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小林香&美弥るりかインタビュー(下)

自分の家の近くにも「パーラー」のような場所があったらいいなと

橘涼香 演劇ライター


小林香&美弥るりかインタビュー(上) 

世界にひとつしかない場所で切磋琢磨してきた者同志

──「パーラー」を守り継いでいく、三世代を演じるのがいずれも宝塚OGの方でいらっしゃいますが、期待されていることは?

 小林:一人の足で立っていることが醸し出されるところでしょうか。剣さんが演じられる円山阿弥莉は70代の後期高齢者という設定ですが、若かりし頃に自分の家を改装して美容室を作り、女手一つで孫を育てる。しかも美容室で髪を切るだけではなく、髪を切ることによって人を解放していくという発想を持っている。また花乃まりあさんが演じる娘の千里も髪を切ること、人にとって髪型というのはとても大切で、人を自由にするんだという発想を広げようとした。更に孫の朱里は、ゲームの世界に行きましたが、そこで人を自由にすることを考えていく。そうした利他的な考えをもった凜とした女性たちですので、宝塚での経験値と、大きな責任を背負ってこられた方たちだからこその自立した強さが、自ずと出てくるのではないか?に期待しています。

小林香(左)と美弥るりか=宮川舞子 撮影(美弥るりか)拡大小林香(左)と美弥るりか=宮川舞子 撮影(美弥るりか)

──美弥さんご自身は、剣さん、花乃さんとの共演についてはいかがですか?

 美弥:私は宝塚のファン時代から剣さんのことが大好きだったので、ただのファンみたいになっちゃうんですけど(笑)。当時から舞台を観ていて、小さいながらに剣さんには性別を感じていなかったんです。宝塚の男役のキザにキメるカッコ良さとは違って、剣さんからは「人間」を感じて。私はそこが大好きだったのですが、今回そんな1人のファンの私が(笑)、初めて共演させていただく側として稽古場でセッションした時に、やっぱり剣さんは全くジェンダーに何の垣根も感じていらっしゃらなくて、昔から私が思っていた方そのままだったので、幸せを味わっている自分がいます……ってこれ質問と答えがかみ合っていませんか?

──いえいえ、わかります!

 小林:ファントークだね!(笑)

 美弥:ですよね(笑)。でも私にはそうしたファン時代があるからこそ宝塚に入っているわけですし、花乃ちゃんにもきっとファン時代があって宝塚に入っている。剣さんと私は在団期間が全く離れていますし、花乃ちゃんと私は重なっている時期があるのですが、所属していた組が違い、もちろん知ってはいましたけれど、直接の関わりは全くなかったんです。でも、この世界にひとつしかない劇団にいて、そこで切磋琢磨しながら青春の時期を過ごしたということがみんなの根底にあるから、言葉を交わさなくても、敢えて自己紹介をしなくても最初から手を握れている感じがあります。香さんはこの間パッと私たち3人を見て「なんか親子・家族みたい」っておっしゃいましたよね?

 小林:言いました。それも稽古に入ってすぐだったね。

 美弥:そうなんです、始まって2日目ぐらいで。その時点でもう親子・家族みたいになれるってとても嬉しいですし、世代は違っても繋がっているというものが、この作品にとって良い形として、いい影響が溢れ出てくれたらいいですね。

心を感じる温かな稽古場

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──また、他のキャストの方々との共演で楽しみにされていることはどうですか?

 美弥:とにかく皆さんがすごく温かくて、41度くらいのお湯に入っているみたいな気持ちになっています。熱すぎずぬる過ぎず、ずっと入っていられると言うか。お芝居ってその人の人生がにじみ出るので、とても早い段階から皆さんの心を感じる瞬間がたくさんあって、朱里としたらそうなってはいけないのですが、本名の私が感動しちゃっていつも涙をこらえている状態で。

 小林:どこで涙をこらえてるの?

 美弥:そういうポイントがたくさんあるんです。剣さんと喋っただけで本名の私が喜んでいるのがまずひとつありますし(笑)。

 小林:はい、はい(笑)。

 美弥:舘形比呂一さんが演じられる「ザザ」が、ジェンダーについてオープンにする時があるんですけど、その時も涙があふれてしまって、これは絶対に本番ではやっちゃいけないと思っているんですが。

 小林:本当に?それは全く知らなかった!

 美弥:すごく感動しちゃうんです。

 小林:マスクの下に隠していたんだね!

 美弥:そうです、そうです。マスクがあって良かったです!

美弥るりか=宮川舞子 撮影〈ヘアメイク:丸山智路・スタイリスト:津野真吾(impiger)・衣装協力:Wild Lily〉拡大美弥るりか=宮川舞子 撮影〈ヘアメイク:丸山智路・スタイリスト:津野真吾(impiger)・衣装協力:Wild Lily〉

 小林:確かに今回、みんながすごく心をむき出しにしてやってきてくれたな、という感じが最初からありますね。仕事なんだけれども、自分という人間を使ってこの作品を伝えるというような、得も言われぬパワーみたいなものを各人からすごく感じています。中でも宝塚のお三方は、雑談をする暇もなく、みんな台本を見つめて一生懸命セリフと歌を覚えているという時期なのに、「パーラー」という場所に対しての思い、言わずもがなの連帯が既に同じ質感になりつつあって。それは先ほど美弥さんがおっしゃったように、お一人おひとりそれぞれが同じものを持っているところから来ているんだと思いますが、しかも3人がきちんと3世代の人達に見えているんですよね。

 また、やはりいまお話の出た舘形さんが本当にラブフルな方で。いらっしゃるとすぐにその場所が愛でいっぱいになるんです。それがまだ愛でいっぱいになってはいけない第1場から愛でいっぱいになっちゃったものですから、いまちょっと愛を引いていこうとしているんですけれども(笑)。それくらい、良い空気のなかで稽古が進められているのが嬉しいです。

◆公演情報◆
Musical『The Parlor』
2022年4月29日(金・祝)~5月8日(日) よみうり大手町ホール
2022年5月14日(土)~15日(日) 兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール
公式ホームページ
公式Twitter
[スタッフ]
作・演出:小林香
作曲・編曲:アレクサンダー・セージ・オーエン
[出演]
美弥るりか、花乃まりあ、植原卓也、舘形比呂一、北川理恵、坂元健児、剣幸

〈小林香プロフィル〉
大学卒業後、東宝株式会社にて演劇プロデューサーとして活動後、舞台演出家として独立。数々の海外ミュージカルの演出を手掛け、演出・脚本・作詞を一手に任う「オリジナルミュージカル」と、日本では数が少ない「ショー」の創作も得意とする。近年の舞台作品に、ミュージカル『リトル・プリンス』(演出)、ミュージカル『マドモアゼル・モーツァルト』(演出)、オフ・ブロードウェイミュージカル『The Last5 Years』(演出)、ミュージカル『きみはいい人、チャーリー・ブラウン』(訳詞・演出)などがある。
オフィシャルサイト
オフィシャルinstagram

2003年宝塚歌劇団に入団。星組に配属後、2012年に月組へ組替えし男役として活躍。また男役以外にも幅広い役柄を好演し、異例の人気を誇る。19年の退団後、アーティスト活動をスタート。現在では、舞台やファッション、ビューティーなど様々なフィールドで活躍する。近年の主な舞台出演作に、『ヴェラキッカ』、the Wonder『MIYA COLLECTION』、『GREAT PRETENDER グレートプリテンダー』、『SHOW-ISMS Version マトリョーシカ』などがある。
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筆者

橘涼香

橘涼香(たちばな・すずか) 演劇ライター

埼玉県生まれ。音楽大学ピアノ専攻出身でピアノ講師を務めながら、幼い頃からどっぷりハマっていた演劇愛を書き綴ったレビュー投稿が採用されたのをきっかけに演劇ライターに。途中今はなきパレット文庫の新人賞に引っかかり、小説書きに方向転換するも鬱病を発症して頓挫。長いブランクを経て社会復帰できたのは一重に演劇が、ライブの素晴らしさが力をくれた故。今はそんなライブ全般の楽しさ、素晴らしさを一人でも多くの方にお伝えしたい!との想いで公演レビュー、キャストインタビュー等を執筆している。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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