大原薫(おおはら・かおる) 演劇ライター
演劇ライターとして雑誌やWEB、公演パンフレットなどで執筆する。心を震わせる作品との出会いを多くの方と共有できることが、何よりの喜び。ブロードウェー・ミュージカルに惹かれて毎年ニューヨークを訪れ、現地の熱気を日本に伝えている。
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
生死の境をさまよう主人公とその親友の二役を演じる
――脳幹梗塞を発症し、意識はあるが体が動かず意思疎通が取れない直人を演じるのはいかがでしょうか。
直人は目しか動かせない。何かしたくても自分ではできないし、こちら側を見たいと思っても誰かに顔の向きを変えてもらうまではできないんです。今日の稽古で直人を演じただけでも、当たり前のことができないってこんなにもきついものなんだなと感じました。しかもこの状態が一生続くかもしれない絶望は計り知れないなと……。
――直人を演じて感じたことは?
本当に他人事ではないなと思いましたね。身近に直人のような人がいないから触れてこなかっただけで、もしかしたら明日は自分も直人のようになるかもしれないし、自分の身近な人がそうなるかもしれない。簡単な言葉になってしまいますが、今自分の周りに当たり前にあることがどれだけ大切だったか。失ってみないとわからないことがあるんだろうな、と。押し付けるつもりはないけれど、お客様にとっても考える機会になるのではないかなと思います。
――いろいろ考えさせられますね。
家族が直人のような状態になったとして、リアルな問題として家族が毎日病院に通わないといけないとか、入院でお金がかかるとかいうことも台本には書かれているんです。きれいごとだけでは済まなくなるんだろうなというのも感じますね。
ただ、実際に演じてみると、決してそこまで重い話ではないんですよ。テーマとしては重いけれど、コメディタッチのやりとりもありますし。もし自分が入院している人の病室に行ったら、多分明るく振る舞おうとすると思うんです。
――なるほど。
特に直人は耳が聞こえているのがわかっているから、周囲の人たちが重い空気になることは避けると思う。僕も演じていて「あえておちゃらけた空気にして、和ませた方がいいんじゃないかな」と思うし。コメディ的な部分もあって、楽しく観られるところもある方がむしろリアルな気がします。
◆公演情報◆
舞台『僕はまだ死んでない』
2022年2月17日(木)~28日(月) 銀座・博品館劇場
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[スタッフ]
原案・演出:ウォーリー木下
脚本:広田淳一
[出演]
矢田悠祐、上口耕平、中村静香/松澤一之・彩吹真央
〈矢田悠祐プロフィル〉
2012年、俳優デビュー。同年12月に、ミュージカル『テニスの王子様』7代目青学・不二周助役で注目を集める。最近の主な出演作品は、ミュージカル『GREY』、『GLORY DAYS』、『BARNUM』、『EDGES―エッジズ― 』、『アルジャーノンに花束を』、『ハムレット』など。
今後、4/23~舞台『魔法使いの約束』第3章が控えている。
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