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『冬のライオン』に出演!水田航生インタビュー(上)

フランス王の劇中での変化を大切に演じたい

橘涼香 演劇ライター


 1183年イングランド王ヘンリー二世の居城で繰り広げられる、跡目争い、領土紛争、王妃と若き愛妾の確執を描いた歴史劇にして家族劇である『冬のライオン』が、2月26日~3月15日、東京池袋の東京芸術劇場プレイハウスで上演される。

 1966年にブロードウエイで初演された権力と愛情を巡って登場人物たちが権謀術数をめぐらし、化かし合いに継ぐ化かし合いを続ける心休まらぬクリスマスを描いたこの作品は、のちに映画、テレビドラマ、ブロードウエイでリバイバル上演されるなど、長く愛され続けている。

 日本での四回目の上演となる今回は、独自の感性と洞察力で快進撃を続ける気鋭の演出家、森新太郎の新演出のもと、ヘンリー二世に佐々木蔵之介、彼の愛妾アレーに葵わかな、長男リチャードに加藤和樹、次男ジェフリーに永島敬三、末息子ジョンに浅利陽介。そして、ヘンリーと渡り合う妻エレノアに高畑淳子という強力なキャストが集結。高貴な人々が見せる赤裸々な人間模様と、どこかで滑稽で、まるで夫婦漫才のようなおかしみもあるパワーゲームがいま生まれ出ようとしている。

 そんな作品でヘンリーの愛妾アレーの異母兄妹でフランス王のフィリップを演じる水田航生が、膨大な台詞の応酬で綴られる作品や、森演出に感じる魅力を語ってくれた。

結構コメディチックなシーンがある

水田航生=宮川舞子 撮影拡大水田航生=宮川舞子 撮影

──お稽古も佳境と伺っていますが、現在はどのように進んでいるのですか?

 とりあえず、ざっくりと全幕を一周したところで、いま二周目に入ってきて、ひとつひとつ細かく場を作っているところですね。

──そうした稽古も踏まえて、いま改めて作品をどう感じていますか?

 思っていた以上に面白い、笑えるシーンが多いんです。僕が演じるフランス王フィリップは要所、要所にしか出て来ないので、お芝居を客観的に観ている時間もあるのですが、そういう自分が出ていないシーンについては、普通にお客さんのように笑っていたりします(笑)。結構面白いコメディチックなシーンがあるんですよ。

水田航生=宮川舞子 撮影拡大水田航生=宮川舞子 撮影

──それはこの作品を元々ご存知の方や、ポスタービジュアルから作品を想像されている方は、ちょっと驚かれるかもしれないですね。

 そうですね。意外と堅苦しい感じではないんです。もちろん登場するのは実在した人物なので、出てくる固有名詞ですとか、イギリスとフランスの戦いに対する、ちょっとした知識は、あればより楽しめるかもしれないですが、目の前で行われていることは、家族間のいざこざだったり、人と人との駆け引きや騙し合いなど普遍的なものなんです。人間関係という部分に着目していただければ、わりとすんなり観ていただけるんじゃないかなと思っています。

──そうお話いただくと、ぐっと観劇に対する構えがなくなって嬉しいですが、そのなかで演じるお役柄、フランス王フィリップについては、何を大切に演じたいと思っていますか?

 フランス国王の役なので、まず王であることの説得力と、イングランド国王ヘンリーの家族とは全く別なところからやってくる人間ですから、異質な感じであったり、ちょっと特別な感覚というものを、どうやって出していこうかなと練っている段階ですが、大事にしたいと思っています。演出の森(新太郎)さんからも「最初の方は何を考えているのか分からない、無機質な感じで演じて欲しい。例えて言うならバーチャルアシスタントのSiriのような」と。

水田航生=宮川舞子 撮影拡大水田航生=宮川舞子 撮影

──そこまでですか?

 あ、でも稽古を重ねているうちに、そういうSiriっぽい機械的なところにプラスアルファして、やっぱ り人間としての感情が出てしまうことだったり、言葉の抑揚だったり、そういう揺らぎのようなところも明確に出していきたいと思っています。

──最初に敢えて人間的なところを見せないで、物語が進むにつれて徐々にそれが出てくることの効果を、ということでしょうか?

 そうですね。もちろん最初に無機質でいるところでも、腹の中ではマグマのように煮えたぎっているものがある男なので、それがヘンリーとの会話だったり、ヘンリーの居城であるシノン城に来た時に徐々にこぼれ出て見えて、フィリップの人間性を感じてもらえるように作っていきたいです。

◆公演情報◆
『冬のライオン』
2022年2月26日(土)~3月15日(火) 東京芸術劇場 プレイハウス
公式ホームページ
[スタッフ]
作:ジェームズ・ゴールドマン
翻訳:小田島雄志
演出:森 新太郎
[出演]
佐々木蔵之介/葵 わかな、加藤和樹、水田航生、永島敬三、浅利陽介/高畑淳子


〈水田航生プロフィル〉
2005年、約5000人の応募者の中から第1回アミューズ王子様オーディションのグランプリを受賞。ミュージカル『テニスの王子様』をはじめ、舞台、ミュージカルを中心に活躍。近年の主な出演作は、『ザ・パンデモニアム・ロック・ショー~The Pandemonium Rock Show~』、『The Last 5 Years』、『GHOST』、『東京原子核クラブ』、『Count Down My Life』。2022年5~6月にミュージカル『四月は君の嘘』に出演が決まっている。
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筆者

橘涼香

橘涼香(たちばな・すずか) 演劇ライター

埼玉県生まれ。音楽大学ピアノ専攻出身でピアノ講師を務めながら、幼い頃からどっぷりハマっていた演劇愛を書き綴ったレビュー投稿が採用されたのをきっかけに演劇ライターに。途中今はなきパレット文庫の新人賞に引っかかり、小説書きに方向転換するも鬱病を発症して頓挫。長いブランクを経て社会復帰できたのは一重に演劇が、ライブの素晴らしさが力をくれた故。今はそんなライブ全般の楽しさ、素晴らしさを一人でも多くの方にお伝えしたい!との想いで公演レビュー、キャストインタビュー等を執筆している。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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