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【公演評】雪組『夢介千両みやげ』『Sensational!』

彩風咲奈が紳士で優しい江戸の光源氏になる? 痛快娯楽時代劇で舞台も季節も春爛漫

さかせがわ猫丸 フリーライター


 雪組公演大江戸スクランブル『夢介千両みやげ』、ショー・スプレンディッド『Sensational!』が、3月19日、宝塚大劇場で初日を迎えました。

 春爛漫の時期にふさわしい今作品は、『桃太郎侍』や『遠山の金さん』などでおなじみの山手樹一郎氏の小説を原作とした痛快娯楽時代劇。父からもらった千両で、江戸へ道楽修行に出た夢介は、次から次へと起こるトラブルを“金と優しさ”で解決していくのですが――。

 腕っぷしは強いが喧嘩は嫌い、おせっかいで心優しき主人公を、雪組トップスター彩風咲奈さんが魅力たっぷりに演じています。チャキチャキ女房・お銀役の朝月希和さん、茶目っ気たっぷりな色男・総太郎役の朝美絢さんに、スリの三太役で和希そらさんが宙組から加わり、笑いと人情あふれる物語を楽しませてくれるのが、まさに今の季節にピッタリ。

 2幕のエキサイティングなショー『Sensational!』とともに心も体もあたたまる、明るく華やかな公演となりました。(以後、ネタバレあります)

江戸の光源氏・彩風

『夢介千両みやげ』公演から、彩風咲奈=岸隆子 撮影拡大『夢介千両みやげ』公演から、彩風咲奈=岸隆子 撮影

 夢介という人物は、宝塚におけるいつもの二枚目主人公とは、少し趣が異なるかもしれません。見た目のカッコよさは文句なしなのですが、やけになまっているし、ちょっと猫背な歩き方もなんだか冴えない感じ? しかし、それは心配ご無用なのでした。

 ――桜満開の東海道。相州小田原・庄屋の息子夢介(彩風)は、父親から千両をもらい、通人になるための道楽修行にでかけていた。途中の宿場町で“オランダお銀”(朝月)と異名をとるスリにだまされるが、夢介は怒るどころか面白い芝居を見せてもらったと百両をそのまま渡してしまう。お銀はそんな夢介の朴訥さに一目ぼれ。生活を改め、おしかけ女房となって、奇妙な同棲生活を始めるのだった。

 開演前の幕には陽気なイラストが描かれ、これから始まる作品の楽しさを予感させます。彩風さんの「おひかえなすって」といなせな挨拶を皮切りに、雪組生たちが明るく歌い踊り、華やかに幕が上がりました。

 夢介は田舎から出たことのない大金持ちのおぼっちゃま。“千両もの大金を自由に使って道楽修行”という大前提が、常人にははかりしれない行動を巻き起こしていきます。あまりのお人好しさに「この人、大丈夫かしら」とハラハラしてしまうのですが、絶妙にとぼけた演技が夢介の愛らしさにつながるのが、彩風さんの腕の見せ所かもしれません。どんなトラブルに遭遇してもひたすら優しくて、いつのまにやらモテモテになるのが、演出の石田昌也先生いわく “江戸の光源氏”。それも非常に紳士で硬派なのが憎い。そして、ただお人好しなだけかと思いきや、あっと驚く一面を見せる場面もあり、最後にはもう誰もかれもが夢介のとりことなってしまうのです。

 夢介はやさしくて可愛いだけじゃない。煮え切らないようでいて、相手のことは真剣に考えています。時折のぞかせるカッコよさも含め、そんなあたたかさが彩風さんらしくて、思わずくすぐられてしまうでしょう。

◆公演情報◆
『夢介千両みやげ』『Sensational!』
2022年3月19日(土)~4月18日(月) 宝塚大劇場
2022年5月7日(土)~6月12日(日) 東京宝塚劇場
公式ホームページ
[スタッフ]
『夢介千両みやげ』
原作:山手 樹一郎「夢介千両みやげ」
脚本・演出:石田昌也
『Sensational!』
作・演出:中村一徳

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筆者

さかせがわ猫丸

さかせがわ猫丸(さかせがわ・ねこまる) フリーライター

大阪府出身、兵庫県在住。全国紙の広告局に勤めた後、出産を機に退社。フリーランスとなり、ラジオ番組台本や、芸能・教育関係の新聞広告記事を担当。2009年4月からアサヒ・コム(朝日新聞デジタル)に「猫丸」名で宝塚歌劇の記事を執筆。ペンネームは、猫をこよなく愛することから。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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