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ウォーリー木下インタビュー(上)、『僕はまだ死んでない』原案・演出

生命の境をさまよう男と周囲の人たちで紡がれる人間ドラマ

大原薫 演劇ライター


 舞台『僕はまだ死んでない』が上演される。

 脳幹梗塞を発症し、意識はあるが体が動かず意思疎通が取れない“ロックドインシンドローム”という状態におかれた白井直人。幼馴染の児玉碧、家族、医者ら周囲の人たちの間に交わされる会話はシリアスな状況ながら、身近な存在ながらのユーモアや可笑しみが入り混じる。終わりの瞬間を見つめる主人公と彼を取り巻く人々、それぞれに沸き起こる想いを演劇という体験で今改めてリアルに感じさせる作品になるという。

 本作は2021年、VR演劇(舞台上から360°を収録できるカメラで撮影し配信)として配信された。今回改めて、演劇作品として劇場での有観客上演となる。

 本作の原案・演出を務めるウォーリー木下。東京2020パラリンピック開会式の演出を担当し、国際的に活躍。ノンバーバル、ストレートプレイ、ミュージカル、2.5次元舞台など多岐にわたる作品を手掛ける。ウォーリー木下に話を聞いた。

登場人物が抱えるそれぞれのドラマを掘り下げて

ウォーリー木下=岩田えり 撮影拡大ウォーリー木下=岩田えり 撮影

――『僕はまだ死んでない』は、最初はVR演劇として上演されたのですね。

 コロナ禍になって劇場が休止になり、プロデューサーと「これからどうしていこうか」と話した中で、「VRで配信ができないだろうか」という提案をいただきました。僕はVRで演劇を創ったことがなかったので、360度カメラで撮影した舞台の配信を観て、面白いなと思ったんです。演劇の観客は自分の視点で切り取って舞台を観ていますが、VRでも自分で視点が決められる。映像だけど演劇に近いものができるのではないかと思ったんですね。VRならでは、観客が出演者のような経験ができるものと考えるうちに、ロックドインシンドローム(閉じ込め症候群)の方の視点で描くのはどうだろうと思いつきました。

 ロックドインシンドロームの方は、目線は動かせるけれど体は動かせず、喋ることもできない。観客がロックドインシンドロームの方の視点で、VRで舞台の上に放り込まれるような設定にすることを考えました。そこから話を膨らませていく中で、終末期医療にまつわる議論やコロナ禍で病院に見舞いに行けないことなども取り入れながら、エンターテインメントにまとめ上げられないかなと原案を書いたんです。そして、その原案をもとに広田(淳一)さんに脚本を書いていただきました。

ウォーリー木下=岩田えり 撮影拡大ウォーリー木下=岩田えり 撮影

――今回は舞台版として、有観客で上演されます。

 VR版を演出しながら、命の問題を周囲の人たちがどう考えるかという問題だけではなく、人と会えない時代性が重なって、もっと別の解釈になりうる題材だという感覚はありました。今回は舞台版として上演するということで、終末期医療にまつわることだけでなく、登場人物が抱えるそれぞれのドラマをもう少し深く掘り下げていきたいと思っています。

◆公演情報◆
舞台『僕はまだ死んでない』
2022年2月17日(木)~28日(月) 銀座・博品館劇場
公式ホームページ
公式twitter
[スタッフ]
原案・演出:ウォーリー木下
脚本:広田淳一
[出演]
矢田悠祐、上口耕平、中村静香/松澤一之・彩吹真央


〈ウォーリー木下プロフィル〉
 神戸大学在学中に劇団☆世界一団を結成。現在はsunday(劇団☆世界一団の改称)の代表で、すべての作品の作・演出を担当している。役者の身体性に音楽と映像とを融合させた演出が特徴。ノンバーバルパフォーマンス集団「THE ORIGINAL TEMPO」のプロデュースを行い、エジンバラ演劇祭にて五つ星を獲得するなど、海外からの高い評価も得ている。メディアアートとパフォーミングアーツの融合で注目を集め、従来の“演劇”という概念を超えた新しい挑戦をし続けている。東京2020パラリンピック開会式の演出を担当した。
★公式twitter

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筆者

大原薫

大原薫(おおはら・かおる) 演劇ライター

演劇ライターとして雑誌やWEB、公演パンフレットなどで執筆する。心を震わせる作品との出会いを多くの方と共有できることが、何よりの喜び。ブロードウェー・ミュージカルに惹かれて毎年ニューヨークを訪れ、現地の熱気を日本に伝えている。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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