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「ミス・アメリカ」リンダ・ロンシュタットが残したメッセージ

印南敦史 作家、書評家

「ミス・アメリカ」の存在感

『リンダ・ロンシュタット サウンド・オブ・マイ・ヴォイス』 ©LR Productions, LLC 2019 – All Rights Reserved拡大『リンダ・ロンシュタット サウンド・オブ・マイ・ヴォイス』 ©LR Productions, LLC 2019 – All Rights Reserved

 個人的には、「ROCKUMENTARY2022」3作品中もっとも楽しみにしていたのがこれだった。しかも実際に観てみた結果、幼少期から現在までの彼女のプロセスをていねいになぞったこの作品は、期待していた以上に“響く”ものでもあった。

 まず改めて気づかされたのは、リンダ・ロンシュタットという人物が与えてくれたものの大きさだ。その音楽もさることながら、“彼女がそこにいた”こと自体に意味があったのである。少なくとも、1962年生まれの私はそう感じた。同世代の方なら、多少なりとも共感していただけるのではないかと思う。

 初めて知った彼女の楽曲は、1976年のアルバム『Hasten Down the Wind(邦題:風にさらわれた恋)』からシングル・ヒットした「ザットル・ビー・ザ・デイ」だったと記憶している。また、翌年に出た『Simple Dreams(邦題:夢はひとつだけ)』も熱心に聴いた。とくに圧倒されたのは、オープニングの爽快なシングル楽曲「イッツ・ソー・イージー」。なぜならこの曲は、こちらが期待する“カリフォルニア・イメージ”を具現化してくれていたからだ。

 当時は、アメリカ・ウェストコースト・ロックの全盛期。そんなこともあり、カラッとした曲調と伸びやかなヴォーカルはストレートに心へ響いてきた。そしてその結果、「リンダ・ロンシュタット=カリフォルニアの、かっこよくて、ちょっとかわいいお姉さん」というようなイメージが確立されたのである。

 そして、ここに重要なポイントがあると個人的には考えている。当時のリンダ・ロンシュタットは、単に歌がうまいだけの女の子ではなく、その存在自体に価値があったのだ。

 それは、この映画で確認できる彼女の立ち居振る舞いにも明らかだ。気負うことなく、しかし思いのままにバンドを操る力、マイクの扱い方などに顕著な洗練された身のこなし、総じてリラックスしたステージングなど、ともすれば見逃してしまいそうなところにこそ、この時代に彼女がいたことの本質的な意義が表れているからだ。

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筆者

印南敦史

印南敦史(いんなみ・あつし) 作家、書評家

1962年、東京生まれ。広告代理店勤務時代に音楽ライターとなり、音楽雑誌の編集長を経て独立。「ダ・ヴィンチ」「ライフハッカー(日本版)」「東洋経済オンライン」「ニューズウィーク日本版」「サライ.JP」「WANI BOOKOUT」など、紙からウェブまで多くのメディアに寄稿。著書に『世界一やさしい読書習慣定着メソッド』(大和書房)、『人と会っても疲れない コミュ障のための聴き方・話し方』(日本実業出版社)、『書評の仕事』 (ワニブックスPLUS新書)など多数。新刊に『遅読家のための読書術──情報洪水でも疲れない「フロー・リーディング」の習慣』(PHP文庫)、読書する家族のつくりかた──親子で本好きになる25のゲームメソッド』(星海社新書)。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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