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抗争する男たちの系譜

 深作映画といえば『仁義なき戦い』(製作:東映、1973)だが、上記の作品はどうにも噴飯ものだった。ところが、中島貞夫監督の『沖縄やくざ戦争』(製作:東映、1976)は、本土ヤクザの侵出という同一テーマを扱いながら、地元ヤクザ同士の対立抗争へ視点を置き、深みを獲得している。軸になるのは、中里(松方弘樹)と国頭(千葉真一)というコザ(現沖縄市)の義兄弟同士の煮詰まった緊張関係。また彼らコザの「組」と那覇の「組」との一触即発の背後に、侵出の機会を窺う本土ヤクザも見え隠れし、スピーディな場面転換と相まってひりつくような切迫感がある。

沖縄やくざ戦争拡大中島貞夫監督『沖縄やくざ戦争』(DVD)
 また特筆すべきは、国頭の凶暴な存在感(千葉の身体の躍動感が素晴らしい)と激烈な沖縄ナショナリズムだ。「(俺は)ヤマトの組の連中から沖縄の国を守りたいだけだ!」。沖縄を「国」と呼ぶ男の、本土へのむき出しの憎悪は、後半、ライバルの中里へ乗り移り、ラストの銃撃戦へ突っ走っていく。

 沖縄vs本土の暴力抗争劇はこの作品をもってピークへ達した感があるものの、その後も多くの追随作品を残した。秀作とは言いにくいが、『沖縄10年戦争』(監督:松尾昭典、製作:東映、1978)は直系の作品と言っていいだろう。再び松方・千葉が共演したが、前作のような精彩はなく、銃撃戦もどこかおざなりである。

 後年、このジャンルと「型」を復活させたのは北野武だ。監督第2作『3×4X10月』(製作:バンダイ/松竹富士、1990)では、同じ草野球チームの若者二人が銃を買うために沖縄へ向かう。ひょんなことから彼らが勤めるガソリンスタンドがヤクザと抗争する羽目になり、武器調達が必要になったという不思議な設定だ。彼らは沖縄でヤクザの二人組(うち一人が北野)と意気投合し、銃を買い付けて戻ってくるのだが、東京での銃撃戦も含めその一部始終がスタンド店員の妄想だったというオチがついている。

ソナチネ拡大北野武監督『ソナチネ』(DVD)
 欧米で高い評価を得た『ソナチネ』(製作:バンダイビジュアル/松竹第一興行、1993)も沖縄にからむヤクザ映画である。
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筆者

菊地史彦

菊地史彦(きくち・ふみひこ) ケイズワーク代表取締役、東京経済大学大学院(コミュニケーション研究科)講師

1952年、東京生まれ。76年、慶應義塾大学文学部卒業。同年、筑摩書房入社。89年、同社を退社。編集工学研究所などを経て、99年、ケイズワークを設立。企業の組織・コミュニケーション課題などのコンサルティングを行なうとともに、戦後史を中心に、<社会意識>の変容を考察している。現在、株式会社ケイズワーク代表取締役、東京経済大学大学院(コミュニケーション研究科)講師、国際大学グローバル・コミュニケーションセンター客員研究員。著書に『「若者」の時代』(トランスビュー、2015)、『「幸せ」の戦後史』(トランスビュー、2013)など。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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