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お寺を解散するという選択──過疎地のお寺はもう限界

[16]難しい法的手続き、財産処理、檀家の移籍

薄井秀夫 (株)寺院デザイン代表取締役

引き取り手の無い残余財産

 しかしこの金皇寺の場合、この不動産の帰属先を見つけることが、なかなかできなかったのである。

 まず解散にあたって浄土宗は、近隣寺院や自治体、森林組合等に残余財産の帰属を打診したが、どこからもいい返事を得ることはできなかった。残余財産を引き取ってくれないということは、当然合併という選択肢も無い。

 解散することは決定していたが、財産の帰属先が見つからず、その後5年間、何の進展もないという状況が続く。

 これが都市部の資産価値の高い土地であったら、すぐに帰属先が見つかったはずである。ところが過疎地域の土地は資産価値が低い。かつて山林は、資産価値の高い財産であったが、現代では管理コストを考えると、むしろマイナスの財産ととらえられることが多い。

=2020年8月、島根県大田市拡大金皇寺が所有していた山林=2020年8月、島根県大田市
 宗教法人法によれば、引き取り手がなかったら国庫に帰属するとあるが、実は国もそう簡単に引き取ってくれない。やはり資産価値が低い土地は、引き取りたくないのである。

 この法律自体、山林などの土地に資産価値がある時代の法律であり、当時であれば山林は、引く手あまたであったはずだ。しかし現代では、森林組合ですら引き取ることを躊躇する財産なのである。

 こうして、金皇寺の解散問題は停滞していたのであるが、公益財団法人全日本仏教会が協力することで、この事案が再び動き始める。

 2018(平成30)年に全日本仏教会の戸松義晴・事務総長(当時)が、中国財務局松江財務事務所に連絡をとり、金皇寺の残余財産の帰属先について協議をしたい旨を伝え、それがきっかけで、財務局との協議が一気に進み始めたのである。

 協議の結果、境内にある墓石の整理や山門・鐘楼などの解体を行うことを条件に、国庫帰属が決まる。山門等の解体費用約100万円は、浄土宗が拠出した。また本堂は、老巧化しているものの、朽ちても近隣に影響が少ないことから、そのままの状態で国庫帰属が認められた。

 宗教法人の解散は2020(令和2)年に承認され、財産の国庫帰属は最終的に昨年10月に手続きが終わった。

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筆者

薄井秀夫

薄井秀夫(うすい・ひでお) (株)寺院デザイン代表取締役

1966年生まれ。東北大学文学部卒業(宗教学専攻)。中外日報社、鎌倉新書を経て、2007年、寺の運営コンサルティング会社「寺院デザイン」を設立。著書に『葬祭業界で働く』(共著、ぺりかん社)、 『10年後のお寺をデザインする――寺院仏教のススメ』(鎌倉新書)、『人の集まるお寺のつくり方――檀家の帰属意識をどう高めるか、新しい人々をどう惹きつけるか』(鎌倉新書)など。noteにてマガジン「葬式仏教の研究」を連載中。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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