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濱田めぐみインタビュー(上)、ミュージカル『メリー・ポピンズ』出演

疲れた心を癒していただきたい

大原薫 演劇ライター


 ミュージカル『メリー・ポピンズ』が再演される。原作はパメラ・トラバースの「メリー・ポピンズ」(1934年)、ディズニー映画(1964年)としても有名で、アカデミー賞5部門を受賞した。1910年代ロンドン、いっこうに子守がいつかないバンクス家にメリー・ポピンズが舞い降りることから始まるストーリー。たくさんの魔法が仕掛けられた舞台セットや「チム・チム・チェリー」「スーパーカリフラジリスティックエクスピアリドーシャス」などの名曲、圧巻のダンスシーンで観客を魅了する。

 2018年の日本初演に続いてメリー・ポピンズ役を演じる濱田めぐみ。圧倒的な歌唱力で日本のミュージカルシーンを牽引する濱田に、メリー・ポピンズ役と自身との共通点や作品で届けたいメッセージなどを聞いた。

『メリー・ポピンズ』の世界観が自分にとてもフィットします

濱田めぐみ=岩田えり 撮影拡大濱田めぐみ=岩田えり 撮影

――『メリー・ポピンズ』再演が決まったときは、どう感じましたか?

 嬉しかったですね。『メリー・ポピンズ』の世界観が大好きだし、「もう一度バンクス家に戻れる、また空も飛べる」と思ってとても楽しみでした。

――メリー・ポピンズはどんなキャラクターだと思いますか。

 メリーは言葉を話すときに、相手が何を言うかもすべてわかった上で、事を起こすために喋る。だから、普通のコミュニケーションではないんです。すべてを見越したうえで行動する人で、とてもクレバー。バンクス家の子供、マイケルとジェーンはメリーに魅了されて懐いていますが、メリーと子供たちの会話はキャッチボールというよりも導いているという感覚なんです。メリーは普通の人よりもずっと先を見ているんですね。もし現実世界にメリーのような人がいたら怖いかもしれない。「何を考えているのかわからない」って。でも、後々はメリーの言ったとおりになっていくんですよね。

――そう思うととても不思議な存在ですね。

 不思議ですね。

――濱田さんはメリー・ポピンズと共通する部分がある?

 メリーが人を見るときの距離感や人に接するときの感覚が似ているなと思ったんです。演出を受けて「私もメリーと同じように行動するな」と思いました。それに、初演で演じて『メリー・ポピンズ』という世界観が自分にとてもフィットしたんです。作品ごとに醸し出す独特のテイストがありますが、『メリー・ポピンズ』の世界が自分に合っていると感じました。

 自分とかけ離れている役だと、役に入るときに自分で自分を納得させて、飛躍しないといけない。メリーに関してはすんなりそのまま舞台上に出られるというか。もちろん真実に近づいていく作業は必要ですし緊張はしますが、舞台の世界と自分のリアルなプライベートな世界をスムーズに行き来できたなあと思って。心理的に無理が掛からなかったんです。

濱田めぐみ=岩田えり 撮影拡大濱田めぐみ=岩田えり 撮影

――そうだったんですね。

 舞台の世界は日常とはまったく違うんです。違った次元に飛び込んでいくのは本当に大変。そこからチャンネルを変えて、普段自分がいる世界に降りてくるのは難しいのですが、『メリー・ポピンズ』はギアを変えずに移行していけるなという印象でした。

――それはどうしてでしょうか?

 この作品では魔法を使うところもありますが、魔法はメリーにとっては普通のことで、あくまで一つの手段に過ぎない。でも、舞台上で描かれている人と人との関係性にはファンタジーはないですよね。バンクス家の父親と母親の関係や親子の関係に割り入っていくメリーの価値観にとても実がある。そういうところが、自分にフィットしたのかな。

 私はプライベートの方がフワッと生きているけれど、舞台上ではフワッとしていられないので。舞台では意識を持ったまま動かないといけないんです。逆に普段の方がざっくり直感で生きている感じがしますね。

――濱田さんにとっては普段の生活より、舞台上の方がリアリティがあるのですか。

 ありますね。確実に。

◆公演情報◆
ミュージカル『メリー・ポピンズ』
【東京】東急シアターオーブ
プレビュー公演:2022年3月24日(木)~3月30日(水)
本公演:2022年3月31日(木)~5月8日(日)
【大阪】梅田芸術劇場メインホール
2022年5月20日(金)~6月6日(月)
公式ホームページ
[スタッフ]
原作:P.L.トラバース
オリジナル・プロデューサー&共同創作者:サー・キャメロン・マッキントッシュ
脚本:ジュリアン・フェロウズ
翻訳:常田景子
訳詞:高橋亜子
演出:リチャード・エア
共同演出・振付:サー・マシュー・ボーン
共同振付:スティーブン・ミア
[出演]
濱田めぐみ/笹本玲奈(Wキャスト)、大貫勇輔/小野田龍之介(Wキャスト)、駒田一/山路和弘(W キャスト)、木村花代/知念里奈(W キャスト)、島田歌穂/鈴木ほのか(W キャスト)、コング桑田/ブラザートム(W キャスト)、浦嶋りんこ/久保田磨希(W キャスト)、内藤大希/石川新太(W キャスト) ほか


〈濱田めぐみプロフィル〉
1995年劇団四季オーディションに合格。1996年『美女と野獣』ヒロイン・ベル役に大抜擢され劇団四季デビュー。その後、劇団四季の初演『ライオンキング』初演、『アイーダ』初演、『ウィキッド』の三作品でヒロインを演じ、看板女優として15年間活躍し、2010年に退団。その後、伸びのある歌唱力と定評のある演技力でミュージカルを中心に活躍を続けている。最近の主な出演作は、『オリバー!』、『アリージャンス』、『イリュージョニスト』、『シャボン玉とんだ宇宙(ソラ)までとんだ』、『レ・ミゼラブル』など。
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筆者

大原薫

大原薫(おおはら・かおる) 演劇ライター

演劇ライターとして雑誌やWEB、公演パンフレットなどで執筆する。心を震わせる作品との出会いを多くの方と共有できることが、何よりの喜び。ブロードウェー・ミュージカルに惹かれて毎年ニューヨークを訪れ、現地の熱気を日本に伝えている。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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