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太田昌克さんに聞くウクライナの核危機(上)~プーチンへの不安

井上威朗 編集者

戦争準備態勢のレベルを上げない米国

Serhii Milekhin拡大Serhii Milekhin/Shutterstock.com

──やっぱりプーチンにとって誤算が続いている?

太田 米国と欧州、そしてG7がここまで結束するとは思っていなかったでしょうね。米商務省高官が3月29日にアジアの記者向けに行った説明によると、世界で最も経済力のある33カ国が対ロシア制裁に既に加わっています。さらに、軍事面では欧州各地からポーランドなどを経由してウクライナに多くの兵器や物資が供給されています。今後、停戦交渉がスムーズに進まず膠着状態が続き、泥沼化の兆候が見え始めたら、ロシアはその補給路を攻撃しようと考えるかもしれない。

──どんな攻撃をするのでしょう……。

太田 追い込まれ感を強めたプーチン氏が補給路を断ち切るために、そして欧米の軍事支援を阻止するために、戦術核を使う選択肢を検討することだってあるかもしれません。

 戦術核とは、米ロが互いの首都や本土の核ミサイル基地を狙って発射する長距離型の戦略核戦力ではなく、戦場レベルでの使用を想定した核兵器です。新聞などで「小型核」と表現されるものも含まれますが、広島型原爆の3分の1程度の爆発力、つまりTNT換算火薬で5キロトン程度の破壊力を持つ「低出力型核」をロシアは保有しています。小型、低出力と称していますが、核は核です。都市を壊滅させる破壊力があり、放射線の被害は時空を超えて拡散します。

 ロシアがそんな戦術核を使う可能性も完全に排除できるわけではありません。例えば、ウクライナ側の士気をくじくために無人エリアで示威行動、威嚇行為の一環として低出力型核を使うシナリオだってあります。プーチン氏が2月末にロシアの核運用部隊を「特別戦闘態勢」に置いたことも、そうした懸念に拍車を掛けます。

──やはり「核」をめぐる危険性が高まっているのですね……。

太田 ですが、バイデン政権は、今のところ冷静に対応しています。米国防総省の戦争への準備態勢を示す「ディフェンス・レディネス・コンディション(Defense Readiness Condition) 」、5段階のデフコンというものがあります。デフコン5からだんだんと段階が上がり、核戦争の手前までいったキューバ危機ではデフコン2になった。

 デフコン1になると核攻撃がいつ始まってもおかしくありません。ロシアが核の警戒態勢を上げたわけですから、米国も呼応してこのデフコンを上げることによって脅しのシグナルを送る展開だって十分に想定されるのですが、米国は今のところ、ロシアの挑発を受けてもデフコンを上げていないんです。米露の正面対決が現実味を帯びないように、事態をエスカレートさせまいと、うまくコントロールしているのではないかと思います。

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筆者

井上威朗

井上威朗(いのうえ・たけお) 編集者

1971年生まれ。講談社で漫画雑誌、Web雑誌、選書、ノンフィクション書籍、科学書などの編集を経て、現在は漫画配信サービスの編集長。

※プロフィールは、論座に執筆した当時のものです