二ノ宮金子 (にのみや・きんこ) フリーライター
カルチャー雑誌などの編集者、ライターを経て、フリーに。映画、本、食、温泉などを中心に執筆。関心領域は、貧困、不登校、子どもの病気なども。主な資格に、美容師免許、温泉ソムリエ、サウナ・スパ健康アドバイザーなど。ツイッターは、 https://twitter.com/kinko_ninomiya
※プロフィールは、論座に執筆した当時のものです
主演アミル・ジャディディに聞く「微笑み」の意味
第94回アカデミー賞で、濱口竜介監督の『ドライブ・マイ・カー』が作品賞、監督賞、脚色賞、国際長編映画賞(旧:外国語映画賞)の4部門にノミネートされ、かつてないほど日本でもオスカーの行方が話題になった。
結局、『ドライブ・マイ・カー』は国際長編映画賞を受賞したわけだが、4月1日から公開されるイランのアスガー・ファルハディ監督『英雄の証明』も実は同賞のノミネート候補(ショートリスト)になっていた。受賞を逃したからと言って、『ドライブ・マイ・カー』より作品として劣っていたかというと決してそうではないことは本作をみていただければ、ご理解いただけると思う(ちなみに『英雄の証明』は第74回カンヌ国際映画祭でグランプリを受賞しているし、数々の映画賞を受賞したという意味では引けを取らない)。
ファルハディ監督の名を世界に知らしめ、その地位を不動のものとしたのは、離婚しようとしている夫婦の心情を社会問題とともにスリリングに描いた2011年の『別離』だろう。ラストシーンの衝撃は、いまでも忘れられない。この作品はベルリン国際映画祭で金熊賞(最高賞)、銀熊賞(女優賞・男優賞)の3冠に輝き、アカデミー賞外国語映画賞など90以上のタイトルを受賞した。
以降、活躍の場をイラン国外にも広げ、『ある過去の行方』(2013年)、2度目のアカデミー賞受賞作となった『セールスマン』(2016年)、ペネロペ・クロスとハビエル・バルデムというスター俳優と組んだ『誰もがそれを知っている』(2018年)と話題作を撮り続けてきた。(『誰もが~』でこそ誘拐事件が描かれてはいるが)彼の手に掛かれば、ありふれた日常ですら極上のサスペンスになりえる──そう思わせる監督なのだ。
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