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復帰50年目の朝ドラ

 4月11日、NHKの連続テレビ小説『ちむどんどん』がスタートする。沖縄方言で「ちむ」は「肝=心」、「どんどん」は「どきどき」で、心が躍る様子を表している。

 最初の舞台は沖縄県北部、山原(やんばる)の農村。物語は米軍統治下の1960年代から始まる。黒島結菜(くろしまゆいな)演じるヒロインの比嘉暢子(ひがのぶこ)は、4人きょうだいの次女。父を失った一家で料理を担当している。家族で一度食べた西洋料理に心を奪われ、高校を卒業するとシェフを目指して東京へ向かう。それは折しも1972年、復帰の年のことだった……。

022年春から始まるNHK朝の連続テレビ小説「ちむどんどん」に出演する(左から)上白石萌歌さん、竜星涼さん、黒島結菜さん、川口春奈さん=2021年12月11日、沖縄県うるま市拡大春から始まるNHK朝の連続テレビ小説「ちむどんどん」に出演する(左から)上白石萌歌さん、竜星涼さん、黒島結菜さん、川口春奈さん=2021年12月11日、沖縄県うるま市

 復帰50周年の「朝ドラ」が選んだテーマは「食」。舞台は沖縄から本土へ移る。

 暢子は東京のイタリアンレストランの厨房に職を得て技術を学ぶ一方、横浜市鶴見(戦前から沖縄移住者の多い街)の下宿では、階下の沖縄料理屋で故郷の味を再発見する。

 彼女が出会うのは、東京人のみならず沖縄出身者や沖縄2世の個性豊かな人々だ。さまざまな出来事に揉まれる中で、暢子は東京で沖縄料理の店を開きたいと思うようになる……。

 いずれ放送を見た上で感想を述べたいが、この段階で楽しみなこと気になることを少々。

 楽しみの一つは、(私も少し馴染みのある)沖縄タウン鶴見の描かれ方だ。『だからよ~鶴見』(監督・脚本:渡辺熱、2020)も観た。今度は1970年代の鶴見の街の風景が見たい。

 気になる一つは、「朝ドラ」の基本要素である主人公の帰郷の仕方。東京で店を開くつもりの暢子が一転、「やっぱり沖縄で」と言い出すのだろうか。出発→試練→成功→帰還(帰郷)は英雄物語の王道パターンであり、「朝ドラ」ではヒロインの転機に重なることも多い。定石を踏まえつつ、意外な展開もほしいところである。

 黒島が演じる明るく凛とした女性像と、かつて『パッチギ!』や『フラガール』を書いた羽原大介の脚本が今から楽しみだ。

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筆者

菊地史彦

菊地史彦(きくち・ふみひこ) ケイズワーク代表取締役、東京経済大学大学院(コミュニケーション研究科)講師

1952年、東京生まれ。76年、慶應義塾大学文学部卒業。同年、筑摩書房入社。89年、同社を退社。編集工学研究所などを経て、99年、ケイズワークを設立。企業の組織・コミュニケーション課題などのコンサルティングを行なうとともに、戦後史を中心に、<社会意識>の変容を考察している。現在、株式会社ケイズワーク代表取締役、東京経済大学大学院(コミュニケーション研究科)講師、国際大学グローバル・コミュニケーションセンター客員研究員。著書に『「若者」の時代』(トランスビュー、2015)、『「幸せ」の戦後史』(トランスビュー、2013)など。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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