メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

news letter
RSS

「生娘」発言の元常務には、吉野家も女性も「下々」だったんだ、たぶん

矢部万紀子 コラムニスト

 ある小売関連会社のマーケティング部長(30代男子)から、こんな話を聞いた。会社帰りの電車で「スカウトが届くハイクラス転職サイト」(CMでおなじみ)にアクセス、軽い気持ちでポチポチ登録したところ、家に着いたら3社からオファーが届いていた、と。5年ほど前のことだった。

 マーケティングってすごいんだー、と感心したものの、それきり忘れていたのを思い出したのは、吉野家を解任された伊東正明元常務が「マーケティングのプロ」とされていたからだ。すごくイケてるはずの人が、早稲田大学という学問の場で「生娘をシャブ漬け」だの「田舎から出てきた右も左も分からない若い女の子を無垢、生娘なうちに牛丼中毒にする」だの、なんたるトンデモ発言だろう。

吉野家の拡大元常務の「生娘」発言で、大きな批判を浴びた吉野家の店舗

 私は今回、生まれて初めて「生娘」という単語を発音した。今どきどころか、20年前でもありえないと思うから、吉野家が4月19日に彼の取締役解任(18日付)を発表したのも当然だ。放置していたら不買運動が起こっても不思議はなかった。

 女性蔑視、地方蔑視、ジェンダー感覚なし、顧客に失礼。そういう指摘は、もう山のようにされていて、以上終わり、でいいのだが、この人のマーケティング的な吉野家像について思ったことがあるので、それを書こうと思う。

 彼の発言の出発点は、吉野家を「弱者ビジネス」と捉えたことだったと思うのだ。女性への露骨な見下し感。それを隠さないのは、そもそも吉野家を「弱者相手の商売」だと判断したことから始まっていると思う。

 女性=男性でない=弱者。そう認識している男性は多いだろう。が、口にするかどうかは別だ。ところが彼はそれを口にした。しかも女性はないがしろにしてよい存在だという最悪の本音まで公にしてしまった。だが、彼が生活用品大手のプロクター・アンド・ギャンブル(P&G)にいたままなら、こうはならなかったのではと思う。

全ジャンルパックなら本の記事が読み放題。


筆者

矢部万紀子

矢部万紀子(やべ・まきこ) コラムニスト

1961年生まれ。83年、朝日新聞社に入社。宇都宮支局、学芸部を経て、週刊誌「アエラ」の創刊メンバーに。その後、経済部、「週刊朝日」などで記者をし、「週刊朝日」副編集長、「アエラ」編集長代理、書籍編集部長などをつとめる。「週刊朝日」時代に担当したコラムが松本人志著『遺書』『松本』となり、ミリオンセラーになる。2011年4月、いきいき株式会社(現「株式会社ハルメク」)に入社、同年6月から2017年7月まで、50代からの女性のための月刊生活情報誌「いきいき」(現「ハルメク」)編集長をつとめた後、退社、フリーランスに。著書に『美智子さまという奇跡』(幻冬舎新書)、『朝ドラには働く女子の本音が詰まってる』(ちくま新書)。最新刊に『雅子さまの笑顔――生きづらさを超えて』(幻冬舎新書)

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

矢部万紀子の記事

もっと見る