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「カムカムエヴリバディ」の「不穏な未来」と「暗闇」が表す傑作の予感

矢部万紀子 コラムニスト

 2月某日、とあるフルーツパーラーに入った。種類多すぎのパフェメニュー。悩むと気づけば、聞き覚えあるインスツルメントのBGM。サビになった。

 ♪なーみだーの河もー、海へーと帰るー。誰のー心もー、雨のちー、晴れるやー

 よみがえる歌詞。ゆず「雨のち晴レルヤ」、朝ドラ「ごちそうさん」(2013年度後半)の主題歌だった。

 放送初回に「雨のちー、晴れるやー」を聞いて、私の中の渥美清がつぶやいた。「それを言っちゃあ、おしまいよ」。だって、おいちゃん、朝ドラって、そういうもの。最短でまとめるなら、人生、雨も降るけど最後は晴れ。わかって見ているのに、歌われてしまうとなー。という記憶。

 現在放送中の「カムカムエヴリバディ」の主題歌「アルデバラン」(AI)は、全く違う。こう始まる。

 ♪君とわたーしは、仲ー良くなれるかな、この世界が、終わるそのまーえに

 「世界=終わる」という認識に立っている。「きっといつか儚く枯れる花」「不穏な未来に手を叩いて」と続く。「花=枯れる」「未来=不穏」という認識は、「雨のち晴れる」の気楽さとは真逆だ。そういう歌に当初は面食らったが、回を重ねるうち、これこそが「カムカムエヴリバディ」だと思うようになった。

朝ドラ「カムカムエヴリバディ」で3人のヒロインのうちトップバッターを演じた上白石萌音さん=撮影・村上健拡大朝ドラ「カムカムエヴリバディ」で3人のヒロインのうちトップバッターを演じた上白石萌音さん=撮影・村上健

 というわけで「カムカムエヴリバディ」。控えめに言って、かなりの佳作だ。朝ドラらしさを踏まえつつ、今の時代の価値観を提示している。朝ドラの新たな扉が開きつつある、とさえ思っている。

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筆者

矢部万紀子

矢部万紀子(やべ・まきこ) コラムニスト

1961年生まれ。83年、朝日新聞社に入社。宇都宮支局、学芸部を経て、週刊誌「アエラ」の創刊メンバーに。その後、経済部、「週刊朝日」などで記者をし、「週刊朝日」副編集長、「アエラ」編集長代理、書籍編集部長などをつとめる。「週刊朝日」時代に担当したコラムが松本人志著『遺書』『松本』となり、ミリオンセラーになる。2011年4月、いきいき株式会社(現「株式会社ハルメク」)に入社、同年6月から2017年7月まで、50代からの女性のための月刊生活情報誌「いきいき」(現「ハルメク」)編集長をつとめた後、退社、フリーランスに。著書に『美智子さまという奇跡』(幻冬舎新書)、『朝ドラには働く女子の本音が詰まってる』(ちくま新書)。最新刊に『雅子さまの笑顔――生きづらさを超えて』(幻冬舎新書)

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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