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アップデートなしで伝統は守れない

「ノーベル文学賞」を変えた女性の声から何を学ぶか

天野千尋 映画監督

かつての名作映画に生じる「違和感」

 伝統や由緒あるもの、“古き良き”とされるものも、やみくもに受け継ぐのではなく、時代感覚と齟齬が出る部分をチューニングしていくべきだと思う。それは過去のものを否定するわけじゃない。時代に合わせて文化は変わっていく。それだけのこと。

 スポーツで言えば、かつては伝統的に女人禁制とされていた文化も徐々に変わりつつある。

 2021年の夏、初めて、女子高校野球の決勝が甲子園で行われた。野球女子が甲子園の土を踏めるのは夢のようだという。ゴルフでも、以前は女性NGだった古くからの会員制コースも、差別的だとの非難から変わってきている。大相撲でも数年前、救助のために土俵に入った女性看護師に行司が「降りなさい」とアナウンスし、大バッシングを受けたのは記憶に新しい。

拡大2021年8月23日、「全国高校女子硬式野球」の決勝が初めて阪神甲子園球場で開催された。【左】優勝した神戸弘陵(兵庫)の先発、日高結衣投手。【右】準優勝の高知中央、氏原まなか主将

 映画の世界でも、過去に“名作”とされた作品でも、現代の価値観に照らし合わせると人権侵害だったり不寛容だったりと捉え方が見直されるものがある。

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筆者

天野千尋

天野千尋(あまの・ちひろ) 映画監督

1982年生まれ。約5年間の会社勤務ののち、2009年に映画制作を開始。ぴあフィルムフェスティバルを始め、多数の映画祭に入選・入賞。主な作品に、WOWOWドラマ『神木隆之介の撮休』監督、土ドラ『僕の大好きな妻!』監督、アニメ『紙兎ロペ』脚本など。長編『ミセス・ノイズィ』が2020年に全国劇場公開。ニューヨーク・ジャパンカッツ観客賞受賞。日本映画批評家大賞脚本賞受賞。自ら執筆した小説版『ミセス・ノイズィ』(実業之日本社文庫)も刊行。 脚本を担当したドラマ『ヒヤマケンタロウの妊娠』がNetflixで配信中。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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