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古川日出男が考える、11度目の「3・11」と福島

どうして「怒」と「涙」だけ? 東京で暮らす「当事者」の私

古川日出男 小説家

「ふくしまを書く」二人、笑いながら話す

 11度めの3月11日が訪れる6日前に、小説家である私は詩人の和合亮一さんと、福島県の会津地方にある県立博物館で対談をしていた。

 このイベントは直前に無観客になることが決まって、参加は「オンラインのみで可能」となってしまったのだけれど、そのことは結局さいわいして、国内のみならず国外からもリアルタイムで見てもらえた(フランスや中国から視聴してくれる方がいた)。

拡大福島県立博物館で対談する和合亮一さん(左)と筆者=2022年3月5日

 イベントは「ふくしまを書く」と題された。和合さんにせよ私にせよ、東日本大震災がらみの作品(なかでも初期のもの)は、ある種の〈壮絶〉な言葉に満ちている。だから、そんな二人が「ふくしまを書く」ことを語るのだから、これはもう、さぞ〈シリアス〉な姿勢を徹底するのだろう、と予想されていたに違いない。

 私たちは二人とも福島生まれで、震災前にも対談をしていて、当然ながら震災後も、幾度か顔を合わせて、いろいろ話をしている。そんな私たちは、イベント開始直後から、思いっきり本気で語り合って、ボルテージを上げて、そして、(ここが肝要なのだが)そうであるからこそ始終笑い声を発して、ほとんど漫才コンビのような感触もあった。

 私は、壇上にありながら、そのように自分で感じていた。あれほど真剣に〈爆笑〉してしまうライブのステージは、あまり経験したことがない。和合さんはボケるし、私もついつい突っ込んでしまう。そんなことが可能だったのは、私たちが福島の「自然体」というものを出せたからなんだろうな、と顧みて思う。東日本大震災の〈風化〉に抗うために深い話をすることと、それを(憤りなどの感情とは無縁の形で)笑いながらすることは、当然ながら両立する。

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筆者

古川日出男

古川日出男(ふるかわ・ひでお) 小説家

1966年生まれ。1998年、長篇小説『13』でデビュー。『アラビアの夜の種族』(2001年)で日本推理作家協会賞と日本SF大賞を受賞。『LOVE』(05年)で三島由紀夫賞、『女たち三百人の裏切りの書』(15年)で野間文芸新人賞、読売文学賞。他に『サウンドトラック』(03年)、『ベルカ、吠えないのか?』(05年)、『聖家族』(08年)、『南無ロックンロール二十一部経』(13年)など。11年、東日本大震災と原発事故を踏まえた『馬たちよ、それでも光は無垢で』を発表、21年には被災地360キロを歩いたルポ『ゼロエフ』を刊行した。『平家物語』現代語全訳(16年)。「群像」で小説『の、すべて』連載中。「新潮」(2022年4月号)に戯曲『あたしのインサイドのすさまじき』を発表した。新刊『曼陀羅華X』(新潮社、3月15日刊行)。音楽、演劇など他分野とのコラボレーションも多い。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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