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岡田晴恵『秘闘』で「政治家・尾身茂」の資質を理解した

矢部万紀子 コラムニスト

「布石」を打つのがうまい人

 この文章にある「サイエンス」と「政治(的)」という対語は、この本のキーワードだ。サイエンス軽視の日本のコロナ対策は、政治的な専門家が起用されたから。そう岡田さんはとらえているし、そのような人だから選ばれたこともわかっている。そういう現実との闘いの書だから、自ずと政治家②の解説書となる。

 岡田さんは、彼らのことを「政治家」とは書いていない。ただしGo Toトラベルキャンペーンが始まった20年7月に、こういう記述が出てくる。

 <テレビ局のある記者は「尾身さんも岡部さんも政治家よ」と、再三にわたり語っていた>

 この記者は、「尾身さんが世間には出てるけど、実質的には岡部さんが落としどころを決めながら調整をつけている」から「岡部さんが上」と判定していた。

 が、尾身氏は変わっていく。岡田さんは、彼が総理や大臣と共に会見するようになったのがGo Toトラベルの頃からだと指摘、政策にお墨付きを与える役割を引き受けたように見えると書く。キャンペーンについて尾身氏は「旅行自体に問題はない」と明言、同時に「ウイルスが広がったとしたら、(旅行での)飲食や飲み会や大声での会話が原因」と言った。これを岡田さんは「布石」と表現する。

 事態が想定と違う方向に進んでも逃げ切る。そのために打つのが布石。政治家②はこれがうまいし、これがうまい人を政治家②という。その具体例がいくつも描かれる。

 例えば、岡部氏が20年1月に出した「リスクはインフルエンザや麻疹などと比べても、とても低い」などというコメント。

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筆者

矢部万紀子

矢部万紀子(やべ・まきこ) コラムニスト

1961年生まれ。83年、朝日新聞社に入社。宇都宮支局、学芸部を経て、週刊誌「アエラ」の創刊メンバーに。その後、経済部、「週刊朝日」などで記者をし、「週刊朝日」副編集長、「アエラ」編集長代理、書籍編集部長などをつとめる。「週刊朝日」時代に担当したコラムが松本人志著『遺書』『松本』となり、ミリオンセラーになる。2011年4月、いきいき株式会社(現「株式会社ハルメク」)に入社、同年6月から2017年7月まで、50代からの女性のための月刊生活情報誌「いきいき」(現「ハルメク」)編集長をつとめた後、退社、フリーランスに。著書に『美智子さまという奇跡』(幻冬舎新書)、『朝ドラには働く女子の本音が詰まってる』(ちくま新書)。最新刊に『雅子さまの笑顔――生きづらさを超えて』(幻冬舎新書)

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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