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井之脇海インタビュー(下)

カナダ発の心理スリラー『エレファント・ソング』で舞台初主演

大原薫 演劇ライター


井之脇海インタビュー(上)

映画版とはまた違った作品として観てもらえたら

――映画好きで知られる井之脇さんですが、井之脇さんの視点から見て、映画版はどんな印象でしたか。

  面白いと言ったらありきたりな感想ですけど、グザヴィエ・ドラン氏演じるマイケルが抱える悲しみを、ちゃんとお客様に伝えることができている素敵な作品だなと思います。ただ、戯曲を読むと大筋は変わらないけれど、映画版は細かい設定やグリーンバーグのキャラクターが違っている。映画版は映画版として楽しんでいただいて、舞台はまた違った作品として観てもらえたらいいかなと思います。

井之脇海=森好弘 撮影〈ヘアメイク:AMANO/スタリイスト:檜垣健太郎(tsujimanagement)拡大井之脇海=森好弘 撮影〈ヘアメイク:AMANO/スタリイスト:檜垣健太郎(tsujimanagement)

――グザヴィエ・ドランと比べて、井之脇さんが負けないと思うところはどういうところですか。

 それは意地悪な質問ですね(笑)。僕はもう、単純にグザヴィエ・ドランのファンなので憧れているところもあったんですけれど、でも今回マイケルを演じるにあたってドランに憧れてしまったら、彼を超えることはできないなと思って。だから憧れるのはやめようと思ったんです。ドランはマイケルと環境が似ているところがあるので、マイケルと同じ悲しみを背負うことができている。僕はマイケルに完全に共感して背負うことができない代わりに、マイケルに寄り添って一緒に「自分って何だろう」と探していくことができたらと思います。十人十色で演じる人によって全然変わると思いますが、僕も絶対に他の人には出せない色としてマイケルをとらえて、より深いところを追求して演じたいです。

――「ドランのようには共感できないかもしれない」という井之脇さんがこの役を自分のものにするために、どんなふうに取り組んでらっしゃいますか。

 とにかく事前の準備が一番大事だと思うんです。そこでどれぐらい妄想できるかということだと思うんですよね。想像でもいいんですけど。たとえば僕が実際カナダ人になることはできないので、じゃあ、カナダ人はどういう生活なのか、マイケルはどんな経験をしてきたのか、細かいところまで想像してみる。昨日も稽古をしていて、宮田さんと「象のことをもうちょっとみんなで調べてみようよ」という話をしたんですよ。僕はマイケルのことを考えていたけれど、象についてはあまり考えられていなかったので。そうやって細かく細かく全部のことを想像して調べると、マイケルが喋る台詞一つ一つが常に筋が通ってくるのかなと思います。

――日本人の役を演じるのと比べると、外国人を演じる方がより距離を感じる?

 いえ、殺人鬼やサイコパスの役を演じるよりも、マイケルの方が近く感じます。感情が欠落している人と違って、マイケルはちゃんと感情がありますから。根底にあるものは共感できるので、そこを膨らませていくことが大切かなと思います。

◆公演情報◆
エレファント・ソング拡大

PARCO PRODUCE 2022 『エレファント・ソング』
東京:2022年5月4日(水・祝)〜22日(日)  PARCO 劇場
愛知:2022年5月25日(水) 刈谷市総合文化センターアイリス 大ホール
大阪:2022年5月28日(土)  COOL JAPAN PARK OSAKA TTホール
公式ホームページ
[スタッフ]
作:ニコラス・ビヨン
翻訳:吉原豊司
演出:宮田慶子
[出演]
井之脇海、寺脇康文、ほりすみこ
〈井之脇海プロフィル〉
 2008年、映画『トウキョウソナタ』で第82回キネマ旬報ベスト・テン新人男優賞、第23回高崎映画祭最優秀新人俳優賞を受賞。2018年、自身の初監督作品で脚本・主演も務めた映画『3Words 言葉のいらない愛』が第68回カンヌ映画祭ショートフィルムコーナー部門で入賞。近年の主な出演作として、『ちむどんどん』、『津田梅子~お札になった留学生~』、『義母と娘のブルース』(以上、テレビ)、『とんび』、『猫は逃げた』、『ONODA 一万夜を越えて』、『ミュジコフィリア』(以上、映画)などがある。
公式ホームページ
公式instagram

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筆者

大原薫

大原薫(おおはら・かおる) 演劇ライター

演劇ライターとして雑誌やWEB、公演パンフレットなどで執筆する。心を震わせる作品との出会いを多くの方と共有できることが、何よりの喜び。ブロードウェー・ミュージカルに惹かれて毎年ニューヨークを訪れ、現地の熱気を日本に伝えている。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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