の欠落を埋めようとして、薫は自分そっくりのアンドロイド製造に没頭するが、彼を理解不能な「変人」とみなす家族、親類、上司と彼との間で起こる対立や不協和が、一見突拍子もない彼の「奇行」とともに、異様にギクシャクしたタッチで描かれる。このギクシャク感が素晴らしい。

『弟とアンドロイドと僕』 「kino cinéma横浜みなとみらい」他にて全国順次公開 © 2020「弟とアンドロイドと僕」FILM PARTNERS拡大『弟とアンドロイドと僕』 「kino cinéma横浜みなとみらい」他にて全国順次公開中 © 2020「弟とアンドロイドと僕」FILM PARTNERS

 よって、意味不明に思えるシーンがつづく序盤から、ドラマがいわば“鈍い意味”を帯びてスリリングに立ち上がってくる中盤、終盤、そしてラストまで、観客はスクリーンに釘付けになる。ただし全編を通底する、咀嚼(そしゃく)しえない異物のような何かは、終映後も観客の心から消えない。が、それもまた本作が、鈍痛のようなショックをもたらす異形の傑作であるゆえんだ。

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筆者

藤崎康

藤崎康(ふじさき・こう) 映画評論家、文芸評論家、慶応義塾大学、学習院大学講師

東京都生まれ。映画評論家、文芸評論家。1983年、慶応義塾大学フランス文学科大学院博士課程修了。著書に『戦争の映画史――恐怖と快楽のフィルム学』(朝日選書)など。現在『クロード・シャブロル論』(仮題)を準備中。熱狂的なスロージョガ―、かつ草テニスプレーヤー。わが人生のべスト3(順不同)は邦画が、山中貞雄『丹下左膳余話 百万両の壺』、江崎実生『逢いたくて逢いたくて』、黒沢清『叫』、洋画がジョン・フォード『長い灰色の線』、クロード・シャブロル『野獣死すべし』、シルベスター・スタローン『ランボー 最後の戦場』(いずれも順不同)

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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