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舞台『冬のライオン』、演出・森新太郎×出演・加藤和樹インタビュー(下)

歴史劇ではなくコメディ、気軽に来て笑ってほしい

橘涼香 演劇ライター


森新太郎×加藤和樹インタビュー(上)

パズルのピースがハマっていく感覚がある

──キャストの皆さんについてはいかがですか?

:今回は7人の濃密な会話劇なので、舞台俳優を揃えるということにはこだわりました。なにかと制約の多い舞台セットなんですが、みんながみんな、全体のフォーメーションのことを考えて演技できるので、演出家としては前へ進みやすい。一人でも自分のことしか考えていない俳優がいると、こうスムーズにはいきません。物語や相手役に奉仕できる俳優たちとの共同作業は、やっていて本当に楽しいです。

森新太郎(左)と加藤和樹=岩田えり 撮影拡大森新太郎(左)と加藤和樹=岩田えり 撮影

──加藤さんは共演者の皆さんとお稽古されてどうですか?

加藤:素晴らしい方々ばかりなので、自分が足を引っ張らないようにしないといけない、という気持ちは正直あります。いま森さんがおっしゃったように、自分のことしか考えられていない時って、自分でも気づくんです。いまの芝居では相手がすごく台詞を言いづらいだろうなとか、動けないだろうなと感じる。その時にスッと森さんがひと言、言ってくださるんです。それは自分が相手の芝居に対して、ちょっと動けないと思った時もしかりで。それは先ほどのお話にあった、目線ですとか、本当に細かいことなんですが、それが解消するだけで本当にやりやすく、相手の芝居を受けやすくなるのでとても心地良いです。パズルのピースがバチッバチッとはまっていく感覚がありますし、それはおそらく森さんが思い描いている絵を我々も共有できているからで。その感覚をだんだんに感じられるようになってきていますね。

森新太郎(左)と加藤和樹=岩田えり 撮影拡大森新太郎(左)と加藤和樹=岩田えり 撮影

──お話を伺っていると、お芝居が形になっていく様子を想像してワクワクしてきますが、今日はせっかくお二人にお揃いいただいたので、森さんが「俳優・加藤和樹」に感じている魅力、加藤さんが「演出家・森新太郎」に感じている魅力を、それぞれ教えていただきたいのですが。

:加藤くんはとにかくエネルギーがありますね、筋肉のことじゃないですよ(笑)、内面から溢れ出る量が凄まじい。けど、その出し方にこだわっていないな、と感じる時もたまにあって。それいま一気に出さないでもうちょっと絞って絞って小出しにするとか、もしくは出したいんだけど出せない瞬間があるとか、そういう風に使っていけると、もっと表現の幅が広がると思います。ただ、エネルギーのない俳優にエネルギーを出せと言っても無理なわけで、その点、加藤くんは可能性の宝庫ですよね。ありあまるエネルギーを丁寧に使いこなしたらいいだけなので。

加藤:森さんのおっしゃることは的確なんですよね。違うと思ったらすぐ「違う」という判断をしてくださいますし、さっき言ったことにつながるのですが、思い描いている絵を共有してくださいます。ここを見据えているからいまこの過程を進んでいる、ということをちゃんと頭と身体で理解してからやっていける、この空間の演出というのが僕には心地良いです。それはお人柄であり演出力でもあると思うんですが、森さんってこういう言い方をすると失礼かもしれませんが、普段感情が読めないんです。

:(笑)

加藤:でも芝居を観て笑う時には本当に素直に笑われるので、あぁ今この芝居が面白いんだなっていうのがわかります。もちろん森さんを笑わせるために芝居をしている訳ではないですが(笑)、やはりそういう反応は我々にとってモチベーションになっていて、森さんが笑っていると現場も明るくなるし、我々も嬉しくなるので、素直に笑ってくださる演出家さんはありがたいです。

◆公演情報◆
『冬のライオン』
2022年2月26日(土)~3月15日(火) 東京芸術劇場 プレイハウス
公式ホームページ
[スタッフ]
作:ジェームズ・ゴールドマン
翻訳:小田島雄志
演出:森 新太郎
[出演]
佐々木蔵之介/葵 わかな、加藤和樹、水田航生、永島敬三、浅利陽介/高畑淳子


〈森新太郎プロフィル〉
2002年に演劇集団円に入り、2006年に『ロンサム・ウェスト』で演出デビュー。古典から現代劇まで幅広く手掛ける。またミュージカルにも挑戦し、ジャンルにとらわれない活動を行う。自身が主宰するモナカ興業でも活動中。2013年に文化庁新進芸術家海外研修制度でアイルランドへ、2018 年にシンガポールへ留学。第50回毎日芸術賞演劇部門第11回千田是也賞、平成21年度(第64回)文化庁芸術祭優秀賞、第21回読売演劇大賞グランプリ及び最優秀演出家賞、平成25年度(第64回)芸術選奨 演劇部門 文部科学大臣新人賞、WOWOW presents 勝手に演劇大賞2017年 演出家賞受賞。


〈加藤和樹プロフィル〉
2005年ミュージカル『テニスの王子様』で脚光を浴びる。翌年Mini Album「Rough Diamond」でCDデビュー。2009年には韓国、台湾、中国でCDデビューを果たし、音楽活動と並行し、舞台・ミュージカル・映像作品にも多数出演。俳優・声優としても活躍の場を広げている。近年の主な出演作品は、『フィスト・オブ・ノーススター~北斗の拳~』、『マタ・ハリ』、『BARNUM』、『ローマの休日』、『フランケンシュタイン』、『ファントム』、『怪人と探偵』、『BACKBEAT』、『暗くなるまで待って』など。第46回菊田一夫演劇賞 演劇賞を受賞。5月~ミュージカル『るろうに剣心』への出演が決まっている。
★オフィシャルサイト
★公式twitter

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筆者

橘涼香

橘涼香(たちばな・すずか) 演劇ライター

埼玉県生まれ。音楽大学ピアノ専攻出身でピアノ講師を務めながら、幼い頃からどっぷりハマっていた演劇愛を書き綴ったレビュー投稿が採用されたのをきっかけに演劇ライターに。途中今はなきパレット文庫の新人賞に引っかかり、小説書きに方向転換するも鬱病を発症して頓挫。長いブランクを経て社会復帰できたのは一重に演劇が、ライブの素晴らしさが力をくれた故。今はそんなライブ全般の楽しさ、素晴らしさを一人でも多くの方にお伝えしたい!との想いで公演レビュー、キャストインタビュー等を執筆している。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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