勝部元気(かつべ・げんき) コラムニスト・社会起業家
1983年、東京都生まれ。民間企業の経営企画部門や経理財務部門等で部門トップを歴任した後に現職。現代の新しい社会問題を「言語化」することを得意とし、ジェンダー、働き方、少子非婚化、教育、ネット心理等の分野を主に扱う。著書に『恋愛氷河期』(扶桑社)。株式会社リプロエージェント代表取締役、市民団体パリテコミュニティーズ代表理事。所有する資格数は71個。公式サイトはこちら
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
誹謗中傷等に負けないカルチャーとリテラシーを育てよう
インターネットメディアのコメント欄に誹謗中傷等が無数に集まって、“地獄化”する問題について、前編の記事『コメント欄で誹謗中傷を書き込む人と相性抜群、ネットメディアの構造的矛盾』では、コメント欄の誹謗中傷等を放置するほうが儲かりやすいというメディアと社会構造上の矛盾点を指摘しました。
コメント欄で誹謗中傷を書き込む人と相性抜群、ネットメディアの構造的矛盾
そのため、個別のメディアで対応するには限界がありますから、本来であれば法律等を用いて国全体で対応しなければなりません。ですが、残念ながらそのような機運が盛り上がるのは、おそらくまだ先のことでしょう。では、当面はこのままの状況が続くことを想定し、個別のメディアは具体的にどのような「施策」を打てばよいのでしょうか。
そこで今回は、私からいくつか具体的な対応策を提示したいと思います。ここ「論座」を例にしますが、基本的な考えはどのサイトにも通じる話です。ただし、「ジャストアイデア」であり、機能的、システム的な制約もおそらくあるでしょうが、それについては考慮しておりません。
書籍を出した筆者が、「Amazonのレビュー欄に感想を記入してほしい!」と読者にお願いすることは少なくありません。熱心なファンを動員して評判を高めようとするマーケティングの手法です。
ですが、近年は誹謗中傷等対策の一環として、「本を読んでいない人による誹謗中傷によってレビューが悪くならないように、『読む』というインプットだけが目的の人もレビューを書いてほしい」という意味合いで呼びかける人も増えてきました。
それと同様、編集部や記事の筆者から、“真っ当な”読者に対して“真っ当な”コメントを記入してもらうよう積極的にメッセージを発信するのはどうでしょうか(※なお、“真っ当な”コメントとは、決して賛同や称賛に限りません。他の記事等と比較したり統計データを参照したりしながら、論理的に反論することも含みます)。たとえば、「この記事を読んで、よかったと感じた点等をレビューとして書いてください」といった文言をコメント記入欄の上部に記載するのもいいかもしれません。
また、論座やYahoo!ニュース等では、コメントに「Good」と「Bad」を付けられます。これに関しても、今まではインプットが目的だった“真っ当な”読者にも積極的に参加してもらうよう促してほしいところです。このように「コメント欄はあくまで読者がつくっていくもの」ということを発信していくわけです。
誹謗中傷をする人々に負けないくらい、“真っ当な”読者が能動的なアクションを起こすカルチャーが育てば、荒らす人々にとっては場が「アウェー」となり、コメントを書き込むハードルが上がるはずです。
なお、SNS等のシェアに関しても同様です。シェアボタンを設置するだけでは、インプットが主目的の人々の多くはなかなかシェアをしてくれません。「よいと思った点についてSNSで積極的にシェアしてほしい」という類のメッセージは継続的に打ち出したほうがよいでしょう。
衝動的に書き込まれる誹謗中傷等の対策として、コメント投稿前に確認画面を新たに追加するメディアが近年増えたように思います。確かに、注意喚起することで、多少の抑止にはなるかもしれません。
その一方で、そのような書き込みをする人々は、自分の書いていることが誹謗中傷等に該当しているという自覚がない場合が少なくありません。自分のコメントはあくまで真っ当な反論だと思い込んでいるのです。
そこで、コメント投稿前の注意喚起文に、何が誹謗中傷等に該当するのかについて具体例を示すのがよいでしょう。さらに、「あなたのコメントはこれらの例に該当しませんか?」というメッセージを出して、「該当しない」のチェックボックスにチェックを入れなければ投稿できないような設計にすると、より抑止効果が生まれるように思います。