大原薫(おおはら・かおる) 演劇ライター
演劇ライターとして雑誌やWEB、公演パンフレットなどで執筆する。心を震わせる作品との出会いを多くの方と共有できることが、何よりの喜び。ブロードウェー・ミュージカルに惹かれて毎年ニューヨークを訪れ、現地の熱気を日本に伝えている。
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
松本幸四郎「歌舞伎とブルーマンは傾(かぶ)く精神で共通する」
ブルーマングループのワールドツアーが日本を皮切りに再開される。
ブルーマングループはアート・音楽・コメディ・テクノロジーが融合した唯一無二のアート・パフォーマンス・エンターテインメント。「ブルーマン」の名の通り、3人の青いパフォーマーが観客を巻き込みながら予測不能なパフォーマンスを繰り広げる。観客に容赦なく刺激と驚き、感激を与える前代未聞のエンターテインメントは世界20か国以上で上演され5000万人以上を動員した。
世界最新バージョンのワールドツアー『ブルーマングループワールドツアーIN JAPAN』上演に先駆けて制作発表記者会見が行われ、“歌舞伎界のブルーマン”として公認された歌舞伎俳優・松本幸四郎が登壇した。
2011年に初めてブルーマンを観劇した松本幸四郎。「11年前ですがついこの間のように感じるほど、衝撃が大きかった。興奮も大きかったし、素直に楽しいという思う瞬間でした。子供のときに抱いた“やってはいけないけど、こんなことをやってみたい”という思いを思い出させてくれるような懐かしさもあって、楽しかったですね」とそのときの感動を振り返る。「エンターテインメント界に身を置く人間として、自分もブルーマンになりたいと思った」と語る幸四郎とブルーマンとの対話がこの記者会見で実現した。
ミュージックディレクターのバイロン・エステップ、ザ・ミュージシャンのマッケンナ・トルファ、ブルーマンパフォーマーのパトリック・ニュートンが海外中継で登場。まず、ブルーマングループのワールドツアー再開の地として日本が選ばれたことについて、ミュージックディレクターのバイロンは「日本はブルーマンの歴史の中でも大きな位置を占めている。日本で初めて公演したのは2007年。六本木で6年間の長期公演をさせていただいて、日本の多くのファンの皆様、友人を作ることができた。日本のアーティストである歌舞伎と鼓童ともコラボレーションができました。さらに、2019年の日本ツアー公演では70000人を動員した。2022年に再び日本に戻ってこられるのを楽しみにしています」と力強く語った。なお、日本のあと、韓国、インド、中近東、ヨーロッパをツアーする予定とのこと。
また、このワールドツアーから新たなキャラクター“ザ・ミュージシャン”が登場することが発表された。マッケンナは「ワールドツアーだけに登場する新キャラクターが誕生します。私がそのキャラクター“ザ・ミュージシャン”で、バンドを新たな形で体現するマルチ奏者の役割を果たします。はじめはブルーマンの上部に位置しますが、ショーが進むにつれてブルーマンや観客ともインタラクティブにやり取りをする。ショーの一部としてアクションをするこの役割を担うことができて嬉しい」と興奮を口にする。
この会見に先駆けて歌舞伎の映像を観たというパフォーマーのパトリックは「本当に感銘を受けた。ブルーマンとして親しみを感じる芸術だなと思う。日本でたくさん歌舞伎に触れたいと思います」と語る。幸四郎が「歌舞伎はどれだけ人を驚かせるか、喜ばせられるかというところからスタートしている芸術。観ている方々が感動することを目指す、生きた演劇パフォーマンスだと思う。ブルーマンと歌舞伎は“傾(かぶ)く”という精神で共通する。言ってみればパンク=“信念のあるワル”という精神が根本にある歌舞伎とブルーマンは近い存在だと感じています」とエールを送る。
幸四郎からブルーマンへの質問は「自分も日本のいろいろなところで芝居をするが、各地の匂いや空気、お客様の反応は変わってくる。ブルーマンはどこでも同じことをやっているのか、それとも場所によって変わるのか?」というもの。パトリックは「全体的なストーリーは一緒だが、お客様とのやり取りを踏まえて変わってくる。場所によっても変わるし、日によっても変化する。それがブルーマンの美しく素晴らしいところで、毎回違うパーソナルな経験となる。毎回活き活きと新鮮なショーが上演できるし、お客様が何度も足を運んでくださる理由だと思う」と答えると、幸四郎は「僕が観に行くときは僕だけのブルーマンなんですね。だから、何度も何度も見に行きたくなる」と感心する。
幸四郎が「ブルーマンのステージは言葉がないけれど、とても人間的な表現になっている。ブルーマンを演じるのはどういう気持ちか」と尋ねると、パトリックは「素晴らしい質問をありがとうございます。ブルーマンには歴史があり、キャラクターの様々なパーツなどが揃っているので、それを基本に作り上げていく。でも、実際舞台に上るとそんなことは考えず、キャラクターそのままブルーマンになります。言語の壁があったとしても、私たちの伝えたいストーリーが明確に伝わるから、非言語的なコミュニケーションがブルーマンのカギとなっていると思う」と答えた。幸四郎は「このお答えを手掛かりに、ブルーマンになる手段を見つけられそうです」と笑顔を見せた。
最後にサプライズで「歌舞伎界のブルーマン認定証」を授与された幸四郎。歌舞伎ファンへのメッセージを聞かれて「歌舞伎は日本が400年以上前に作った文化の中から生まれたエンターテインメント。歴史の中で伝統芸能として存在しているが、自分は歌舞伎役者として今のお客様に感動していただくことを目指して演じている。ブルーマンもブランドを確立しているが、その日その日に新たに誕生し進化するエンターテインメントであるというところは歌舞伎と共通する。同じ精神を持ったブルーマンを歌舞伎のファンの方たちにも観ていただきたいと思う」と熱く語った。
◆公演情報◆
『ブルーマングループワールドツアーIN JAPAN』
仙台:2022年4月2日(土)~3日(日) 仙台サンプラザホール
東京:2022年4月6日(水)~5月8日(日) EXシアター六本木
名古屋:2022年5月11日(水)~15日(日) 愛知県芸術劇場大ホール
大阪:2022年5月18日(水)~22日(日) オリックス劇場
福岡:2022年5月27日(金)~5月29日(日) 福岡サンパレス
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