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【公演評】花組『TOP HAT』

花組のフレッド・アステア柚香光の華麗なタップが降り注ぐ至極のラブストーリー

さかせがわ猫丸 フリーライター


 宝塚花組公演ミュージカル『TOP HAT』が、3月21日に梅田芸術劇場で初日を迎えました。

 フレッド・アステアとジンジャー・ロジャースの代表作『TOP HAT』は、ハリウッド黄金期映画を舞台化したミュージカルで、2011年の初演以降ロンドンで600回以上上演され、ローレンス・オリヴィエ賞を3部門獲得するなど、世界中を魅了してきました。宝塚では2015年、宙組・朝夏まなとさん主演により日本初上演を飾り、大好評を博しています。

 主演のトップスター柚香光さんにとってフレッド・アステアは尊敬してやまない人物で、雷に打たれたように衝撃を受けた『TOP HAT』は、繰り返し見た思い入れ深い作品なのだそう。そんな柚香さんがこの名作の再演に、相手役の星風まどかさん、専科の輝月ゆうまさんとともに、花組生37名を率いて挑みます。

 小粋な会話と名曲の数々、そしてお洒落なタップダンスシーン満載のラブストーリーは、客席をあたたかく包み込み、笑顔の花が満開に咲き誇りました。(以後、ネタバレあります)

柚香の華麗なタップが光る

 ミラーボールとドラムロールの響きに胸が高鳴り、幕が上がるとそこはきらびやかなブロードウェイのステージ。大人気のショースター、ジェリー・トラバース(柚香)は、今日も華やかな舞台で大喝采を浴びていました。

 シャープなダンスが魅力の柚香さんがいきなり本領発揮です。冒頭から柚香さんをセンターに、花組生たちの一糸乱れぬタップダンスは圧巻で、客席の興奮も一気に高まります。

――ジェリーは友人の英国人プロデューサー、ホレス・ハードウィック(水美舞斗)の新作レビューに出演するため、ロンドンにやってきた。ホレスの妻マッジ(音くり寿)が女性を紹介したいらしいと言うが、ジェリーは常に自由きままで、ついに真夜中にも関わらず、ホテルの部屋でタップを踊り出す。そのうるささに真下の部屋の客デイル・トレモント(星風)は激怒。苦情にやってきた彼女に思わず一目ぼれしたジェリーは、翌朝、お詫びに乗馬クラブへの送迎を提案するが、拒否されてしまう。それでもめげず運転手に扮してついていき、ますます彼女をあきれさせた。そんな中、突然の雷雨が2人を襲い……。

 踊ることが大好きなジェリーは、真夜中でもところかまわずステップを踏んでしまいます。メイドやポーターまで巻き込んだり、帽子掛けと一緒に踊ったりと、その演出がどれも洒落ているのが憎い。ダンサー柚香さんは、相手がだれであろうが、ポーズが常にピタリと決まります。軽やかな身のこなしに心地いいタップの響き、スラリと伸びた手足の長さが、華麗なダンスの美しさをより一層引き立てていました。

 『TOP HAT』は、シルクハットに燕尾服で、ステッキを片手にタップダンスを踊るシーンが目白押しという、まさに宝塚男役の原点のような作品です。大きな舞台で一人スポットを浴び、時には仲間のみんなを率いて華麗に靴音を響かせ、お客様を魅了する柚香さんからは、フレッド・アステアに懸ける熱い想いまでもが伝わってくるようでした。

頼りないけど憎めない水美

 水美さんが演じるホレスはヒゲの紳士。プロデューサーなので偉い人らしく、髪もビシッと整え、常にタキシードできめているイケメンオジサマです。大人の男性が似合う水美さんらしく、見た目は非常にカッコいいのですが、どうやら妻のマッジには相当尻に敷かれている模様。飛行機が怖かったり、焦ったらすぐ謎の薬に頼ったりなど、ちょっぴり情けないところが憎めなくて、見た目とのギャップも愛おしい。ジェリーとは旧知の仲で、何度も笑いを誘う絶妙のコンビネーションは、柚香さんと同期ならではでしょうか。そんなあたたかな空気感にもぜひご注目ください。

◆公演情報◆
『TOP HAT』
2022年3月21日(月)~4月6日(水) 梅田芸術劇場メインホール
公式ホームページ
[スタッフ]
脚本・演出/齋藤 吉正

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筆者

さかせがわ猫丸

さかせがわ猫丸(さかせがわ・ねこまる) フリーライター

大阪府出身、兵庫県在住。全国紙の広告局に勤めた後、出産を機に退社。フリーランスとなり、ラジオ番組台本や、芸能・教育関係の新聞広告記事を担当。2009年4月からアサヒ・コム(朝日新聞デジタル)に「猫丸」名で宝塚歌劇の記事を執筆。ペンネームは、猫をこよなく愛することから。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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