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クラブハウスで研ぎ澄まされる「聴く力」と息づかいから伝わる「命の気配」

「医療部屋」の1年を振り返る(上)

野菜さらだ コラムニスト/言語聴覚士

 「音声だけのSNSができたんだって」

 そんな情報が界隈を駆け巡ったのが、今から1年前のことだった。

 知り合いの人に誘われて怖いもの見たさで入ってみた。それが「Clubhouse(クラブハウス)」であった。ちょうど1年前のバレンタインデーのことである。

 同じように新しい者好き(!?)の“国際政治学者”さんがすぐに「論座」で“潜入記”を公開していた(加藤博章「話題のクラブハウスを“国際政治学者”の私が使って見えてきたこと」)。

24時間365日開いている「医療部屋」との出逢い

Anna Markinashutterstock拡大Anna Markina/Shutterstock.com

 次に恐る恐る一人でクラブハウスにアクセスして、初めて入ったのが「医療部屋」というルームだった。以前、言語聴覚士として医療現場で仕事をしていたこともある私は「医療部屋なかったのでつくります」というキャッチコピーに魅かれて、ふらっと立ち寄ったのだ。

 ちょうど外科医のN先生がモデレーター(司会者のような役割)をしている時間であった。患者の立場から、医療者の立場から、様々な立場の人が質問を投げかける。N先生はどの方の話にもしっかり耳を傾けて、医師として言うべきことはしっかり相手に伝えつつ、相手の気持ちはしっかり受け止めていることが「声だけ」なのに、鼓膜からどんどん伝わってきた。

 知らない人の居酒屋トークみたいな会話を蔭で聞くことになるんじゃないかという私のクラブハウスに対するよからぬ懸念は、「医療部屋」で繰り広げられる様々な立場の方がフラットに話すやりとりを聴くうちにだんだん払拭されていった。

 「普段、言えない本音が言える場、しかも普段なかなか会えない人が集える場なんだ」ということを実感した。

 基本、クラブハウスは誰でも入ることができる。逆に言えば、そこでは日常生活ではなかなかあり得ない「意外な出会い」の可能性が秘められている。

 現実社会で出会える人の範囲は、大方仕事関係とか、それまでの友人関係、趣味関係など限られたものだろう。年代も絞られやすい。そういう見えない枠を超えて、本当に文字通り、様々な人が集って「音声だけで」語り合っているのだ。

 その後、いくつかの部屋(ルーム)を訪ねてみた。クラブハウスでは、ルームから「Hallway(廊下)」に出るとショッピングモールのように様々なルームが並んでいるのが見えるので、気になったルームにふらっと入ってはそーっと退室することができる。顔も出さずに済むので気楽にあちこち行くこともできる。それぞれのルームでいろいろなやりとりのスタイルがあることもわかってきた。

 しばらく「クラブハウスショッピング」をした後、最後には「医療部屋」に戻って、話を聴く、そんなスタイルがいつの間にか定着した。

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筆者

野菜さらだ

野菜さらだ(やさいさらだ) コラムニスト/言語聴覚士

本名・三田地真実(星槎大学大学院教育学研究科教授) 教員、言語聴覚士として勤務後、渡米。米国オレゴン大学教育学部博士課程修了(Ph.D.)。専門は応用行動分析学・ファシリテーション論。2016年からオンライン会議システムを使ったワークショップや授業を精力的に行っている。著書に『保護者と先生のための応用行動分析入門ハンドブック』など。教育雑誌連載と連動した 「教職いろはがるた」の動画配信中!

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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